4・13 配線器具(電路器具)
主配電盤又は非常配電盤から、船内の多くの電気機器へ給電するには、図4・15のとおり、一般に樹枝状配電方式(稀には環状配電方式)が計画される。その途中において用途又は目的によっていろいろの配線器具(電路器具)が使用される。以下これらを述べる。
図4・15 船内給電回路例
4・13・1 分電盤
過負荷保護装置を組合わせて最終支回路に電力を給電する盤を金属製箱内に収めたものである。これにはJMS8828−98規格(船用遮断器式配電箱)がある。JISF規格では回路電圧250〔V〕以下で、支回路定格電流はヒューズ式では16〔A〕以下で、遮断器式では遮断器の定格電流15〔A〕どまりである。
4・13・2 区電盤
他の区電盤、分電盤又は最終電気機器等への給電を制御する盤を金属製箱内に収めたものである。これにはJMS8829−98規格(船用遮断器式配電盤)がある。JMS規格では回路電圧250〔V〕以下で、支回路定格電流はヒューズ式では使用者の指定により、遮断器式では遮断器の定格電流によるが、一応100〔A〕どまりである。
4・13・3 船外給電箱
停泊中、陸上電源を受電するため設けられ、主配電盤又は非常配電盤を経て船内各負荷に給電するもので、配線用遮断器、相回転方向指示装置などを備えている。これにはJMS8825−98規格がある。
4・13・4 スイッチ及びプラグ類
(1)5〜10〔A〕容量の小形スイッチ
これにはJMS8840−99規格(非防水形)及びJISF8841−97規格(防水形)規格がある。定格電圧は125〜250〔V〕である。ただし、3路又は4路スイッチはJISF及びJMS規格にはないので市場品を使用するか、前記スイッチを改良するかである。
(2)プラグとレセプタクル
JMS8831−99・8835−99規格(非防水形)及びJISF8836−96・8838−94規格(防水形)としては、非防水型と防水型とがあり、前者は定格電圧250〔V〕以下で定格電流15〔A〕まである。極数は2極で、防水型は2極又は3極である。なお、非防水・防水にも接地極を有している。
(3)冷凍コンテナ用ソケットアウトレットボックス
電源レセプタクル(250V−60A/500V−32A)、遮断器およびモニタ用レセプタクル(24V−10A)を組み込んだ防水型のアウトレットボックスである。(JISF8837−96)なお就航航路や船主によっては国際的互換性に注意する必要がある。(ISO1496/2、JISZ1619−94)
4・13・5 遮断器
(1)気中遮断器
一般にACB(Air Circuit Breaker)と呼ばれ回路の電流を遮断するとき、大気中で接点間に発生するアークを安全に消すことのできる遮断器をいう。この消弧を行う方法に吹消コイル(磁気吹消)を使用するものと、1938年スレピアン博士考案のディアイオングリッドを使用したものがある。気中遮断器の定格電流は60〜6000〔A〕の範囲で、定格遮断電流は交流最大で10,000〜135,000〔A〕、までである。これは自由引きはずし装置付きで、過電流引はずし、不足電圧引はずし等希望により選定付加される。なお、時限装置を設けるのが普通であり、一般に発電機回路の保護に用いられる。なお、JISC8372−91(低圧遮断器)、JEC160−78(気中遮断器)、NK等に規定されている。
(2)配線用遮断器
一般にMCCB(Moulded Case Circuit Breaker)と呼ばれ、使い易く経済的なことから最も利用されすぐれた開閉性能をもち、消弧装置はディアイオングリッドを使用し、小型にできることから、配電盤、分電盤などに使用されている。なお、JISC8370−96(配線用遮断器)、NKなどに規定されている。
4・13・6 ヒューズ
金属の可溶体の溶断又は気化によって回路の過負荷短絡を保護する目的に使用されるが、欠点として各相同時遮断が行われず、また、正確な限時を望むことが困難で、動作のたびに新品と交換する手数がかかる。したがって、小容量のものとか、主として回路の短絡保護用に用いられている。これもJISC8314−83(配線用筒形ヒューズ)、JISC8319−83(配線用ねじ込みヒューズ及び栓形ヒューズ)の規格がある。詳細はこれを参照のこと。また、NK規則を参照のこと。
4・13・7 電磁接触器
交流電磁開閉器と混同しやすいのでこれを説明すると次のとおりである。
JISC8201−4−1−99(低圧開閉装置及び制御装置)の定義によれば、電磁接触器と過電流継電器と組合わせて、一つの箱に収めたものを交流電磁開閉器と称するとある。電磁接触器は直流又は交流回路において電磁石の励磁により閉路し、減磁により開路する接触子をもち、かつ、電気回路の頻繁な開閉に耐える開閉部を有するものである。
小型の電磁接触器に複数の接点数をもったものを補助継電器として使用されている。
詳細はNK規則を参照のこと。
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