日本財団 図書館


3・3・1 機器の区画配置
 これまで、条約船及び非条約船においては、無線室を操舵室の近傍に設け、基本的に無線関係の設備は、ほとんど無線室内に装備され、その操作も専門の無線従事者が行う形のものであった。
 GMDSSにおいては、その機器は通常操船する場所に配置することが基本となっているので、特別に無線室を配置する必要はなくなっている。
 機器区画の配置に関しては、使用者(船主、運用者など)の意見、要求内容を聴取する必要もあるが、考えられる操舵室配置は、次のようなものとなる。
(1)操舵室に無線区画を配置
 操舵室に全く壁の無い無線区画を配置し、その区画に無線関係の機器を配置する方法。
(2)操舵室に壁のある無線区画を配置
 操舵室に壁のある無線区画を配置し、ここに集中的に無線関係の機器を配置する方法。この場合、その無線区画が配置面で“通常操船する場所”(1)に含めることができるか否かが重要で、壁が存在しても通常当直を行う場所との一体感が保てる場合は(1)と同様の扱いとなる。一体感が保てない場合は、(4)と同様の扱いとなるので、構造上の理由などで壁のある無線区画を操舵室に配置する場合は注意が必要である。
(1)
“通常操船する場所”の範囲について、船舶検査心得等では「航海船橋内の操舵室及び当該室と隔壁(明らかに部屋を構成するように設けられた壁を含む)で区切られていない海図室等の区域」も含まれるとしている。
(3)操舵室に、無線制御器区画及び無線(電気)機器室を配置
 操舵室に壁の無い無線制御器の区画を配置するが、送受信機などは無線機器室に配置する方法。
(4)無線室を配置
 操舵室内の航海関連機器と無線機器の相互の電磁的干渉を避けるため、また一般通信業務の便を考慮して、別に無線通信用の部屋を設け、無線機器をここに設置する場合がある。
 この場合には、“通常操船する場所”に最低、次の機能を確保する必要がある。
(1)その船舶が搭載しなければならないVHF、MF/HF、インマルサット無線設備による遭難呼出しの無休聴守
(2)その船舶に要求されるナブテックス受信機、高機能グループ呼出受信機、直接印刷電信による海上安全情報(MSI)の聴守
(3)遭難呼出しの発信手段
(4)VHF無線電話による航行の安全のための通信手段
 さらに、遭難、安全通信のための無線機器の遠隔制御装置を設置することか勧告されている。
 いずれの方法も一長一短があるが、壁の無い区画とした場合、テレックス端末や規則で要求されるものではないが、ファックス等一般者の目に通信内容が曝されることとなるので、これらの守秘上の問題を解決する必要がある。
 また、プリンタなどの騒音の問題、さらに送受信機を鉄板で閉鎖された区画ではなく、操舵室に直接装備するのは電気的ノイズ対策の面での問題が発生し得る。
 したがって、区画配置の面積が十分に確保できる場合、(3)、(4)の配置方法が上記の内容を考慮した場合は望ましいが、一部の制御器の二重装備を行う必要があるなどの問題もある。(1)、(2)の方法で、騒音面、守秘等を考慮するには船長事務室あるいは特定の区画を作り、その中にテレックス、ファックス等を設置する方法もある。
 これら閉鎖あるいは半閉鎖区画を作る場合、部屋の温度上昇、通風又は空調の要否の検討が必要である。
 小型船で、送受信機の容量が小さく、テレックス端末、ファックス等が装備されない場合には、(1)の配置方法が合理的である。
 
3・3・2 機器の配置
(1)機器の配置における一般的注意事項
 機器配置に関する一般的注意事項は次のとおりである。
(a)空中線の設置場所との位置関係
 一般に、室内の機器配置を決めた後に空中線配置の検討を行うのが通常の方法であるが、このような場合においても空中線の配置をある程度描いて機器の最適配置を行うのが機器の性能を十分に発揮させる上で理想的である。
(b)電路との位置関係
(1)空中線の配置に併せ、他機器の電路、無線用回路の電路、敏感電路、一般電路、妨害電路等の配置を考慮しながら、機器の配置を行うのが望ましい。(電路の計画については、3・3・4項を参照のこと。)
(2)機器間、機器と空中線間の接続電線の長さが最小となるよう考慮すること。
(c)他機器との関係
(1)周囲に、ヒーター等の高温物がないこと。
(2)湿気の少ない場所を選ぶこと。窓際に設置する場合は、窓の防水を完全にし、また視界を妨げない構造、配置としなければならない。
(3)磁気コンパスからの安全距離を十分に確保すること。小型船の場合で安全距離が確保できない場合は、安全距離以内でも影響を与えないことの確認が必要であるので注意が必要である。
(4)操舵室内に特別な区画を設けず、送受信機を装備する場合、ケーブル等からの漏洩電波で他の機器に影響を与えることも考えられるので、無線機器メカーの配置、取付工事要領書を十分に検討する必要がある。
(d)その他
(1)機器の配置は、操作、監視する者が容易に接近できるよう配慮のこと。
 従来より、機種が多く、その形状寸法も多種となっているため、従来採用されていたラック形、コンソール形にすることは難しくなってきているだけに、狭いスペースを有機的にレイアウトする必要がある。
 一例として、図3・8に示すように棚を設けて装備する方法もある。
(2)機器に接近するための通路は、幅700mm以上とするのが望ましい。
(3)通信卓等を設置する場合は、その高さは床面上から750mmを標準とする。
(4)通信操作の位置から、船内通信、連絡装置の利用が容易なこと。
(5)通信制御卓付近には、無線局免許状のほか必要に応じて事務机、椅子、時計、本棚、消火器、予備品格納場所(別の場所でも良い)等を装備、配置する。
 
(拡大画面:35KB)
無線区画前壁
 
91−5 MF/HF無線装置 データ端末
91−6 ROプリンタ
91−7 接続箱
95−1 インマルサットA又はB 通信装置
95−2 データ端末
95−3 ROプリンタ
95−4 ファクシミリ
95−5 モデム
95−8 ブザー
96−1 インマルサットC 通信装置
96−2 電源装置
96−3 データ端末
96−4 ROプリンタ
102−2 自動電話機  
図3・8 棚を設けて機器を配置した例







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION