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5・3 測定値と誤差
5・3・1 誤差
 測定値にはいろいろな原因による誤差が含まれる。誤差を分類すると
 
 
 系統的誤差は予測や補正が可能だが偶然誤差は突発的に起きるので対応ができない。
 理想として求める測定値を「真の値、T」とする。「測定値、M」が得られたときの誤差εは
ε=M−T (5・12)
誤差百分率ε(%)は
 
 
と定義される。計器の等級は誤差百分率を示し、1級の計器は誤差が定格値の1%以内であることを表している。
 
 測定値は数字で示される。測定値の中の誤差がある数字を沢山並べても意味がない。数字の中から必要な数字を有効数字と呼ぶ。有効数字は無効数字を四捨五入して表示する。円周率π=3.141592・・・は無限に続く数であるので計算に必要な有効数字に四捨五入する。
3桁のπ=3.14・・・4桁目の1以下は切り捨てる。
4桁のπ=3.142・・・5桁目の5は繰り上がって4桁目の1が2となる。
測定値の有効数字に注意が必要である。3.140の測定値の意味は
5桁目が4以下で切り捨てた場合:3.1403→3.140
5桁目が5以上で繰り上げた場合:3.1395→3.140(4桁目も繰り上げられて3桁目が3から4に上がる)
3.140の4桁目の0には5桁目で四捨五入をしたことが意味されている。同様に3.1400の指示値は6桁目の測定値を四捨五入したことを示している。このように測定値の最後の桁に0がある場合に0を勝手に取り去ることはできない。
測定値の計算に有効数字を考慮する必要がある。2つの測定値を加える場合
A=3.14、B=0.00053
のときA+B=3.14+0.00053=3.14053
と書いてもAの小数点以下3桁目に誤差が含まれているので小数点以下4桁目に有効数字があるBの測定値はAの誤差の中に含まれてしまうのでA+B=3.14とする。
 有効数字が指定されていない場合の測定値は通常3桁で表示する。
 
5・4・1 指示電気計器
 電流や電圧等の電気のエネルギーで指針などを動かして電気の量を指示するのが指示電気計器(メータ)である。
 メータを駆使する原理により種類が分類される。表5・5にメータの種類と主な用途を示す。代表的な電圧と電流の測定範囲も示した。
 メータの表面は図5・2に示す記号が書かれている。記号にはJIS規格、製造者、測定法の原理、階級(誤差)等が書いてあるので目的に応じてメータを選ぶことができる。
 
表5・5 メータの種類と用途
種類 略号 使用回路 電流〔A〕 電圧〔V〕 計器の用途
可動コイル形 M 直流 5×10−6〜102 10−2〜6×102 電圧計、電流計、抵抗計、回転計、温度計、照度計、磁束計
可動鉄片形 S 交流 10−2〜3×102 10〜103 電圧計、電流計、抵抗計、回転計
電流力計形 D 交直流 10−2〜20 1〜103 電圧計、電流計、電力計、周波計
整流形 R 交流 5×10−4〜10−1 3〜103 電圧計、電流計、抵抗計、周波計
熱電形 T 交直流 10−3〜5 0.5〜150 電圧計、電流計、電力計
静電形 E 交直流   1〜5×105 電圧計、抵抗計
誘導形 I 交流 10−1〜102 1〜l03 電圧計、電流計、電力計、回転計
可動コイル比率計形 XM 直流     抵抗計、温度計
振動片形 V 交流     周波数計、回転計
可動鉄片比率計形 XS 交流     力率計、周波数計、同期検定器
電流力計比率計形 XD 交直流     周波数計、磁束計、同期検定器電量計
 
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図5・2 メータの表示
 
 機械的に駆動する指針に変わって発光ダイオード、液晶、CRT等を用いた電子メータが使用されている。デジタル表示やグラフィック画面表示ができるなど新しい表示器として注目されている。図5・3(a)に透過型液晶LCDを用いた電子メータの断面図を示す。後からハロゲンランプで光を投影してLCD上にメータ表示をする。(b)に電子メータのブロック図と表示を示す。
 電子メータは可動部分がないので堅牢で指針のゼロ調整が不要である。表示画面には指針型と類似、デジタル数字あるいは棒グラフ等自由な画面が表示できる。新しい指示計器として電子メータの普及が広がると考えられる。
 
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図5・3 電子メータ







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