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2・5 決議A.820(XIX)高速艇に備える航海用レーダーの性能基準
(1995年11月23日採択)
 「高速艇に搭載する事を要求される航海用レーダー」は、この決議の附属書に収められた性能基準に劣らない性能基準に適合することを、各政府が確保することと勧告する。
 
附属書
高速船用航海用レーダーのための性能基準に関する勧告
 
1. 序文
1.1 航海用レーダーは、次の特性をもつ高速船(HSC)に備えることを目的とする。
−1. 最大速力70ノット
−2. 最大旋回率20度/s
−3. 通常の航行範囲が北緯70度と南緯70度の間
1.2 決議A.694(17)に収められた一般的要件のほか、航海用レーダーは、次の最低の性能要件に適合しなければならない。
2. 総則
 航海用レーダーは、航行や衝突回避を支援するためになるよう、他の水上艇、障害物、浮標、海岸線及び航行上の標識の位置を自船に対する関係において、表示しなければならない。
3. 距離性能
 空中線が海面上7.5mに取り付けられた場合、海面による不要な表示のないときに、例えば2.5海里で有効反射面積約10m2の浮標のような水上の物標を明確に指示しなければならないとすることを運用上の要件とする。
4. 最小レンジ
 3で規定された水上の物標は、距離レンジの選別器以外の制御器の調節を変える必要なしに、距離35mから1海里の距離まで明確に表示されなければならない。
5. 表示面
5.1 航海用レーダーは、外部で拡大しないで、直径250mm以上の有効レーダー映像を持つ多色の昼間用表示面を備えなければならない。
5.2 昼と夜の色が用意されていなければならない。輝度を調整することができなければならない。
5.3 航海用レーダーの表示面は、次の距離レンジを備えなければならない。0.25、0.5、0.75、1.5、3、6、12及び24海里
5.4 追加の距離レンジは、備えても差し支えない。
5.5 表示された距離レンジ及び、使用時には、距離環間の距離は、明確に表示しなければならない。
5.6 使っている距離レンジの少なくとも最小50%以下のオフ・センター設備を備えなければならない。
6. 距離の測定
6.1 距離の測定のために、次に示す固定の電子距離環を備えなければならない。
−1. 0.25、0.5及び0.75海里の距離においては、少なくとも2の距離環
−2. すべての他の距離レンジに於いては、6の距離環
6.2 距離の数値読み出しをもつ可変の電子距離マーカを備えなければならない。
6.3 固定距離環と可変の距離マーカによって、物標の距離を、使っている目盛りの最大距離の 1%以下又は30mのいずれか大きい方の誤差でもって測定することができなければならない。
6.4 固定の距離環と可変の距離マーカの輝度を変えること、及びこれらを表示面から完全に消し去ることができなければならない。
7. 船首方位指示
7.1 船艇の船首方位は、最大誤差±1度以下で、表示面上に線で指示されなければならない。表示面船首方位の太さは、表示面端部の最大距離のところで測定して、0.5度以下でなければならない。
7.2 “船首方位マーカ・オフ”の位置に置き忘れることができない装置による船首方位の指示器を消すための設備を備えなければならない。
8. 方位測定
8.1 表示面上に見えるいかなる像の物標の方位もすばやく得るための装置が備わっていなければならない。
8.2 方位を得るための手段は、表示面の端部に見える物標の方位を、±1度以上の精度で、測定することができるものでなければならない。
8.3 平行に指示するための少なくとも 2本の線が、利用できなければならない。
9. 識別
9.1 この装置は、シークラッタがない状態で、使っている距離レンジの50%と100%の間の距離にあって、かつ、同一方位にある、2の10m2の物標(たがいの隔離距離が35m以下のもの)を1海里以下の距離レンジの上で分離した指示として表示することができなければならない。
9.2 この装置は、1.5海里の距離レンジ上で、1海里の距離の50%と100%の間の同一距離に位置し、かつ、Xバンドのレーダーでは2.5度以下、Sバンドのレーダーでは4度以下だけ離された、2の10m2の物標を、分離した指示として表示することができなければならない。
10. 横揺れと縦揺れ
 この装置は±10度まで船艇が横揺れ及び縦揺れしているとき、3及び4の距離性能の要件に、計測して適合しなければならない。
