日本財団 図書館


(i)主母線近くで短絡した場合
 この場合の発電機と電動機の固有インピーダンス以外には直列インピーダンスはないものとして計算することとしており、従って発電機と電動機に対して別々に計算した値の和として求めてよいことになっている。
 また、短絡電流供給源としての発電機は予備機を含めて、並行運転が可能な総の発電機を考慮しなければならない。
イ)発電機の給電線(図2.15のA点)で短絡した場合
 遮断器(a)で遮断すべき短絡電流はNo.1、No.2発電機と仮想電動から供給される短絡電流の和となる。
 従って、この短絡電流の交流分実効値は(式4)によって求めたNo.1及びNo.2それぞれの発電機の交流分実効値の短絡発生後1/2サイクルにおける値と仮想電動機の交流分実効値の和として求められる。
 また、最大値は(式6)によって求めたNo.1及びNo.2それぞれの発電機の最大値と仮想電動機の最大値の和として求められる。
ロ)負荷への給電線(図2.15のB点)で短絡した場合
 遮断器(b)で遮断すべき短絡電流はNo.1、No.2、No.3発電機と仮想電動機から供給される短絡電流の和となる。
 従って、この短絡電流の交流分実効値も最大値も上記(イ)で求めたA点における値へNo.3発電機から供給される交流分実効値及び最大値を加えた値となる。
(ii)主母線から離れた点で短絡した場合(図2.15のC点)
 この場合は主配電盤と短絡点間の電線のインピーダンスを計算に入れなければならない。発電機と配電盤間の電線のインピーダンスは上記(i)の場合と同様に計算には入れないこととする。
 また、短絡点Cへ流入する全短絡電流は、主配電盤と短絡点間の電線のインピーダンスを加味して修正されたインピーダンスと時定数をもった等価発電機により計算することが望ましいが、若干大きい誤差を許容する場合には各発電機及び仮想電動機から供給される個々の短絡電流を求めて、その和として求めてもよい。
 この方法は主配電盤と短絡点間の電線のインピーダンスは各発電機及び仮想電動機に並列に入っていることを考慮すれば、電気回路上正しくないが、計算結果が若干大きい方向に出て来ることと、発電機容量が異なるような場合には計算が非常に複雑になるので、この方法で計算してもよい。
(イ)発電機の短絡電流
 (式4)、(式5)及び(式6)のX″d、X′d、T″d、T′dcを次の様に置きかえて、交流分実効値及び直流分の値は(式4)、(式5)により、また最大値は(式6)により求める。
 
(拡大画面:16KB)
 ここで
 
rs 単位法で表した発電機固定子抵抗
re 〃電線の抵抗
Xe 〃電線のリアクタンス
 
(ロ)仮想電動機の短絡電流
 原則的には主母線から離れた点で短絡した場合には仮想電動機からの短絡電流は計算に入れる必要はない。
 これは、もともと仮想電動機からの短絡電流の値自身が小さいうえに電線による減衰が大きいからであるが、ことに直流分の時定数は電線の抵抗分の影響を大きく受けるため急激に減衰する。
 (式9)から次の式を立てることが出来る。
 
・・・(式16)
 ここで、
 
U0 線間電圧〔V〕
R: 仮想電動機の内部抵抗〔Ω〕
ωL: 〃の内部リアクタンス〔Ω〕
 
 また、fr=60〔Hz〕の場合
 
、TdcM=0.0117〔sec〕
 
∴L=0.0187R・・・(式17)
 
 これを(式16)に代入すると
 
 
 これをRについて解くと
 
 
 これを(式17)に代入すると
 
 
 従って、仮想電動機の抵抗とリアクタンスを単位法で表すと次の値となる。
 rm=0.0225
 Xm=0.1587
 従って、電線の抵抗とリアクタンスを加味した仮想電動機から供給される短絡電流の短絡発生後1/2サイクルにおける、交流分実効値と直流分は次の(式18)及び(式19)で表される。
 
(拡大画面:7KB)  
・・・(式18)
 
但し、
 
(拡大画面:8KB)  
・・・(式19)
 
但し、
 
(G)短絡電流計算に必要な諸定数
 以上でIEC方式に基づく短絡電流計算の説明は終るが実際の計算に当っては、計算に必要な諸定数X″d、X′d、Xd、T″d、T′d、Tdc、rsなどは発電機メーカーから入手し、また電線の抵抗(re)及びリアクタンス(Xe)は電線メーカーから(JIS船用電線を使用する場合にはJISのデータから)入手しなければならない。
(H)遮断器の遮断容量と投入容量
 遮断器は当然のこととして、その点における短絡電流を遮断する能力を持たなければならない。
 この能力を遮断器の遮断容量と言い、一般に船の場合はその遮断器で遮断出来る電流値で表す。
 一方、遮断器は、短絡している回路へ投入されても、熱的、電磁的損傷をうけることなく回路に流れる短絡電流を遮断する能力を持たなければならない。この能力を遮断器の投入容量と言いやはり電流値で表される。
 これまで短絡電流計算のところで述べたように短絡電流が最も大きな値を示すのは短絡発生後1/2サイクルのところであり、この時の最も大きな電流を遮断器は遮断しなければならないし、また、最も大きい値となる時投入されても無事電流を遮断しなければならない。
 従って遮断器は、短絡発生後1/2サイクル時の最も大きな短絡電流以上の遮断容量及び投入容量を持たなければならない。
 この遮断容量及び投入容量の表し方は近年では一般に遮断容量の場合は、遮断することが出来る短絡電流の交流分実効値で表し、投入容量の場合は投入することが出来る短絡電流の最大値で表す。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION