日本財団 図書館


3・7・2 従業制限(漁船特殊規則第2条〜第7条)
 漁船は、その操業形態等により他の一般船舶と同様に律し得ない事情があるから、一般船舶の航行区域に代え、従業制限をもって律することになっている。従業制限は総トン数20トン以上の漁船については、第1種、第2種及び第3種の3種に、総トン数20トン未満の漁船については小型第1種及び小型第2種の2種に区別されているが、これは、従業区域と漁業の種類とを併せ考慮したもので、次のとおりである。
 
第1種・・・ 主として沿岸の漁業(例えば一本釣漁業、延縄漁業、流網漁業、施網漁業等)
第2種・・・ 主として遠洋の漁業(例えば鮪及び鰹竿釣漁業、鮪、旗魚及び鮫浮延縄漁業、真鱈延縄漁業、鮭・鱒及び蟹漁業等)
第3種・・・ 特殊の漁業(例えば、母船式漁業、トロール漁業、捕鯨業、漁獲物の運搬業務、漁業に関する試験・検査・指導・練習及び取締りの業務)
小型第1種・・・ 採介藻漁業、定置漁業、旋(まき)網漁業、曳網漁業等を主として本邦の海岸から100海里以内の海域において行う漁業
小型第2種・・・ 鮭・鱒流網漁業、鮪延網漁業、鰹竿釣漁業等を主として本邦の海岸から100海里を超える海域において行う漁業
 
3・7・3 最大とう載人員(法第9条、施行規則第8条、第9条)
 船舶にとう載を許される人員を最大とう載人員といい、船舶の航行区域、居住設備、救命設備に応じ、旅客、船員及びその他の乗船者(旅客でも船員でもない者をいう。)について各別に定員を定めている。
 最大とう載人員の算定の標準は、一般船舶については船舶設備規程等漁船については、漁船特殊規定等小型船舶については、小型船舶安全規則、小型漁船については小型漁船安全規則において規定している。
 「人の運送の用に供する」とは、船員及びその他の者以外の人を乗せて運航することをいう。この場合において、船舶安全法上の「船員」とは、船員法の適用がある船舶については、同法に定める船員をいい、同法の適用がない船舶については、当該船舶内においてこれらと同種の業務に従事する者(この場合、当該業務(労働)の対象として報酬を受けるかどうかを問わない。)をいう。
 例えば、引かれ釣り舟の棹さし、保針、網取り又は見張り等に従事する者、はしけ等の家族船員、ヨットのスキッパー、クル及びその交替要員等である。
 これらの者については、実際には、その実態を把握し具体的に判断して適用されるが、専門の操船者がいない貸船等のように明確な区別がつかないものについては、1名とされる。
 「その他の乗船者」とは、上記の船員に準ずる者で次に掲げる者をいう。
(1)当該船舶の管理のため乗船する船舶所有者(船舶管理人及び船舶借入人を含む。)
 船舶所有者が法人の場合は、その役員
(2)貨物付添人
(3)警備、保安、試験、研究等に係る業務を遂行するために使用する船舶に当該業務を遂行するため乗船する者
(4)税関職員、検疫官その他船員以外の者で船内において業務に従事する者
 従って、前記の「船員」及び「その他の乗船者」以外の者が「旅客」に該当することになる。
3・7・4 制限気圧(法第9条、施行規則第10条、船舶機関規則第47条)
 ボイラーを備える船舶については、ボイラー及びこれに附属する装置のそれぞれの強度上許容し得る圧力値のうち最小値、すなわち、制限気圧を定めることになっている。なお、制限気圧に適応するよう安全弁を調節し、逃気試験を行った上、安全弁を封鎖している。
3・7・5 満載喫水線(法第3条、施行規則第11条)
 船舶安全法第3条により満載喫水線の標示をすることを要する船舶は満載喫水線規則又は船舶区画規程の定めるところにより標示することになっている。
3・7・6 その他の航行上の条件等(施行規則第12条)
 その他船舶の航行上特に必要と認められる条件は、個々の船舶毎に定められるのである。(船舶検査証書に記入する。)
 上記に準ずる取扱いを受けるものには、無線電信等の施設を要する船舶であるかどうかの別、揚貨装置の制限角度及び制限半径等が定められている。
 
3・8 海外における検査
 船舶の検査は、原則として船舶の所在地を管轄する管海官庁又は日本小型船舶検査機構が日本国内において行うのであるが、三国間輸送に従事している船舶、海外に漁業基地をおいて長期の漁ろうに従事している漁船等で、所定の検査期日までに、日本に帰航することが困難な船舶等に対しては、特例を設け、海外においても、検査を受けることができる制度が設けられている。すなわち、船舶安全法施行地外にある船舶の所有者が、海外において検査を受けようとするときは、その旨を関東運輸局長に申請すれば、船舶検査官を海外に派遣して、必要な検査を行わしめ、この検査に合格した船舶に対しては、必要な証書及び船舶検査手帳を交付又は返納が行われるのである。
 
