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5・4・3 回路試験器(テスター)と電流分流器
 電流、電圧、抵抗等主な電気の量をまとめて測定できるのがテスターである。図5・4にテスターの外観図と測定回路を分離して示した。各回路の動作は後で説明する。交流電流は整流器で直流に交換して直流電流として測定する。
 メータは可動コイル型直流電流計でアナログ表示をするかデジタル電圧としてデジタル表示をする。図5・4はアナログ型のテスターを示す。電気の種類と測定範囲(レンジ)はスイッチで切り替える。
 
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図5・4 テスターと回路図
 
 図5・5に可動コイル型直流電流計の構造を示す。永久磁石NとS極の間に回転できる可動コイルを入れ、コイルに電流を流すと磁界と電流との相互作用(フレミングの左手の法則と呼ぶ)によりコイルが回転する。コイルに取り付けた指針も回転する。回転角度が電流の大きさに比例することから電流値が表示できる。可動コイル型電流計は精度がよく安定した直流電流が測定できるので標準計器とされている。
 
図5・5 可動コイル型電流計
 
図5・6 電流の分流器
 
 図5・6は電流計の測定レンジを拡大する分流器回路を示す。定格値(フルスケール)がig(A)、内部抵抗g(Ω)の電流計の定格値をm倍に拡大する場合に(a)普通分流器では電流計に並列に分流抵抗Sを挿入するとき外部から流し込める電流Iとigの間には
 
 
Iを定格値igのm倍とするため
 
mig=I (5・15)
 
として(5・14)式を書きなおすと
 
 
となるので電流計内部抵抗gの(m−1)分の1の分流抵抗Sを電流計に並列に加えると測定レンジがm倍となる。
 
 
となるのでSを切り替えると測定レンジを替えられる。しかし、Sを切り替えるとメータの応答性が変化して指針の動き速度が変化する欠点がある。これを解決したのが(b)の万能分流器である。Sの値は変えないで、Sの途中から電流端子を接続する。端子の位置をSの左からS/n、右から(S−S/n)の位置とすると
 
I=(nm)ig (5・19)
 
となり、m倍から更にnm倍にレンジが拡大される。Sを一定として端子の位置nを切り替えることから指針の速度が変わらないでレンジ切り替えができる。
 
 可動コイル型電流計と整流器を組み合わせると交流の電流及び電圧が測定できるがコイルを駆動する力は交流の平均値である。通常、交流は実効値で取り扱われる。家庭用の100V電圧は実効値100Vの交流である。このためメータの目盛りを実効値に変換してある。最大値Vpの交流の実効値と平均値との比を波形率と呼ぶ。
 
 
より可動コイル電流計で交流を測定したとき指針の駆動力は平均値なので実効値に換算した
 
目盛り=指針の駆動力(平均値)×1.11(波形率)=実効値指示 (5・21)
 
となるように交流の波形率1.11倍の目盛りで読み取ることにしてある。しかし、パルス波のように正弦波でない波形では波形率が1.11倍とならないので読取りに波形誤差が生ずる。
 一般に正弦波でない波形を整流計器で測定すると波形誤差を生ずるので実効値を指示する熱電対型電流(電圧)計のように波形に影響されない計器を使用する必要がある。
 
 アナログ型テスターの電圧計は、電流計に直列に外部抵抗を接続すると電圧計となる。外部抵抗の値を切り替えることから電圧計のレンジ切り替えができる。このときの外部抵抗を倍率器と呼ぶ。
 図5・7(a)に電流計Mに倍率器Rを直列接続した電圧計を示す。(b)は電圧計のレンジ切り替え回路を示す。
 
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図5・7 倍率器付電圧計
 
 (a)において電流計Mは内部抵抗rをもつので電流計の端子電圧Evは定格電流をIとすると
Ev=I×r (5・22)
となるが、この値は小さくて数mV〜数十mV程度なので大きな電圧を測定するには倍率器Rが必要になる。電流計の端子電圧Evのm倍の測定端子電圧Eとするための倍率器Rの値を計算する。電流計定格電流Iから
E=IR+Ir=I(R+r) (5・23)
E=mEv=mIr (5・24)
の2つの式からEとIを消去すると
R=(m−1)r (5・25)
となるので、電流計の内部抵抗rの(m−1)倍の倍率器を直列に接続すればレンジがm倍となる。倍率mは(5・24)式から
 
 
となるので(b)図のように倍率器Rを切り替えて電圧計のレンジが拡大できる。







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