4. 調査研究の成果と今後の課題
ディーゼル機関の排気ガス中に含まれる粒子物質(PM)を特殊なセラミックフィルターで捕捉し、燃焼により消滅させる粒子物質除去装置(DPF)方式の実用化のめどを立てることが出来た。
この中で、大規模装置を小型化するための方策として二重筒式フィルターエレメント構造について言及したが、当該方式の問題点の抽出と対策は今後の課題として残されている。さらに、上記課題解決後においては、今後170kW用DPF装置の実運転性能データを基にエンジン出力296Ps用DPFの最適設計仕様を策定し、舶用5000Psディーゼル機関用DPFの試設計を行うことが必要となる。
図−1 フィルターエレメントの開発経緯
形状
1040AH |
90mmID、100mmOD (2001年4月試験品) |
↓ |
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#308 |
90mmID、99.5mmOD (改良型:中間開発品) |
↓ |
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1040BH |
90mmID、103.5mmOD(最終品) |
強化繊維濃度
1040AH |
強化繊維の添加なし |
↓ |
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#308 |
バインダーに強化繊維を添加。 |
↓ |
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1040BH |
バインダーに強化繊維を添加。 |
構造
1040AHは、すべてネクステルペーパーを使用し、すべての層が一体になっている。内側から約4層→ニクロム線φ0.7mm→約7層の構成。
#308と1040BHは、捕集効率を向上(アメロイド社スモークスケール3以下と)させるために、三層構造とし、中間ろ過層を1層追加した。
#308の構造と1040BHの構造の違いを以下に示す。1040BHは強度増加のため、さらに外層を厚くしている。
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1040AH |
#308 |
1040BH |
バインダー |
内側 |
内層 |
ネクステル |
4 |
4.5 |
4.5 |
あり |
ニクロム線 |
φ0.7mm |
φ0.8mm |
φ0.8mm |
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ネクステル |
7 |
4.5 |
4.5 |
あり |
中間層 |
ろ過層 |
0 |
1 |
1 |
なし |
外側 |
外層 |
ネクステル |
0 |
0 |
4.2 |
あり |
ネクステル
ドット付き |
0 |
2 |
2 |
あり |
全層厚さ |
Σ合計 |
5mm |
4.75mm |
6.75mm |
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図−2 フィルターエレメント圧力損失予想図
本図は、住友スリーエム相模原で実施したエンジンテストで得られた1040BH型フィルターエレメントの圧損上昇データに基づいて作成した。
本図は、1040BH型フィルターエレメントを各室に5本配置し、3室で合計15本とする場合の圧力損失の変化を示しており、このエレメント設定においては、各室のエレメント再生(電気ヒーター通電)を500sec以内で行うことが出来れば、圧力損失を許容限界の700mmAq以下で維持して運転することが可能となると予想している。
ラボ試験において、エレメント再生に必要な時間は400sec未満であった。
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