(iv)始動補償器始動(コンドルファ始動)
この方法は図2.21に示すように単巻変圧器に中間タップ(一般には全電圧の50〔%〕、65〔%〕、80〔%〕の3点を設けて電動機電圧を下げることにより始動電流を抑えて始動する方法である。
始動の順序はコンタクターB及びCが断の状態でコンタクターAを接すると次いでコンタクターBが接となり電動機には全電圧の中間タップ値に等しい電圧がかかり始動を始める。電動機が全速度に達するとコンタクターBが断となり電動機はリアクトル始動の場合同様に電動機回路へ直列にリアクトルが挿入された状態となり、その後コンタクターCが接となり電動機は全電圧運転となり始動は完了する。
コンドルファ始動方式の場合は始動電流及び始動トルクとも全電圧始動の場合の値にタップ値の2乗を乗じた値となる。従って例えばタップ値を65〔%〕とした場合には始動電流、始動トルクとも全電圧始動時の約42〔%〕となる。
従って、リアクトルの始動方式に比較して同じトルクの低下における始動電流の抑制特性は良好であると言うことが出来る。
コンドルファ始動の場合始動電流始動トルクとも全電圧始動の場合の値にタップ値の2乗を乗じた値となる理由は次のとおりである。
図2.21 コンドルファ始動回路モデル図
コンドルファ始動は前述の通り単巻線変圧器の中間タップを通して電動機にかかる電圧を抑えて始動する方式であるから簡単のために始動時の等価回路を単相で表すと図2.22のようになる。(ただしχはタップ値〔%〕を示す。)
図2.22において単巻変圧器の1次側と2次側の電圧及び電流の関係は変圧器の原理から次のようになる。
V・I1=(χ/100)V・I2・・・(式26)
従って、
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・・・(式27) |
一方全電圧の場合の始動電流をI0とすると単巻変圧器の2次側の電圧は全電圧のχ〔%〕となっているのであるからI2もI0のχ〔%〕とならなければならない。
従って、
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・・・(式28) |
(式28)を(式27)に代入すると
I1=(χ/100)2I0・・・(式29)
従って、始動電流は全電圧の場合のχ2〔%〕を乗じた値となることが解った。
図2.22 コンドルファ始動時の単相等価回路
また(式28)で示される様に電動機の巻線電流は全電圧の場合のχ〔%〕となり、電動機のトルクは巻線電流の2乗に比例することから始動トルクも全電圧の場合の値にχ2〔%〕を乗じた値となることが解る。
スターデルタ始動と異り、コンドルファ始動はリアクトル始動と同じく減電圧から全電圧に切替える時にも電動機の電源電圧が途切れることがないのでスターデルタ始動のようにスターからデルタに切替える際発生する突入電流が生じないと言う利点がある。
以上のようにコンドルファ始動方式は始動電流の抑制特性が良好なこと及び全電圧切替時に突入電流が生じないという長所を持っている。
(b)巻線形誘導電動機
巻線形誘導電動機の始動には、二次側に抵抗器を接続し、タイマーあるいは電流リレーを使って順次抵抗を短絡する方法をとるが、この方法は始動トルクを大きくするとともに始動電流を制限したい場合に効果がある。
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