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2・4 決議A.823(XIX)自動衝突予防援助装置(ARPA)の性能基準
(1995年11月23日採択)
 「ARPAの性能基準に関する勧告」の採択に先立ち、各国政府に対し次の勧告が行われた。
(a)1997年1月1日以降に設置した自動衝突予防援助装置は、この決議の附属書に規定する性能基準に劣らない性能基準に適合すること。
(b)1997年1月1日以前に設置した自動衝突予防援助装置は、少なくとも、決議A.422(XI)に規定した性能基準に適合すること。
 
附属書
自動衝突予防援助装置(ARPA)の性能基準に関する勧告
 
1. 序文
1.1 自動衝突予防援助装置(ARPA)は、海上における衝突防止を向上させることを目的として、
.1 観測者が単一物標を手動でプロットする場合に行えるのと同程度に多物標についての情報を自動的に得ることにより観察者の作業負担を軽減させねばならない。
.2 連続的に、正確に、かつ、迅速に状況評価を与えなければならない。
1.2 ARPA表示器が、提供するレーダー機能は、使用モードに適したレーダーの性能基準(決議A. 477(XII))に適合しなければならない。
1.3 決議A. 694(17) の一般的要件のほか、次の最低性能基準に適合しなければならない。
2. 定義
2.1 この性能基準に用いられる用語の定義は、付録1に示すものとする。
3. 性能基準
3.1 検出
3.1.1
レーダー観測者による以外に、物標の検出についての独立の装置を有する場合には、レーダー表示面を用いることにより得られる性能より劣ったものであってはならない。
3.2 捕捉
3.2.1
100ノットまでの相対速力の場合について、物標の捕捉は手動であってもまた自動であってもよい。しかし、必ず手動捕捉と消去のための機能がなければならない。いかなる距離範囲においても、一定の範囲に対して捕捉を抑える場合、捕捉の範囲は表示面上に表示されねばならない。
3.2.2
自動又は手動捕捉は、レーダー表示面を用いることによって得られる性能より劣ったものであってはならない。
3.3 追尾
3.3.1
ARPAは、自動捕捉又は手動捕捉のいかんにかかわらず、少なくとも20の物標について自動的に追尾し、処理し、同時に表示し、情報を連続的に更新することができなければならない。
3.3.2
もし自動捕捉機能を有する場合には、追尾をすべき物標の選択基準を使用者に対して示さなければならない。もしARPAが表示面上に見えるすべての物標を追尾しないならば、追尾されている物標は表示面上に明らかに表示されねばならない。追尾の信頼性は、レーダー表示面から得られる連続的な物標位置を手動で記録することにより達成することのできる信頼性より劣ったものであってはならない。
3.3.3
物標の乗移りを発生しないという条件で、ARPAが、連続する10走査のうち、5走査について表示面上において明らかに識別可能な捕捉物標を追尾し続けなければならない。
3.3.4
物標の乗移りを含み、追尾の誤差についての可能性はARPAの設計によって最小にしなければならない。自動追尾の際の誤差源の影響及び誤差源に基づいて生ずる誤差を定性的表現で使用者に提供しなければならない。これには、海面反射、雨、雪、低高度の雲及び非同期輻射が原因となって生じる信号対雑音比の低下及び信号対クラッター比の低下による影響を含むものとする。
3.3.5
ARPAは要求に基づいて、使用している距離スケールに適した期間中追尾されているいかなる物標についても、該当のシンボル* で、少なくとも 4つの等しい時間間隔での過去の位置を表示できなければならない。また、過去の位置の表示点の時間スケールが示されなければならない。操作解説書は、過去の位置の表示点が何を示すかについての説明を含めなくてはならない。
3.4 表示面
3.4.1
表示面はその船舶のレーダーと独立したものであっても、又は兼用のものであってもよい。しかしながら、ARPA表示面は、レーダーの動作基準についてのIMCOにより採択された性能基準に従ったレーダー表示面により与えられるべく要求されたすべてのデータを含んでいなければならない。
3.4.2
当該設計は、航行設備の性能基準により要求される情報に加えて、データを作成するARPA部分のいかなる誤動作も、基本レーダーの表示の完全性を損なわぬようなものでなければならない。
3.4.3
ARPAの機能は、少なくとも3 、6及び12海里の距離スケールにおいて使用することができるものとし、かつ、使用している距離スケールの明確な表示がなければならない。
3.4.4
ARPAの機能は、決議A. 477(XII)により許容された他の距離スケールについても備えることができ、備えた場合には、この基準に適合しなければならない。
3.4.5
ARPAは、「ノースアップ」方位安定及び「ヘッド・アップ」又は「コース・アップ」方位安定による相対運動表示で動作できるものでなければならない。加えて、ARPAは真運動表示を持つものであってもよい。真運動表示がある場合は、操作者がその表示を真運動表示又は相対運動表示に選択できなければならない。使用中の表示方式及び表示の方位を明確に表示しなければならない。
3.4.6
ARPAによって作られる捕捉物標についての針路と速力の情報は、物標の予測された運動を、該当するシンボル*で明確に表示するベクトル又は図形で、表示されなければならない。この場合において、
.1 ベクトルのみで予測された情報を表示するARPAは、真ベクトル及び相対ベクトルの選択が可能でなければならない。選択されたベクトルモードの表示がなければならず、もし、真ベクトルモードが選択された場合、対水又は対地のいずれで安定しているかが表示されなければならない。
.2 図形で物標の針路及び速度の情報を表現することが可能なARPAは、要求時に物標の真及び/又は相対ベクトルを表示できなければならない。
.3 表示されるベクトルは、表示に係る時間を調整可能なものか、又は、決まった時間尺度を有していなければならない。
.4 使用中のベクトルの時間尺度の明確な表示がなければならない。
.5 静止した物標が対地のものとして使われている場合、このことは、該当するシンボル* で表示しなければならない。このモードにおいて、対地のものとして使われた物標を含む相対ベクトルは、要求されたとき、表示されなければならない。
3.4.7
ARPAの情報は検出している物標の処理過程に悪影響を与えるというように、レーダー情報を不明確にしてはならない。ARPAデータの表示は、レーダー観測者が操作できるものでなければならない。不必要なARPAデータの表示は3秒以内に消去することができなければならない。
3.4.8
ARPAデータを完全に消去することを含んで、ARPAデータとレーダー・データの輝度を独立に調節する手段を持たなければならない。
3.4.9
表示の方法はARPAデータが昼間及び夜間、船橋で通常経験する明るさの状況において、一般に2人以上の観測者が明りょうに見えることを保証しなければならない。表示面に対して太陽光線を遮るために遮へいを用いてもよいが、適切な見張りを保持するために、観測者の能力を損なう範囲にまで及んではならない。輝度を調節する機能を持たなければならない。
3.4.10
ARPAの表示面上に表れるいかなるものに対しても、その距離及び方位を早急に得ることができる機構を持たなければならない。
3.4.11
1つの物標がレーダー表示面に表れ、自動捕捉の場合には、観測者によって選択された捕捉範囲内に進入したときに、又は手動捕捉の場合には、観測者が物標を捕捉したときに、ARPAは3.4.6、3.6、3.8.2及び3.8.3に従って、1分以内に物標の運動傾向を表示しなければならない。そして3分以内に物標の予測運動を表示しなければならない。
3.4.12
ARPA機能が有効である距離レンジの変更後又は表示のリセット後において、完全なプロッティング情報を表示するまでの時間は1走査を超える時間であってはならない。
 

(注)* 印は本編74ページ参照(シンボル表、表146−17.0〈1〉)







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