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5・2 電圧、電流、抵抗、オームの法則
 直流発電機を電源として直流回路を設定し、これについて電圧、電流、抵抗、及びオームの法則の関係をみよう。
 
図5・9
 
 図5・9の直流回路において、直流発電機の起電力E〔V〕が発生し、抵抗負荷R〔Ω〕にスイッチを閉じて、電流I〔A〕を流したとする。
 この場合の電流I〔A〕は、負荷に流す電流であるから負荷電流という。このように、負荷電流は当然発電機内部にも流れるため、起電力E〔V〕−Ir(発電機内部の損失電圧)=V〔V〕だけが発電機の端子電圧V〔V〕となって、負荷R〔Ω〕と対立し合う。即ち負荷Rに流れる電流により、IR〔V〕の電圧と対立し釣り合うことになる。
 したがって、このことは次のような関係になる。
V=IR 〔V〕・・・(5・1) 電圧を求める式
 この関係式を1・9・1項で述べたようにオームの法則という。
(5・1)式を変形すれば
 
 
 以上3式は交流の場合にも使用される。また、図5・9についていえば、起電力E〔V〕−Ir〔V〕の式でIr〔V〕は発電機起電力を減ずる役目をするのでIr〔V〕だけ電圧降下又は電圧がドロップしたという。また、このIr〔V〕の電圧を降下電圧又はドロップ電圧という。したがって、抵抗R〔Ω〕のある導体に電流I〔A〕の電流が流れれば、オームの法則にしたがって、下記の電圧降下がある。
V=RI 〔V〕・・・(5・4)
 このオームの法則については、1・9・1項において述べたので参照のこと。
注:電圧の量記号にはV・E・eなど使用されている。
〔例題〕 図5・10において直流発電機の端子電圧がV〔V〕、電流I〔A〕、導線の抵抗r〔Ω〕、また、電熱器の抵抗R〔Ω〕であるとき、導線の電圧降下及び電熱器の電圧降下をそれぞれ計算せよ。また、発電機端子電圧は何と何に対応しているか。
 
図5・10
 
〔解〕 導線の電圧降下 V1=Ir 〔V〕・・・(1)
電熱器の電圧降下 V2=IR 〔V〕・・・(2)
 また、発電機の端子電圧〔V〕は(1)式と(2)式の和に対応している。
故に、 V=V1+V2
=Ir+IR
=I(r+R) 〔V〕である。
 即ち、発電機の端子電圧は、導線抵抗と電熱器低抗の和に電流を流したときの電圧降下に対応していることになる。
 
5・3 電力
5・3・1 水の仕事と電気の仕事
 
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図5・11
 
 図5・11(a)と(b)とは、(a)は水の仕事、(b)は電気の仕事を図解したものである。
 いま、図5・11(a)について述べれば水圧があって、コックを開けば水が流れ、水車を回わし、水車は仕事をする。その仕事の量は、水圧の大きさと、水の多少によって決まる。電気の場合は、スイッチを閉じれば図5・11(b)のように電源の電圧V〔V〕の大小と流れる電流I〔A〕の大小によって電熱器上のやかんの湯が早く沸くか遅く沸くか、即ち仕事の大小が決まる。以上述べた事柄から電力を考えよう。
 
5・3・2 電力
 電気工学では電力とは1秒間にする電気的仕事量である。
 電力の単位にはワット〔単位記号W〕を用いる。この意味は1〔V〕の電圧で1〔A〕の電流を単位時間1〔秒間〕流したときの電力に等しい。これは次のように表される。
 電力の記号をPとすれば
P=V・I 〔W〕・・・(5・5)
 図5・11(b)においてオームの法則により I=V/Rとおけるから
(5・5)式は
 
 
 また、同様にV=IRであるから
(5・5)式から
 
 
となる。上記3式は電力の計算式である。
 電力の単位〔W〕は小さいので103〔W〕=〔kW〕(キロワット)が多く用いられる。
〔例題〕 (1)20〔Ω〕の抵抗に10〔A〕の電流が流れているときの電力は何〔kW〕か。
〔解〕 (5・7)式から P=102×20=2000〔W〕=2〔kW〕
〔例題〕 (2)ある抵抗に100〔V〕の直流電圧を加えたら、20〔A〕の電流が流れた。
 このときの電力は何〔kW〕か。
〔解〕 (5・5)式から P=100×20=2000〔W〕=2〔kW〕
 
5・4 ジュール熱、ジュールの法則
 図5・11(b)において、電熱器の抵抗R〔Ω〕のところに電流I〔A〕を流せば、そこに熱が発生することはよく知られている。導体間を移動する自由電子が周囲の原子に衝突して原子の振動がはげしくなるために発生する熱であると考えられる。これを電流の熱作用という。
 この発生する熱量は、その回路の電気抵抗R〔Ω〕と、流れる電流I〔A〕及び流れる時間t〔s〕に関係する。このような熱をジュール熱といい、ジュールの単位を用い単位記号〔J〕が使用される。
 よって、t秒〔s〕間に発生する熱量は次式で表される、
H=RI2t〔J〕・・・(5・8)
 この(5・8)式をジュールの法則という。
 この法則は1843年イギリスのジュールが発見したものである。
 なお、従来は熱量Hにはカロリー〔単位記号cal〕が単位として使用されていたが、国際単位系(略称SI単位)を基本にした新計量法により、平成11年10月1日からは、カロリーの代りにジュール〔単位記号J〕を使用することになった。従って、今後の熱量計算では、(5・8)式を熱の仕事当量J:4.186〔J/cal〕で除さないことになる。







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