3・9 外国船舶に対する検査
 外国船舶で次のものは、船舶安全法の全部又は一部が準用される。
(1)日本の各港間又は湖川港湾のみを航行する船舶
(2)日本船舶を所有し得る者が借入れた船舶で日本と外国との間の航行に従事するもの。
(3)その他日本に在る船舶
 船舶安全法を外国船舶に準用する場合、次の規定は除かれる。
(1)製造検査の規定
(2)予備検査の規定
(3)上記の(3)の船舶については、船舶乗務員の不服申立の規定
 なお、外国船舶の所属地の船舶安全法に該当する法令を大臣が相当と認めたときは、その法令に基づいて外国船舶が受有している証書は、船舶安全法に基づくものと同一の効力とみなされる。ただし、船舶安全法に基づいて交付した証書の効力を認める国の船舶に限るわけである。
 
3・10 その他の事項
3・10・1 再検査(法第11条第1項、施行規則第49条)。
 検査又は検定の適正公平を期するため、管海官庁、日本小型船舶検査機構又は指定検定機関の検査又は検定を受けた者が、その結果につき不服があるときは、30日以内にその理由を添えて、国土交通大臣に再検査又は再検定を申請することができ、再検査又は再検定に対し、不服があるときは、その取消の訴を提起することができる。
3・10・2 立入検査(法第12条)
 船舶の堪航性を良好に保持するため、船舶の施設が、法規の要求どおり維持され、船長の義務が履行されているかどうかを確めるため必要と認めるときは、管海官庁は、何時でも職員を船舶又は認定事業場に臨検させることができる。
 その結果、当該船舶等が、法律に違反している事実が判明したときは、船舶の航行停止その他の処分をすることができる。立入検査を行う職員は、その身分を証明する証票を携帯している。
 立入検査の制度は、外国の船舶で、日本国内にあるものにも適用される。
3・10・3 船舶乗組員の不服申立(法第13条、施行規則第50条)
 船舶乗組員のうち10人(船舶乗組員20人未満の船舶ではその半数)以上が、船舶の堪航性又は居住設備衛生設備その他人命の安全に関する設備に重大な欠陥があるとき、定められた手続きによりこれを申立てた場合には、管海官庁は、その事実の有無を調査し、必要があるときは、航行の停止その他の処分をしなければならないことになっている。
3・10・4 溶接技倆工(船舶構造規則第6条、船舶機関規則第5条)
 鋼船の船体、ボイラー、その他の圧力容器又は機関の部分を接合するのに、電気溶接、ガス溶接等の使用は不可欠である。しかし、これらの溶接による接合部の検査法に簡易なものがないこと、もし、この部分に欠陥があったときの災害が、極めて重大なものとなることが多いため、その安全性の確保については、溶接工の技倆の優秀さに期待せざるを得ない。このため溶接する材料の板や管の厚さと溶接する姿勢に応じ、技倆の種別を定め、これに応じて試験を行い、合格者でなければ従事できないよう工事を制限されることとなっている。また、合格者には証明書を与えることとしている。
 この試験は、所轄海運局がJISの方法により執行する。日本海事協会でも、同じような試験を行い、証明書を交付しているが、その合格者は、所轄海運局長の試験に合格したものとみなされる。
3・10・5 準備検査(施行規則第65条の3)
 準備検査は、船舶安全法第2条第1項の適用を受けていない船舶(本邦の海岸から12海里以内の水域のみにおいて従業する小型漁船、平水区域又は沿海区域のみを航行する推進機関を有しない長さ12メートル未満のヨット等)又は検査申請時点において適用を受けるかどうか明確でない船舶の安全性の向上を図るとともに、当該船舶が用途変更その他の事由により検査対象となった場合に、当該船舶又は当該船舶に備え付けようとする物件に係る定期検査又は予備検査の合理的な実施のため、製造者又は所有者の任意の申請に基づいて行う新しい検査の制度である。
 この制度の内容を要約すると次のとおりである。
(1)準備検査の対象
 船舶安全法第2条第1項の規定の適用を受けることが定まっていない船舶又は船舶に備え付けようとする予備検査の対象物件
(2)準備検査の申請者
 船舶又は物件の製造者(改造又は修理を行う者を含む。)又は所有者
(3)準備検査の内容
 定期検査又は予備検査に準ずる検査
(4)検査執行機関
 総トン数20トン以上の船舶又はこれらの船舶に備え付けようとする物件については管海官庁、総トン数20トン未満の船舶又はこれらの船舶に備え付けようとする物件については日本小型船舶検査機構
(5)検査の結果の通知
 管海官庁又は日本小型船舶検査機構は、準備検査を行ったときは、その結果を通知する書面(準備検査成績通知書)を申請者に交付する。
(6)検査の省略
 準備検査を受けた船舶又は物件について定期検査又は予備検査を受けることになった場合には、前記の準備検査の結果を通知する書面の内容を検討の上、当該定期検査又は予備検査において検査の一部が省略される。
(7)手数料
船舶の場合・・・定期検査の手数料に相当する額
物件の場合・・・製造に係る予備検査の手数料に相当する額
 なお、準備検査を受けた船舶の定期検査又は準備検査を受けた物件の予備検査の手数料の額は、正規の定期検査又は予備検査の手数料の額の1/2でよいことになる。ただし、準備検査を受けた日から起算して後1年以内に最初に検査を受けるものに限る。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION