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2.3.4 短絡電流
 船内短絡電流の計算方式には、次のものが挙げられる。
(1)IEC方式(等価発電機方式を含む。)
(2)電気協同研究会精密計算方式
(3)パーセントインピーダンス方式(船舶電気計算編3.5.2項参照)
(4)グラフ方式
(5)米海軍規格方式
(6)簡易計算法(NK規則参照)
 これらいずれの計算方式においても、発電機や電動機のメーカーより短絡電流計算上必要な諸定数を聞き、また回路のインピーダンスなどもよく調査して短絡電流を計算し、これに基いて過電流保護装置の定格遮断容量を決定しなければならない。これらの計算には事前の調査と計算に多大の労力を要する。
 ここでは国際的に最も受け入れ易いと考えられる(1)のIEC方式による計算法と回路の諸定数が明らかでない場合の(6)の簡易計算法について述べる。
 
(1)IEC方式
(A)同期発電機の短絡電流
 電気系統に接続される同期発電機は船内における最大の短絡電流の供給源であるので、この短絡電流の特質と大きさを知ることは重要である。
 短絡電流の計算は起こり得る最大短絡電流を想定して行われる。即ち、3相3線が同時に短絡されるとともに、対電圧位相関係の厳しい条件下で、短絡電流は最も大きく発生するが、その電流は回路の特性定数に依存して減衰する。
 最大短絡電流の時間経過に伴う変化の代表的なものは、図2.14に示す如くで、交流分及び直流分を含む短絡電流は交流成分と直流成分を別々に計算し、その合成電流の最大波高値(ピーク値)を計算する。
 
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図2.14 同期発電機端子短絡電流の時間関数
I''k
初期対称短絡電流
   
idc
短絡電流の非周期的減衰成分(直流成分)
ip
短絡電流ピーク値
 
A
非周期成分の初期値
Ik
持続短絡電流
 
 
 
 
 
 ピーク値は短絡直前の負荷状態、発電機のインピーダンス特性及び時定数特性によって、t=0から半サイクル時点の間に発生するが、ピーク値の計算は短絡直後の半サイクル時点で計算することが容認されている。
(i)交流成分
 短絡電流の交流成分の大きさは、主として発電機のリアクタンスにより決定される。短絡電流の交流成分Iac(t)は次式により示される。
 
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 但し
 
               I''kd 初期過渡電流成分の初期値 〔RMS A〕
  I'kd 過渡電流成分の初期値 〔RMS A〕
  Ikd 持続短絡電流 〔RMS A〕
  T''d 初期過渡減衰時定数 〔sec〕
  T'd 過渡電流減衰時定数 〔sec〕
 
 持続短絡電流は電圧制御系の機能に依存し、その大きさが左右されるので、詳細の値は発電機の製造者より、その情報を確認する必要がある。
 処で、
 
 
 但し、
 
               Ra 同期発電機の固定子回路の抵抗値 〔Ω〕
  x''d   〃直軸初期過渡リアクタンス 〔Ω〕
  X'd   〃直軸過渡リアクタンス 〔Ω〕
  E''q0 短絡直前の初期過渡横軸電圧 〔V〕
  E'q0 短絡直前の過渡横軸電圧 〔V〕
 
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 但し、
 
               U0 短絡直前の電源系統線間電圧〔V〕
  I0 短絡直前の負荷電流 〔RMS A〕
  φ0 短絡直前の負荷位相角 〔RAD 〕
 
(ii)直流成分
 直流成分は次式で示される。
 
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 但し、
Tdc:短絡電流の直流分減衰時定数〔sec〕
(iii)波高値(ピーク値)Ip
 
 
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(iv)実用的簡略計算法
 下記の条件に従い、計算の簡略化を行う。
(イ)短絡直後1/2サイクル時点の短絡電流の値を求めるのが目的であるから、緩やかな減衰特性の過渡電流成分の1/2サイクル時間の減衰は無視する。
 計算結果は幾分か大き目になるが許容し得る程度である。
(ロ)負荷時短絡の場合は、無負荷短絡の場合より、交流分で5〜10%増加するが、計算条件を簡易にするために、無負荷時短絡の場合の短絡電流を計算し、交流分は10%増しとする。
(ハ)直流分は短絡直前の負荷力率が低い程、増加の程度が小さいが、事前負荷の通常の力率を考慮し、無負荷短絡の場合の値の3%増しとする。
 従って、交流成分の簡略式は次式で示される。
 
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