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 付録1(2・4)式の証明 
 附図1により、R12=(Hs−He)2+R2、R22=(Hs+He)2+R2が得られる。 
ここで、R>>(Hs+He)>(Hs−He)であるから、 
R1≒R+{(Hs−He)2/(2・R)}及び 
R2≒R+{(Hs+He)2/(2・R)}と置くことができるので、 
経路差 R2−R1は次のようになる。 
  
附図1 経路差(R2−R1)の説明図 
  
R2−R1≒{(Hs+He)2−(Hs−He)2}/(2・R)}≒2・Hs・He/R 
従って、位相差βは次の式で与えられる。 
β=(R2−R1)・2・π/λ≒(4・π・Hs・He)/(λ・R) 
ここで、Er=ρ・Eo・e−jα 
ただし、α=φ+βであり、ρは海面での反射係数、φは反射点での位相移動、βは経路の差による位相差である。 
これにより、Et=Eo+Er=Eo+ρ・Eo・e−jαが与えられる。 
ここで、Et=F・Eoと表すとすれば、 
F=Et/Eo=|1+ρ・e−jα|=1+ρ2+2・ρ・cosα 
であり、海面において完全反射するとすれば、ρ≒1であって 
F=2+2・cosαとなる。 
また、φ=180°=πであるとすれば、F=2+2・cos(π+β)となり、 
三角関数の公式からF=2・sin(β/2)を得る。 
これに上のβの値を入れると、 
F=2・sin{2・π・Hs・He/(λ・R)}となる。 
これは電圧の比であるから、電力の比はこの2乗であって、 
F2=4・sin2{(2・π・Hs・He)/(λ・R)}を得る。 
これが(2・4)式に入っているのである。 
  
 レーダーは電波の眼といわれているように物標の検知に電波を使っているから、電波を反射する物標があれば海面の波でも雨でもすべてレーダーの画面に現れて、陸地や他船という航海上必要な映像を乱したり隠したりする。また、反射の強い部分だけが現れて、実態と異なる形を見せて惑わすことも多い。次にこれらの映像について、実際にそこに物があって、それが惑わすもとになるような場合を誤りやすい映像として2・7・1に説明し、そこにはなにも物標がないにもかかわらず、映像が現れる場合を偽像として2・7・2に説明することとする。 
  
(1)海面反射 
 海面が波立っているときは海面からの反射があり、その中にいる小舟の反射を隠してしまう。また、海面反射と漁船の群れとの区別もつかなくなる。 
(2)雨雪反射 
 雨の降っている区域は、雨が弱いときはボーッと雲のように見え、雨が強くなると、はっきりとした島のような映像ができる。しかし、これらの雨の映像は時間的に変化するので、よく見ているとその場所が移ってくるし、形も変ってくるので大体判別することができる。ただ、この雨域を通り抜けた電波は減衰して弱くなり、普通だったら映像として現れる船や浮標等の映像が現れなくなることもあるので注意が必要である。 
 雪の場合は一般に雨よりもその影響が弱いが、自船の周囲に雪が降っている場合は、雨とは少し違った反射を現し、他船の映像を隠したり、電波を弱める影響がある。 
(3)潮目 
 潮目は波立ちの状態が違っていたり、浮遊物が集っていたりして、一寸見ると海岸線に似た紛らわしい映像を現すことがある。 
(4)砂じん 
 ペルシャ湾を航行する船からの報告によれば、砂じんも陸地や島と間違うような映像となることがあるということである。 
(5)送電線 
 海峡を横断して張られている送電線は、その海峡を通航する船舶にとって非常に都合の悪い映像を表すものである。図2・9のように送電線は船からの垂線の足にあたる点だけが反射が強く、そこだけが輝点となって現れる。したがって、船がその送電線に近づくにつれて、岸から出てくる小舟がちょうど船にぶつかるように水路の真中を横切って近づいてくるように見えるからである。送電線が船の航路に対して斜めになっているときには、この現象に注意する必要がある。 
  
 
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図2・9 送電線の映像 
  
(6)背面区域 
 レーダーの電波は、3cmとか5cmとか10cmというように波長の短い電波なので、光と同じように物標の背後に回りこむことはできない。そこで、自船のマストやデリックポストの背後に物標が隠れたときは探知できなくなり、その船の映像は消えることになる。また、島も自船から見える部分だけとなって、その形は海図とは違って見えるから注意しなければならない。 
(7)位置の変化が速い物標 
 位置の変化の速い物標は、スイープが一回転するたびに、現れる物標の映像の位置が離れて、飛び飛びの点列となる。例えば、航空機が水面近くを飛行しているときや、飛行艇はこのような映像を現す。 
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