4・7・3 サーボ同期方式
サーボ機構は自動制御の一種で、角度、位置、姿勢、などの機械的位置を自動制御するものをいう。レーダーで使用されるサボ機構は、空中線と表示器の方向のずれを検出した信号を電力増幅し、その出力によってモーターを回転させて偏向コイルを回している。図4・47にサーボ機構を示す。
図4・47 サーボ機構の基本構成図
いま、入力軸がθ度回転すると、誤差検出器は入力角と出力角のずれに比例した誤差信号を検出し、サーボ増幅器ではこれを増幅して、その出力によってサーボモーターを回転させる。これにより出力軸が回転し、入力角と出力角の差が零になるとサーボ増幅器への入力信号がなくなって、サーボモーターは停止する。したがって、入力軸を回路させれば入力軸の角度に応じて出力軸も回路し、つまり出力軸の角度を制御することになる。角度の差を電気信号に変換するためにはシンクロやレゾルバが用いられるが、サーボ機構では、特に制御発信器とコントロールトランスを用いている。
一例を図4・48に示す。
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図4・48 サーボ機構
コントロールトランスの回転子を回して空中線を任意の方向にむけると、空中線側にある制御発信器の回転子には交流電源が接続されているので、両者の角度θ1とθ0の差に比例した電圧Eは
E=E0 cos(θ0 − θ1)
となる。この電圧はコントロールトランスの回転子に誘起され、これが誤差電圧としてサーボ増幅器に加えられる。この出力によりサーボモーターを回転させ、空中線を駆動する。この場合、空中線側の角度が進んでいるときと遅れているときとでは誤差信号の位相は逆となり、それに従ってサーボモーターも逆回転する。
デジタル化されたレーダーでは、アンテナの回転角度の伝達に光学式ロータリー・エンコーダが一般に使用されている。
ロータリー・エンコーダには、アブソリュート型とインクリメンタル型とがあり、前者は電源投入時にも直ぐ角度の情報が得られるが、極めて高価格である。後者は0度の方位信号が入るまでは角度の情報は得られないが安価である。レーダー・アンテナは旋回させながら使用するので、すぐに0度の基準は、方位信号が入るので後者のインクリメンタル型ロータリー・エンコーダが使用されている。船舶用レーダーでは一般に、360度で2,048あるいは、4,096個のパルス信号が出力されるものがよく使われている。ロータリー・エンコーダの概略を図4・49に示す。このロータリー・エンコーダは内部にスリットの開けられた回転板があり、このスリットを対面の発光ダイオードとフォトダイオードで検出している。このスリットにはA相、B相とZ相の3種があり、A相とB相とではパルスの出力には90度の位相差がつけられ逆回転のカウントも可能になっている。レーダーはA相かB相のどちらか一方を使用している。Z相は船首方位信号として使用できるが、1回転当たりの回転パルス数の少ないロータリー・エンコーダを使用している機種では、船首方位信号は従来のように磁石とリードスイッチの組合せで検出して、ロータリー・エンコーダの回転パルス信号と組み合わせているものもある。
レーダー・アンテナの回転角度のデジタル情報で最近のテレビ型表示器のレーダーでは、表示用のビデオメモリの該当位置に反射信号の強度情報を記憶させるようになっている。詳細は4・10に述べている。
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図4・49 ロータリー・エンコーダの構造の概略
レードームの中でアンテナが回転する方式の小型レーダーでは、レーダー・アンテナの方位角度の検出機構は、船首方位信号センサのみとしている機種もある。このような機種ではアンテナをステップモータで回転させているので角度伝達機構を必要としない。
自動電圧調整器(AVR、Automatic Voltage Regulator)は、船内電源が著しく変動しても常に一定の電圧を保ってレーダーを安定に働かせる。また、船内電源が直流の場合には、レーダーに必要なたくさんの種類の電圧を作りだすため、いったん発振回路で発振させ、それを整流して必要な各部の電圧を作る、いわゆるDC−DCコンバータを備えたAVRが用いられる。その構成を図4・50に示す。
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図4・50 AVRの構成図
(1)フィルタはレーダー装置内で発生する種々の雑音が外部に漏れないようにするためのものである。
(2)定電圧回路は船内電源の電圧変動に対しては一定の電圧を保つためのもので、いろいろな回路があるが、一般にはスイッチング・レギュレータが多く用いられている。
(3)スイッチング・レギュレータは広範囲の電圧変動に対してもよく動作し、能率も比較的良い。
(4)発振回路は自励発振で、電源同期型のレーダーでは、この周波数をパルス繰り返し周波数に用いている。
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