4・7 雑音(ノイズ)
4・7・1 雑音の分類と性質
自然界に発生する雷や宇宙から来る雑音等を自然雑音と呼ぶ。蛍光灯やトランジスタ等の電気・電子機器から大きな人工雑音を発生している。雑音は不規則(ランダム)に変動して、広い周波数成分を持つので雑音だけを取り除くのは困難となる場合が多い。
抵抗から発生する熱雑音は周波数分布(スペクトル)が一様に広がる性質がある。この雑音をテレビの画面に映すと一面に白い背景雑音と見えるのでこのような雑音を白色雑音又はホワイトノイズと呼ぶ。50/60Hzの電源から発生する雑音は電源周波数とその高調波にスペクトルがある。このような雑音をテレビ画面に映すと模様が見えて、カラーでは色が付いた模様となるので有色雑音又はカラードノイズと呼ぶ。一般に人工雑音はカラードノイズになる。
信号と雑音のスペクトルが離れていればフィルタなどで分離できるがランダム雑音が混入すると分離が困難となる。
電磁両立性(4・8)で述べる電波干渉等はカラードノイズと同様に妨害となるので妨害波を出さないための規制が行われている。
4・7・2 信号対雑音比(S/N)
静かな場所で電話をかけるときは小さな声で通じるが駅の公衆電話等は大きな声で叫ばないと通話ができない。情報を確実に伝えるには情報の大きさではなく背景の雑音を考慮する必要がある。これを信号対雑音比、S/Nと呼び微弱な信号を検出できる限界値を決定する。
S/Nの定義は電力のS/Nと電圧及び電流のS/Nに大別される。
電力のS/Nの定義:
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電圧及び電流のS/Nの定義:
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dBで計算するときは電力では10log、電圧では20logと対数の係数が異なることに注意が必要である。
4・7・3 雑音指数、NF
抵抗やトランジスタに電流を流すと熱を発生して温度が高くなる。温度を持つ物体からは熱雑音を発生する。
温度TK、抵抗値RΩの抵抗から発生する雑音を周波数帯域幅BHz自乗平均電圧はナイキストが理論的に計算して
(eN)2=4kTBR (ボルト)2 (4・17)
として求めこれをナイキスト電圧ともいう。この(4・17)式の平方根をとると
抵抗Rから発生する実効雑音電圧が求められる。ここでkはボルツマン定数である。
増幅器や受信機は小さな入力を大きな出力に変換できる電子機器である。入力電力Siと出力電力S0との比を電力利得Gと呼び
又は 10log10G (dB) (4・18)
で表される。出力信号は入力のG倍となるが、出力雑音N0は入力雑音NiのG倍より大きくなる。これは電子機器内部から発生する雑音が出力に加わるからである。図4・19にある電子回路の入出力における信号と雑音の関係を示す。
図4・19 電子回路における信号と雑音
出力雑音N0は内部発生雑音Neが加わり
N0=NiG+Ne (4・19)
となり、出力に現れる雑音が増加する。内部発生雑音は雑音指数NFで評価される。
(4・20)
書き直して
(4・21)
内部発生雑音のためNFは1より大きくなる。(4・21)式から出力雑音N0は
N0=NiGNF (4・22)
内部発生雑音Neは(4・19)式と(4・22)式から
Ne=NiG(NF−1) (4・23)
となる。内部発生雑音がない回路を理想回路と呼び、(4・23)式から
NF=1 のとき Ne=0 (4・24)
となる。常温の受信機の電子デバイスはNFが約10なので(4・23)式から雑音は利得が9倍されて出力に現れることが分かる。微小電力を検出する宇宙通信や電波天文等ではデバイスの温度を下げてNFを1に近づける対策が採られている。
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