2.4 電気設備
2.4.1 一般的事項
(1)電圧及び周波数
電気設備への供給電圧は、設備規程第172条及び295条の規定による。
(供給電圧)
第172条 次表に掲げる電気設備への供給電圧は、同表に規定する電圧を超えてはならない。
電気方式 |
種類 |
供給電圧 |
直流方式 |
照明設備及び小形電気器具 |
250ボルト(引火点摂氏61度以下の油を積載する船舶にあっては150ボルト) |
動力設備(小形電気器具を除く。) |
500ボルト(引火点摂氏61度以下の油を積載する船舶にあっては250ボルト) |
電熱設備(小形電気器具を除く。) |
250ボルト |
交流方式 |
照明設備及び小形電気器具 |
150ボルト |
動力設備(小形電気器具を除く。) |
三相の場合には450ボルト 単相の場合には250ボルト |
電熱設備(小形電気器具を除く。) |
250ボルト |
|
(電路電圧)
第295条 船内通信及び信号設備の電路電圧は直流にあっては220ボルト、交流にあっては120ボルト以下でなければならない。
(関連規則)
設備規程第172条関係(舶検)
1. 舶検第210号(42.10.23)
船舶設備規程第172条に規定する電熱設備の供給のうち居住区域(船舶防火構造規則第2条14号の居住区域をいう。)以外の場所で使用される固定式の電熱設備の供給電圧にあっては、その取扱者が火災、漏電等の電気的安全性を十分確認した場合は同規程第172条の規定にかかわらず同規程170条第1項の規定に基づき交流、直流の両方式とも500Vまでの供給電圧を許可して差し支えない。
2. 舶検第371号(51.9.27)
集魚灯の供給電圧について
下記(1)〜(4)留意のうえ感電、火災、漏電等に対する電気的安全性を十分確認した場合に限り船舶設備規程第172条の規定にかかわらず交流250ボルトまでの供給電圧を認めて差し支えない。
記
(1)配電盤、区電盤及び分電盤はデッドフロント型とすること。
(2)最終支回路と集魚灯リード線の接続は、船舶設備規程第254条の規定によること。ただし、ケーブルの防水性、難燃性、機械的強度、電気的性能を損なう恐れのない方法で接続する場合は同規定によらなくてもさしつかえない。
(3)他動的損傷の受けやすい場所に布設する電路の配線工事は船舶設備規程第247条の規定によること。
(4)定格出力50kW(又は50kVA)以上の発電機を制御する配電盤の自動しゃ断器は、船舶設備規程第221条に規定する自動しゃ断器とすること。
3. 船舶検査心得172.0(供給電圧)
(1)「小型電気器具」とは、照明用の支回路にコードにより接続する扇風機、電気アイロン、電熱器、電気洗濯機等をいう。
4. 舶検第373号(53.9.1)
探照灯及び投光器の供給電圧について
九海舶検第143号(昭和53年8月4日付け)をもって伺い出のあった標記については、下記を条件として交流250Vまで認めて差し支えない。
記
(1)探照灯及び投光器は固定式かつ防水性のものとすること。
(2)操作用電圧は交流l00V以下とし、器具は船体にアースすること。
(3)灯具は次の試験に合格すること。
(i)絶縁耐力試験(試験電圧は1,500V、試験時間は1分間とすること。)
(ii)絶縁抵抗試験(1メグオーム以上)
5. 舶検第126号の2(57.10.21)
集魚灯用省エネルギー型放電球の使用について
集魚灯に放電球を使用する場合は下記事項によること。
記
(1)集魚灯の供給電圧を250ボルトまで認めるにあたっての通達(舶検第371号昭和51年9月27日付)を適用すること。
(2)安定器の露出金属部分は、十分な接地工事を行なうこと。
(3)球切れ等の異常発生の場合に供給電圧が250ボルトをこえるものにあっては、各安定器毎に回路を遮断できるスイッチを取り付けるとともに、放電球の交換時等必要な場合には回路を遮断するよう指導すること。
(4)灯具は、船舶設備規程第176条の規定によること。
(5)安定器等の設置場所は、船舶設備規程第174条の規定によるとともに、船舶の復原性に関し十分考慮されたものであること。
(説明)供給電圧の制限値及び周波数の標準
(1)供給電圧の制限値は、設備規程第172条に定められているが参考までに、各協会の使用制限電圧を次表に示す。(ABSは電圧について記述していない。)
船級協会等の規則 |
装置 |
LR |
BV |
NK |
直流方式 |
動力 |
15,000V |
660V |
500V |
電熱 |
固定配線 |
500V |
250V |
500V |
居室、公室 |
|
250V |
250V |
電灯 |
250V |
250V |
250V |
電気推進設備 |
− |
1,000V |
1,500V |
交流方式 |
動力 |
15,000V |
1,000V(三相)
500V(単相) |
500V |
電熱 |
固定配線 |
500V |
1,000V(三相)
500V(単相) |
500V |
居室、公室 |
250V |
250V |
250V |
電灯 |
250V |
250V |
250V |
電気推進設備 |
− |
11,000V |
11,000V |
|
