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はしがき
 
 船舶の電気艤装工事は航行の安全を守るため、適正な設計のもとに工事が行われ、その工事は信頼性、経済性に富んだものでなければならない。
 本書はこのような観点から、諸法規及び規則に適合した設計要領について記述してあるが、船舶電気装備技術基準編、船舶電気計算編等他の指導書と並行して学び、よい設計を行うよう努力して戴きたい。
 また、現場工事者も船主、検査機関と工事上の打合せを円滑に行うために電気艤装に対する計画、設計の方法及び諸経過を知っておく必要があるので本書によって学ぶよう心掛けて戴きたい。
 なお、本書は競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて作成したものである。
 
1. 設計業務
 
1.1 仕事の流れ
 新造船の契約から竣工までの設計業務は極めて重要であり、この業務は円滑に行われることが必要である。
 
1.1.1 造船所における電装設計
 設計業務の主な流れは次のとおりである。(図1.1参照)
(1)船主から営業部門へ船舶建造の引合照会がある。
(2)営業部門から設計部門へ船価見積の作業指示が出る。
(3)設計部門では客先の要望に従って基本事項を計画・設計し(基本計画作業)、主要目を決定し、要目一覧表を作成する。この要目一覧表には金額を算出するために必要な事項が記述される。なお、主要目は、船舶安全法関係省令及び船級協会などの規則に基づいた初期検討により決定される。
(4)見積部門は、この要目一覧表に従って見積価額を算出して営業部門に回す。
(5)営業部門はこれを基にして概略船価を決定し、船主に通知するとともに、主要目表を基に船主と打合せを行い、船主の希望条件を聞く。
(6)船主との打合せ事項を折込んで主要目表の訂正を行い、見積価額を船主に提出する。
(7)設計部門は、基本方針に従って建造仕様書(船体部、機関部及び電気部仕様書)を作成する。営業部門は、船価、支払条件、納期などを明記した契約書を作成し、建造仕様書とともに船主に提出する。商談の結果、契約の運びとなる。
 なお、建造仕様書が船主から提出され、これを検討の上業務を進める場合もある。
(8)契約が完了すれば、引続き実船業務として船主と建造仕様書について詳細な打合せが行われ、最終仕様が決定されると同時に船価が訂正され、最終船価が決まる。
(9)建造仕様書によって主要機器の注文仕様書を作成して資材部門に通知する。資材部門は、注文仕様書により製造メーカーを決定する。
(10)メーカーから機器の承認図が提出されてくるが、設計部門ではこれを十分に検討して、要すればコメントを付して承認返却するとともに、船主の承認を求める。この承認図の写しは、工場の検査部門へ送付され関連部門で利用される。
(11)建造仕様書、一般配置図、機関室全体装置図及び各種機器図を基に系統図及び機器配置図が作成される。
 これらは、工事用図面として出図されると同時に、船主及び運輸局・海運支局又は船級協会の承認を得るために、それぞれ送付される。
 
図1.1 造船所における設計業務の流れ(一例)
 
 
1.1.2 電装業者における電装設計
 造船所で電装設計を行わず、電装業者が担当する場合は、その担当する範囲によって異なることがあるが、ほぼ次のような流れとなる。(図1.2参照)
(1)主から造船所に引合照会があった場合、造船所から電装業者に見積依頼がある。
(2)造船所から提示された仕様書と一般配置図によって、電気部の見積書を作成する。一般に重電機、無線・航海機器などの主要機器は、船主支給又は造船所手配となることがあるので、見積区分を明記しておく必要がある。
(3)造船所で船価をまとめ船主に提出して受注の運びとなる。
(4)造船所と電装業者との間で、設計及び艤装工事施工の契約が行われる。
(5)船主と造船所各部門担当技術者とともに電装業者も加わり、仕様書を基に基本設計のための打合せを行う。
(6)造船所各部門担当技術者と電装業者との間で、関連工事の打合せを行う。
(7)造船所の担当電気技術者と連絡をとりながら基本設計を行い、次いで詳細設計を行う。ただしこれらが同時に行われることが多い。
(8)造船所及び船主に艤装設計の承認図を提出し、協議する。
(9)承認図に関する打合せ終了後、図面を訂正する。
(10)最終図面を運輸局、海運支局又は船級協会並びに船主に提出し、承認を求める。
(11)電装業者手配の機器について、注文仕様書を作成し、メーカーに機器を発注する。
(12)メーカーからの承認図を調査し、必要に応じて改正希望事項を付記してメーカーに返却する。
(13)機器の承認図(メーカーの作成図)を造船所及び船主に提出し、承認を受ける。
(14)艤装設計図及び機器図面の承認返却が終了すれば、艤装工事に着手する。
 
図1.2 電装業者の仕事の流れ(一例)







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