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12. 光ファイバケーブルの装備工事
 
12.1 光ファイバケーブルの布設
 船舶における一般的な電線の布設方法としては、JIS F 8071−86や各船級協会規則などによって確立されたものがあり、光ファイバケーブルの布設方法も、これらに準拠することが望ましい。本章は、全プラスチック光ファイバを船舶に布設するに際して、特に考慮しなければならない事項を付け加えたものである。
 
12.1.1 電路
(1)できるだけ真っすぐで、かつ、点検可能な場所とする。
(2)なるべく最短距離とする。ただし、入り乱れてケーブルに無理を与えたり、不体裁とならないようにする。
(3)大形機器などの搬出入開口部となる甲板や隔壁には、原則として、布設しない。
(4)機器の分解や移動等のときに支障とならない場所とする。
(5)船体構造物の伸縮接合部を横切って布設しない。やむを得ず布設する場合には、接合部の膨伸に合った長さの湾曲部を設け、その内半径をケーブル外径の12倍以上とする。
(6)結露や水滴の作用を受けない場所を選ぶ。
(7)高温管や高温の機器からできるだけ離して布設する。目安として200mm以上離すのが望ましい。しかし、離すことが困難な場合は、実用状態においてケーブルの外被温度が、その許容温度を超えないよう、熱よけや冷却通風などの方法を考慮する。
 また、熱気が著しく集積する場所に布設する電路は、自然又は機力による冷却通風を行う。
(8)囲壁、洗濯機室、調理室などの火災の危険の高い場所からできるだけ離す。また、隣接する場所の火災によって生じる隔壁の加熱による焼損を防ぐような方法で布設する。
(9)船倉、甲板上、機械室床下、倉庫などの機械的損傷を受けやすい場所には布設しない。やむを得ず布設する場合は、金属電線管、可とう電線管又は保護覆いにより、適当な保護を行う。
(10)同一又は同種の目的で電路を二重に設ける場合には、両舷又は上下甲板に分け、水平及び垂直の両方向にできるだけ離す。
(11)電路の構造は耐震性を考慮し、丈夫なもので、かつ、適当な耐食処理を施したものとする。
 
12.1.2 甲板、隔壁の貫通
(1)ケーブルの布設に当たっては、隔壁、甲板などの主要部材に、必要以上の穴をあけない。
(2)水密の甲板及び隔壁を貫通する場合には、電線貫通金物などによる有効な水密手段を講ずる。
(3)甲板を貫通するケーブルは、甲板上の適当な高さまで保護する。
(4)非水密甲板をケーブルが貫通する場合にはコーミングを使用する。コーミングの高さは、デッキコーミングより高くする。
(5)非水密隔壁をケーブルが貫通する場合は、必要に応じてコーミングやブッシングを取付ける。
(6)ある等級の耐火性を必要とする隔壁又は甲板をケーブルが貫通する場合には、耐火性を損なわない措置を施す。
 
12.1.3 ケーブルの切断
(1)ケーブルの切取寸法は正確に計測し、機器内での接続作業のための余長や切断するときの捨て代などを各端に1〜2m見込んでおく。
(2)ケーブルを切断する工具は一般電線用と同じでよい。
(3)ドラムからケーブルを切取る時は適当なドラム回しを使用し、ケーブルに傷やねじれを与えないように注意する。
(4)ケーブル端には、粘着ビニルテープを巻付けるなどして、適当な防湿処理を施す。
(5)ケーブルの両端には、布設を誤らないようにケーブルの種類、識別記号などをあらかじめ設けておく。
(6)ケーブルを丸束とするときの内径は、ケーブル外径の20倍以上とする。なお、ケーブルを切取って床に置くときは、8の字取りを行うこと。
 
12.1.4 ケーブルの布設
(1)布設時の災害の防止と作業の円滑化のため、必要に応じて足場やケーブル架設装置などをあらかじめ設けておく。
(2)ケーブルを直接引っ張る場合、損傷を与えるおそれのある箇所には、あらかじめ丸太やローラなどを当てておく。
(3)ケーブル布設は、電路付近のガス溶断・溶接・歪取り工事などの火気工事が完了した後が望ましいが、工程などの関係からやむを得ず先行して布設する場合には、焼損を受けないよう、これらの火気工事がまだ残っている箇所には十分な保護を行う。
(4)ケーブルを引っ張るときには、ケーブルがねじれないよう注意するとともに、ケーブルに過大の張力を与えてはならない。張力の限度は、ケーブルの種類や仕上り外径によって異なるので、ケーブル仕様による。
(5)ケーブルの曲げ半径は、その外径の10倍以上とする。なお、コーナーでケーブルを引っ張るときには、20倍以上とする。
(6)長距離の電線管内へ布設する場合を除き、ケーブルの引張り作業は、人力によることが望ましい。また、がい装のないケーブルは、がい装ケーブルの布設が完了した後で布設するのが望ましい。
(7)ケーブルは、一般の電線と同電路、同一バンド内に布設することができる。ただし、複合ケーブルは、一般電線を含むので、本質安全回路とは別電路としなければならない。
(8)既にコネクタ接続などの端末処理を施したケーブルを布設する場合は、端末に十分な保護を行ない、布設中に損傷を与えることのないよう注意する。
(9)ケーブルを積重ねて布設するときは、原則として太い線を下積みとし、ハンガの中央部が高くなるように積むことが望ましい。
(10)ケーブルを布設する金属電線管又はトランクについては、次の点に注意する。
(a)内面を十分平滑に仕上げ、耐食処理を施す。
(b)ケーブルを損傷しないように、端末を成形するか又はブッシングをはめる。
(c)ケーブルを容易に引込めるような、内部寸法と曲げ半径とする。
(d)内部に水がたまらないように配置する。
(e)全体の長さから判断して、必要ならば適当な伸縮継手を設ける。
(f)ケーブルを引っ張るときに損傷を受けることのないように、必要があれば、引込み箱を設ける。
 