注:LRは、イギリスの船級協会規則。BVは、フランスの船級協会規則。NKは、日本海事協会規則。ABSはアメリカの船級協会規則。
(2)周波数の標準は、原則として60Hzとする。
(2)配電方式及び配電
(a)配電方式は、設備規程第173条の規定による。
(配電方式)
第173条 配電方式は次に掲げるものでなければならない。
(1)直流2線式
(2)直流3線式
(3)交流単相2線式
(4)交流単相3線式
(5)交流三相3線式
(6)交流三相4線式
2. 船体は、管海官庁が安全性を考慮して差し支えないと認める場合を除き、これを導体として使用してはならない。
(関連規則)
設備規程第173条関係(船舶検査心得)
(配電方式)
173.2(a)「管海官庁が安全性を考慮して差し支えないと認めた場合」とは、次に掲げる回路を設ける場合とする。
(1)外部電源式陰極防食装置の回路
(2)絶縁監視装置の回路
(3)セルモーター、雑音防止用コンデンサを備えた無線装置、接地を要する本質安全防爆構造の装置等の限定的かつ局地的に接地する装置の回路。ただし、タンカー及びタンク船の回路にあっては、いかなる場合にあっても派生電流が危険場所を直接流れないときに限る。
(b)配電については、設備規程第239条から第241条までの規定によるほか、船舶の各所に配置される電気機器が、その種類、用途、使用条件、重要度などによって、それぞれ故障なく円滑高能率に管理することができ、かつ、修繕保守が容易にできるよう考慮する必要がある。
(配電)
第239条 主配電盤又は補助配電盤から動力設備及び電熱設備に至る電路は、これらの配電盤から照明設備並びに船内通信及び信号設備に至る電路のいずれからも分岐して配線してはならない。ただし、小容量の動力及び電熱設備に至る電路については、この限りでない。
第240条 照明設備の最終分岐電路は、次の各号に適合するものでなければならない。
(1)接続する電灯及び小形電気器具の総数が15個以下のもの、
(2)次に掲げる負荷電流をこえないもの
(a)公称断面積2.0平方ミリメートルのケーブルを使用した場合 10アンペア
(b)公称断面積3.5平方ミリメートルのケーブルを使用した場合 20アンペア
第241条 直流三線式発電機の不平衡電流は、定格電流の25パーセントをこえないように配電しなければならない。
(関連規則)
(1)設備規程第240条関係(舶検)
(1)舶検第136号(53.3.15)
照明設備の最終分岐電路については、船舶設備規程第240条の規定によっているところであるが、負荷電流が8アンペアをこえない同電路については、公称断面積1.25mm2のケーブルの使用を認めてさしつかえない。
(2)設備規程第240条関係(NK規則)
2.2 システム設計一般(最終支回路)
2.2.6 電動機回路
重要用途の電動機及び1kW以上の電動機には、原則としてそれぞれ独立した最終支回路を設けなければならない。
2.2.7 電灯回路
−1. 電灯用の最終支回路には、扇風機及びその他の日常生活に用いる小型電気器具を除き、電熱器及び電動機を接続してはならない。
−2. 15A以下の最終支回路に接続する電灯の個数は、次に示す数量以下でなけらばならない。ただし、接続される器具の合計負荷電流が決まっており、その値が最終支回路の保護装置の定格電流の80%を超えない場合は、電灯の個数は制限されない。
50V以下の回路 |
10個 |
51Vから130Vまでの回路 |
14個 |
131Vから250Vまでの回路 |
24個 |
−3. 10A以下の電灯最終支回路にソケットが近接して設けられる装飾灯、電気標識等を接続する場合は、電灯の個数は制限されない。
−4. 主機又はボイラが装備された区画、広い機械室、広い調理室、回廊、端艇甲板へ通じる階段及び公室の照明は、少なくとも2組の回路によって行い、1回路に故障を生じても暗黒とならないように電灯を配置しなければならない。2回路のうち1回路は、非常灯回路とすることができる。
−5. 非常灯回路は、3.3によらなけらばならない。
2.2.8 通信装置及び航海装置回路
−1. 重要な船内通信、信号及び航海装置は、なるべく独立した回路を持ちその装置自体で完全に機能を保持できるものでなければならない。
−2. 通信用ケーブルは、誘導障害を生じるおそれのないように敷設しなければならない。
−3. 一般警報装置への給電回路には、操作スイッチ以外のスイッチを設けてはならない。また、過電流保護に遮断器を用いる場合は、「切」位置にしたまま放置されることのないように適当な方法を講じなければならない。
2.2.9 無線設備回路
無線設備の給電回路は、国際法及び船籍国の国内法の要求に従って設備しなければならない。
2.2.10 電熱器及び調理器回路
−1. 電熱器及び調理器は、個別に最終支回路を設けなければならない。ただし、15A以下の最終支回路には、10個以内の小型電熱器を接続することができる。
−2. 電熱器及び調理器回路の開閉は、それらの器具に近接して設けられた多極連係スイッチによって行われなければならない。ただし、15A以下の最終支回路に接続される小型電熱器については単極スイッチとすることができる。
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