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2・12 計測制御装置
 船舶には、下記のように多くの電気計測装置がある。電気計測装置は、他の計測装置に比べて、精度、感度、操作などがすぐれており、温度、湿度、流量、液面、圧力回転のような単一量のみならず、動力のような二つの量の積、さらに動力の積分など殆んどの量が電気的量に変換できる。
 電気的や光学的に温度を測定する計測器には、電気抵抗式温度計、熱電対式温度計、光高温度計等があり、遠隔測定や制御のためには電気的な計測法が便利である。温度指示計と熱電対の間の接続には、熱電対端子部の温度変化により生じる誤差を補償するために、一般には熱電対とほぼ同じで熱電的特性をもつ補償導線が使用される。
(1)電気抵抗式温度計
 電気抵抗式温度計は、温度変化による電気抵抗の温度変化を利用したものである。金属の電気抵抗は、一般に正の温度係数をもつ。白金は高温まで化学的に安定し、適当な温度測定範囲は、一190℃から1,100℃といわれ、溶融点近くまで測定できる。半導体の電気抵抗の温度係数が負(温度が上がると抵抗値が低下する特性をいう。)であるのを利用したものにサーミスタがある。
(2)熱電対式温度計
 熱電対式温度計は熱電対の熱起電力を測定して2接合点間の温度差を求めるもので、測定範囲は最高1,600℃ぐらいまである。
 流量測定には流体の容積か容量を直接測定する方法と、流れの割合を測定する方法がある。これらの測定値を変位や力に変換して、次の二次変換を行って、遠隔指示や自動制御に使う。電気式流量計としては、電磁流量計、超音波流量計、熱形流量計、放電計量計、アイソトープなどがある。
 液面測定には、ゲージグラス、フロート変位、音波の反射などによる、液面の位置、基底からの高さを直接測定する方法と、液体の圧力、測定液体の電気的性質を利用するなど液面位置と関係づけられた他の量を測定して液面位置を推定する方法がある。単に液位を直接又は遠隔指示するものと、オンオフ制御して液位制御するもののほかに、連続制御するものもある。
(1)フロート変位液面計
 フロート変位液面計は、液位を制御用信号として変換する最も一般的な方法であって、フロートの動きを機械的又は電気的にとりだすものと、フロートの浮力の変化を利用するものとに大別される。
(2)電気容量液面計
 電気容量液面計は、プローブという電極を挿入し、液面の上下によって変化する電極間の静電容量を測定し、液面の検出を行うもので、液体が絶縁性のものと、導電性のものとで構造が若干違う。これらの液面計は、液体の温度変化によって誘電率や固有抵抗値が変化して誤差を生じる。また、一般には高価であって、引火性ガスを発生するような液体には十分な絶縁を施すことが必要であるが、粘度が高い液体の液位測定に効果的である。
(3)超音波液面計
 超音波が液体から気体へ、また、気体から液体に入射する場合殆んどその全部が液面で反射して戻ってくる。超音波液面計は発振器から発した超音波が液面で反射して受信器に戻ってくるまでの時間を検出して液位を測定する装置である。この液面計は、音速が気温によってかなり変化するので補正装置を必要とするが、液の種類及び温度による誤差が小さい利点がある。
 一般に使われる電気式回転計には、次の2つがある。
(1)回転速度を電磁誘導作用によって電圧に変換して測定する方法
 もっとも一般的なものとして速度発電機法があり、この発電機には直流他励磁形、単極形、交流誘導形、交流永久磁石形などがある。直流他励磁形は、通常の直流他励磁発電機と同じ原理で界磁を一定の電圧で励磁しておけば、誘起電圧が回転速度に殆ど比例するような特性をもっている。
(2)回転数を断続的なパルスに変換して測定する方法
 この方法の一つに、測定しようとする回転軸に断続接点をつけ、電気回路を開閉して回転数と同じ数又はこれに比例した数の断続電流を発生させて、周波数計により測定するものがある。
 上記の各電気計測制御装置のほか、次のような計測装置が使われる。
(1)動力計
 内燃機関、蒸気機関などの原動機の発生動力や推進器、発電機、電動機、ポンプ、通風機などで消費する動力の量を測定するのに、回転力だけを測定する回転力計やねじりを測定するねじり計が使われる。
(2)電気検塩計
 密閉したボイラでは給水中に塩分を含まないようにするのに、もし給水管が破れてボイラに塩水が混入すれば、ただちに警報して、給水の連続監視を行うことが必要である。電気検塩計(導電率式濃度計)は給水中の二つの相対する電極間の電気抵抗を測定して塩分の混入を知って、その測定結果を指示、記録さらに警報を行うものである。
 図2.145は検塩計測定回路の接続の一例を示したものである。
図2.145 検塩計接続図
 
(3)外部電源防食装置
 鋼製船体の海水に浸っている部分は、塗装膜の電気的絶縁効果が衰えてくると、船体に腐食が生じてくるので、一般的には防食亜鉛のような犠牲陽極を用いて海水を電解液とする電池作用を起させ、犠牲陽極から鋼船体部へ電流を流すことに、よって腐食作用を抑止している。これに代る方法として、特殊な耐消耗陽極電極を使用し、これに外部から直流電圧を加えて、図2.146に示すように船体表面に電流を流し込むようにして、犠牲陽極と同等の防食効果を得る装置が外部電源防食装置である。この装置は一般に図2.147に示すように、陽極、基準電極、整流電源部、制御器から成る。陽極電極は通常、白金張りチタニウム又は特殊鉛合金などが用いられ、基準電極には銀塩化銀電極又は亜鉛電極が用いられる。この装置の制御は、基準電極により検知した船体の海水に対する電位を、予め設定した適当な防食船体電位値と比較し、自動的に防食電流を変化させ、設定の船体電位を保たせるように動作する。
図2.146 陽極より船体へ流れる電流
 
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図2.147 外部電源防食装置の概略結線図







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