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2・4 三相誘導電動機
 図2.36の円板をアラゴの円板といい、これは1820年フランスの天文台長アラゴが実験上から発見したものであるから、このように一般にいわれている。
 これが誘導電動機の原点である。図2.36の円板は銅又はアルミニウム製の円板で、これを軸で支え軽く回転できるようにする。その周辺を図のような蹄形磁石の空隙中においてこの磁石を矢の方向に急速に動かせば磁石と円板は離れていても円板は磁石と同じ方向に回転する。この理由は磁石の上をN極、下をS極とすればフレミングの右手の法則より(電気工学の基礎編2・4・4参照)によって円板中にうず電流が図2.36のように流れる。(電気工学の基礎編2・5参照)この電流と磁束とにフレミングの左手の法則を適用すれば(電気工学の基礎編2・3・5参照)円板に働くトルク(回転力)は矢の方向であって、蹄形磁石と同方向に動くことになる。更にこれを応用して図2.37のように円板の代わりに円筒導体を用い円周に沿って磁石NSを矢の方向に回転すれば、うず電流が円筒上に発生し前記と同様な現象となる。ところがこのうず電流のうち軸に平行な電流分のみがトルクに役立ち円周に沿った方向の電流分は役に立たないから結局図2.38のような形でよい。この形が回転子に応用され、現行のかご形誘導電動機の原形である。そして蹄形磁石を機械的に回転する代りに、固定子に三相巻線を設け、三相交流を流して、電気的に磁石が回転するのと同じ現象を起こさせる。
図2.36 磁界と運動と電流との関係
 
図2.37
 
図2.38 かご形回転子
 
 三相誘導電動機の固定子の鉄心には回転軸方向と並行に固定子巻線のコイルを埋込むように多数の溝(スロット)が空隙に沿って設けられており、この各々の溝にコイルの一辺が納められるが、分布巻きと称して各極毎に各相当り2〜数個の溝が割り当てられ、これらの各相のコイルが通常図2.39に示す如く直列に接続される。三相の励磁現象を分りやすくするため、分布巻きでなく、図2.40に示す如く各極間隔(電気角180°に相当)の間にRSTの各相のコイルが励磁力として等価な1回巻きのコイルに置き替って空隙に沿って配置されると想定する。このようなコイルに三相交流電圧を印加すると各相のコイル図2.41に示す如く、電圧と位相順序が全く同様な励磁電流が流れる。
 図2.41中の(1)(2)(3)の各時点についての空隙に沿ったコイルの励磁効果は図2.42のA図、B図、C図に示す如き短形波の合成から成る磁界波形を生じ、磁界の極性は順次正負の配列となる。この磁界の基本波は正弦波でその正弦波の磁界は相順にしたがった方向に時間の経過と共に空隙に沿って移動し、回転軸の周りを一定の速度(同期速度)で回転する。このようにして作られる磁界を三相(多相)巻線による回転磁界という。
図2.39 極間1相当り3溝(コイル)の場合のR相分布巻きコイル
 
図2.40 コイルピッチ(コイル幅)180°各相コイル1回巻きの仮想的三相コイル配置
 
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図2.41 各相コイルに流れる励磁電流の時間的変化
 
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図2.42 1極当り各相1コイルの三相励磁による空隙に沿った磁界の移動







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