12.1.5 ケーブルの固定
(1)ケーブルの固定には、一般電線と同様のケーブルバンドを使用することを原則とし、締付けトルクは50kgf・cm以下とする。
(2)ケーブルバンドは主に巻きバンドとし、ケーブルの被覆を傷めないで、保持できる大きさの表面積と形状をもったものとする。
(3)がい装のないケーブルを固定するときは、バンドの締付けにより被覆を傷めないよう、ケーブルの外面に適当な保護材を巻くか、あるいはビニル被覆のバンド又はNK承認のプラスチックバンドを使用する。
(4)ケーブルを固定するときは、張力のない状態で行う。
(5)ケーブルの固定間隔は、一般電線の固定間隔に合わせてよい。
 
12.1.6 接地など
 ケーブルのがい装は、光ファイバケーブルであっても、安全上有効に接地する必要がある。
 ただし、がい装が電路金物に金属バンドで固定されるなど有効に接地される場合には、特に行う必要はない。
 
12.2 光ファイバケーブルの端末処理
 光ファイバケーブルの布設後、端末処理を行う。
 一般ケーブルの端末処理及び接続方法については、JIS F 8071−86(低電圧電力系統用ケーブルの選択及び敷設)や船級協会の規定があり、光ファイバケーブルについても、これらに準拠するが、一般ケーブルとは大きく異なる部分もあるので、注意を要する。端末処理や接続に使用する工具には、多様なものがあり、必ずしも専用キットとして付属されているものが使いやすいとは限らないので、新規に改良されたものなどを含め、多くのものを試してみて、自分に合ったものを選択する必要がある。
 融着接続器を含め、専用工具類の扱いについて、あらかじめ習熟しておくことが重要である。外被をはぐ専用カッターなども、初めてのときには、力の入れ加減などが分からないことが多い。特に、折れやすい心線の扱いには、ある程度の慣れが必要である。
 
12.2.1 端末処理
(1)端末処理作業を行うときの一般的な注意など
(a)光ファイバコードは汚れやほこりを嫌うので、作業現場の整理・整頓・清掃を事前に行っておく。
(b)光ファイバコードの取り回し、接続機器、工具類は、あらかじめ効率よく使用できるように、配置や並べ方を工夫しておくとよい。コネクタ部品なども、組立てる順番に、最初から小分けしておくと作業がはかどる。
(c)作業に入る前に工具をよく点検整備しておく。
(d)マニュアルを熟読し、事前に作業工程を頭の中に入れておく。
(e)作業に当たっては、二人で行った方が簡単でやりやすく、丁寧な作業ができ、しかも時間が大幅に節約できる。
(f)光ファイバコードの端末処理を行うときの一時的な許容曲げ半径は、全プラスチックファイバの場合は10mm以上とする。
(g)光ファイバケーブルを切断したときの端末は、防水及び防湿のためにPVCキャップやPVCテープなどで処理し、結線時まで外さないように注意する。
(2)ケーブルの固定
(a)ケーブルは接続を行う箱の入口部分で完全に固定し、ケーブルの重さや曲げ応力によるテンションがファイバコードにかからないようにする。
(b)あじろがい装とシースは、接続を行う箱の入口の固定位置から先をはぎ取り、コードとテンションメンバだけを露出させる。
(c)あじろがい装のないケーブルの場合は、テンションメンバを必ず固定する。固定する位置は、ケーブルの進入方向と同一の直線上とする。
(d)ファイバコードは、端末処理後の余長をループにして、接続を行う箱の中に固定する。
 このとき、コードが振動したりテンションがコネクタや接続部分などにかかることのないように、固定されていることを確かめる。ループの直径は60mm以上のできるだけ大きいループとするのがよい。また、ファイバコードを固定するため専用のクランプやバインド材料が販売されているので、これを利用するとよい。







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