2・7・2 偽像
(1)サイドローブによる偽像
反射の強い物標が近距離にある場合、自船のレーダーのサイドローブで探知してしまうことがある。この場合は、その物標と距離は同じでも、方位はメインビームの方向に映像が現れるので約90°違った位置に現れ、図2・10のように全く物標のない場所に偽像として現れる。
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図2・10 サイドローブによる偽像
(2)多重反射偽像
自船の正横方向に他船が近づいた場合や、他船からの反射電波が自船の横腹に当たって再び他船に行き、また反射して帰ってくると、電波が自船と他船との間を往復することになる。すると、図2・11のように他船の映像の背後の方向に、距離は他船との距離の2倍、3倍等の場所に偽像が現れる。
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図2・11 多重反射による偽像
(3)自船の構造物が鏡となる場合
自船の煙突やマストがレーダーの空中線に近いときには、レーダーから出た電波が一度煙突などに当たって他船に行き、その他船で反射した電波が再びその煙突などに当たってから受信される場合がある。このような場合は、図2・12のようにレーダーの空中線からみて、煙突等の鏡となった構造物の方向で、距離は自船から他船までの距離と殆んど同じ場所に偽像が現れる。
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図2・12 自船の構造物が鏡となる場合の偽像
(4)自船以外の構造物が鏡となる場合
陸上の構造物や、海上に架けられた橋などが鏡となって、付近にある物標の偽像を鏡となった構造物の後方に現す場合がある。陸上の構造物が鏡となる場合には、偽像はその背後の陸地の映像の中に生じるから問題とはならないが、図2・13のように海上に架けられた橋が鏡となる場合には、方向はその橋の反射点の方向で、背後の海域に、距離は構造物と実像との距離とを加えた距離に偽像が現れて、あたかもそこに物標があるように映り、航行上の障害として現れることがある。
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図2・13 自船以外の構造物が鏡になる場合の偽像
(5)第二、第三の掃引偽像
通常レーダーの電波は直進するので、レーダー水平線内の物標しか探知しない。しかし、時として地表に沿って相当遠くの物標にまで到達して、その反射像を現すことがある。このとき、例えば100海里や200海里もの遠方の物標から反射して帰ってきた場合には、その反射波はすでに次の発信パルスが出てから、あるいは次の次の発信パルスが出てから帰ってくることになり、これを第二掃引偽像あるいは第三掃引偽像という。
自船のパルス繰り返し数が1,000ppsであるとすると、パルスが発信される間隔は1msであって、これは約81海里を電波が往復する距離となる。そこで100海里の物標から反射してくれば、100−81=19で約19海里のところにその物標があるように偽像が現れ、もし200海里の物標から反射してくれば、200−(2×81)=38で約38海里のところで、方向はその物標の方向にそれがあるように偽像が現れることになる。
(6)他のレーダーによる干渉波の偽像
自船にある他のレーダーの発信電波や、他船のレーダーの発信電波の周波数がほとんど同じである場合には、これを受信することになる。この場合の偽像は、その方向はその他船の方向で、パルス繰り返し数が近ければ、渦巻き状の点線となり、パルス繰り返し数が違うと画面上は点々と不規則に現れる雑音となる。しかし、いずれにしても、これらの点は一本のスイープの上の一点として光り、エネルギーの蓄積がないので淡雪のように消えて残像を残さず、それ程重大な障害とはならない。
(問1)レーダーの基本的な性能を五種類列挙し、それぞれについて簡単に説明せよ。
(問2)レーダーの偽像を五つ列挙せよ。
(問3)レーダーにおいて誤りやすい映像を五つ列挙せよ。
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