11. 走査
 走査は、方位360度にわたって時計回り、連続的及び自動的でなければならない。走査の速さは、 1分間に40回転以上でなければならない。この装置は、100ノットまでの相対風速において、満足に作動しなければならない。
12. 方位の安定化
12.1 承認された方向センサーによって、表示面が方位において安定化される手段を備えていなければならない。この装置は、方位において安定化されるため承認された方向センサー入力装置を備えなければならない。承認された方向センサーの伝送のアラインメント精度は旋回率20度/sで0.5度以内でなければならない。
12.2 このレーダー装置は、主な承認された方向センサーが不動作のとき、不安定化モードで、満足に作動しなければならない。
13. 性能のチェック
 この装置が運用中のときに、設置の際に確立された校正基準に比べて性能に著しい低下のあることを直ちに決定するための手段が備わっていなければならずまた、物標がない場合に装置が正しく調整されていることを確認する手段が備わっていなければならない。
14. クラッタ抑圧装置
 シークラッタ、雨その他の降水、雲、砂嵐等の不要なエコーを抑圧するための適当な手段を備えていなければならない。対クラッタ制御を手動で連続的に調整することができるものでなければならない。
15. 操作
15.1 この装置は、航海者が通常高速艇を操縦する場所から、スイッチを投入し、運用することができなければならない。
15.2 使用者用の制御つまみは、容易に使用でき、かつ、識別しやすく使いやすくなければならない。記号が使われる場合には、当該制御つまみは、航海用レーダーの制御用記号に関する機関の勧告に適合するものでなければならない。
15.3 冷却状態からスイッチを入れた後、4分以内に、この装置は作動しなければならない。
15.4 この装置には、15秒以内に装置が作動状態になり得る待機状態というモードが備わっていなければならない。
16. 干渉
 船艇に備えつけ、調整を行った後、地球の磁界内での船艇の移動に関係なく更に調整をすることなく、この性能基準に定められた角度精度が維持されなければならない。
17. 表示面のモード
17.1 この装置は、相対動作及び真の動作の両方で運用されなければならない
17.2 レーダーの原点は、表示面の半径の少なくとも50%であって、75%以下のオフセットができなければならない。
17.3 海又は陸地の安定化がなされた場合、表示面の精度及び区別はこの性能基準で要求されるものと少なくとも同等でなければならない。
18. 空中線
18.1 空中線は、レーダーの運用効率が全体として実質上損なわれないような方法で設置し得るような設計のものでなければならない。
18.2 空中線は、そのような高速艇が経験すると考えられる力に抗するように設計されなければならない。
19. レーダー・ビーコンによる運用
19.1 3cm波帯で運用されるすべてのレーダーは、水平偏波モードで運用することができなければならない。
19.2 レーダー・ビーコンがレーダー表示面上に表示されるのを妨げるおそれのあるすべての信号処理装置のスイッチを断とすることができなければならない。
20. 複数のレーダーの装備
 2台のレーダーを備えることが要求される場合には、各レーダーは個々に運用され、両方とも独立に運用されるよう装備しなければならない。
21. インターフェイス
21.1 レーダーは、国際的な基準に従ってジャイロコンパス、船速距離計(SDME)及び電子船位測定装置(EPFS)等の装置から情報を受け取ることができなければならない。
21.2 レーダーは、外部のセンサーからの入力がなくなったとき、その旨表示しなければならない。レーダーはまた、運用に影響を与えるおそれのある外部センサーからの入力データの質に関し状況メッセージに係るいかなる警報をも繰り返さなければならない。
22. 航海情報
 レーダー表示面は、レーダー情報に加えて、図表の形態にて、位置及び航跡(経過地点、それらの間の通航路等)を表示することができなければならない。図表の情報源は明確に示さなければならない。
23. 物標のトレール
 物標のトレールは、合成された残光の形で物標のレーダー像によって表示されなければならない。トレールは相対又は真のものいずれでも差し支えない。真のトレールは、対水安定又は陸地安定で差し支えない。







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