4・9 従来のレーダーのブラウン管でのPPI表示方式
在来のレーダーのPPI表示は、掃引線が自船の位置を中心にしてCRTの外周に向かって動いている。すなわち、レーダーパルスの送信とともに電子ビームはCRT面上の目船位置からCRT面の輝度が大きくなるように電子ビームの電子量を制御する。レーダーのPPIの画面が1回分は、例えば、空中線の回転が毎分20回(1回転3秒)でパルスの繰り返し数が毎秒1,000回であれば、PPIの映像面は3,000本の放射状の掃引線で構成される。画面に表示される距離範囲は掃引線の掃引速度によって決まることになる。空中線の一回転に3〜5秒を要するので、その間は映像が残っている必要がある。そのため、従来型のレーダーのPPI表示方式では、残光性の蛍光面があるCRTを用いて、その残光によって映像を見るようにしている。しかし、このブラウン管では、電子ビームによって直接発光させるときの映像の明るさは、残光に比べるとはるかに明るいので、輝度が低い残像を一緒に見ることができない。直接発光させるときの発光色は、残光色とは異なるので発光色を色フィルターによって押さえて残光だけが見えるようにしている。
この残像によるレーダーの映像はかなり暗いので、昼間はフードを掛けなければ見ることができない。一時期には高輝度の残光性を持つブラウン管も開発されてレーダー応用されたこともあったが、取扱いの問題と価格の点から普及するまでには至らなかった。
映像をメモリに保存しておき表示を早い周期で更新することは、特殊なブラウン管を使用することなく明るく表示できる利点がある。
ここまでの解説では基本を理解する目的から、従来方式のレーダーの方式を述べきたが、一般に市販されているテレビやパソコンのモニタはレーダーでも有効に利用できる。昼間でもフードをかけなくてよい明るいレーダー表示、カラー表示及び各種のメモリ機能の応用等の新機能の開発が進み、次項に述べるテレビのブラウン管を利用した表示器の方式に変遷した。
コンピュータのモニタや家庭用のテレビと同様のブラウン管を表示器に使用するレーダーでは、反射信号をデジタル化して、その一つ一つを超LSI(LSIは大規模集積回路のこと)による記憶回路(メモリ)に記憶されている。10Mbps以上の速度で変換された信号は、高速で作動できる1次元配列上の1次メモリに記憶され、さらに画面全体を記憶する2次元配列の大容量2次メモリの該当アドレスのところに転送される。記憶させるメモリの位置(2次元配列のアドレス)はアンテナの方位角度と受信されるまでの遅れ時間から瞬時に求められ、反射信号のデータはその位置に記憶される。次にそのデータを高速で順次読み出して、テレビに使用されているものと同じCRTに表示させる処理を行なっている。このような処理を走査変換という。ラスタスキャン型レーダーの表示はテレビの映像と同じように、横方向の掃引線を上下に動かす形で毎秒60回程度も書き直しているので全面が同じ明るさで、昼間でもフードなしで見る.ことができる。このようなラスタスキャン型レーダーの映像は白黒テレビ用のCRTでも表示できるが、カラーテレビのCRTを使用すればカラー表示にもでき、物標からの反射エコーの強度によって表示色を変えたり、画面上のデータの表示色を変えることもできる。
ラスタスキャン型レーダーは、一般に図4・51のブロック図のように構成されているが、空中線、送信機、受信機、ビデオ増幅器までの部分は在来のレーダーと同じである。ビデオは増幅器の出力はAD変換器に入れられる。AD(Analogue Digital)とはアナログ・デジタルの略で、アナログ信号をデジタル信号化する変換回路である。例えば、ある設定されたレベル以上の入力信号であれば1、それ以下の入力信号であれば0というようにする。この場合は1ビットの分解能となる。このデジタル化をするときに入力信号の強度を4段階に分け、強い方から11、10、01、00とするのが2ビットのデジタル化、さらに3ビットにすれば、111、110、101、100、011、001、000と8段階の強度の表現ができる。
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図4・51 ラスタスキャン型レーダーのブロック図
アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器の型式には積分方式と比較方式があるが、一般的な比較方式のA/D変換器の型式の表4・1に掲げる。
表4・1 比較方式のA/D変換器の形式
形式 |
特徴 |
帰還比較方式 |
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変換精度が高い、低価格、低・中速用 |
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逐次比較方式 |
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追従比較方式 |
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無帰還比較方式 |
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変換速度は非常に高速、高価格、 |
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縦続比較方式 |
10MPS程度 |
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並列比較方式 |
100MPS程度 |
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直並列比較方式 |
200MPS程度 |
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(MPS:Mega-sample Persecond) |
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