8 電気機器の試運転と試験
電気機器殊に配電盤等結線の複雑なものにおいては、結線終了後、圧縮空気か電気掃除機で丁寧に塵挨を取る。
各部の締付けボルト、ナット類がゆるんでいないかどうか、外部導入線は十分行われているかどうか点検を行う。
注油具合はどうか、また、最近は殆んどグリースを使用しているからグリースの詰め込み具合を調査する。多く詰め込まれたものは過熱の原因となる。
絶縁抵抗を測定して、抵抗が低下した機器類は、乾燥の上適当に補修し絶縁を再確認すること。
絶縁不良のまま運転すれば焼損の原因となるので注意を要する。
始動運転は最初から電圧を高くしないで、最初は界磁抵抗を最大にし、徐々に抵抗を抜き、速度を徐々に上げて、定格電圧にまで上げる。そこで初めて気中遮断器を入れる。並行運転を行う場合はその方法に従って行い、完全に並行運転をみとどける。
また、停止の場合は上記の逆の操作を行う。即ち界磁抵抗を徐々に高くし、速度も徐々に低下させて後、気中遮断器を切る。
始動運転前に補機の状態を先ず調査し、始動が差支えなければ初めて始動器により運転する。なお、速度制御器を有する場合は、初めから高速にしないで、低速から始動する方がよい。停止の場合には始動器のスイッチを“開”にすればよいが、速度制御器を有するものは、速度を低速にした後に“開”にする。
これらは機器内部が複雑で、専門家による操作が望ましいが、操作の必要を生じた場合には、取扱い説明書を熟読し、丁寧に説明書記載どおりに操作することが重要である。
(1)陽極端子(+印又は赤エナメルが塗布してある。)に電源の陽極を、陰極端子(−印又は黒エナメルが塗布してある。)に陰極を結ぶ。
(2)蓄電池の電圧と電源電圧とを比べ、電源電圧が高すぎると、直列抵抗を入れる等して電源電圧を下げて充電する。
(3)普通の充電電流は容量10時間率で、定格容量の1/10〜1/20電流をもって、電解液比重が上昇し切るまで行う。
(4)充電が進むにつれ、電圧、液の比重及び温度が上り、極板から盛んにガスが生隼する。
(5)充電終了時は、電圧は蓄電池1個(セル)あたり2.4〜2.6V、硫酸液の比重は1.24(20℃)位となり、陽極板は暗褐色、陰極板は灰青色になる。
(6)蓄電池を初めて充電する時を初充電といい、この場合には普通充電電流で50〜80時間連続に行う。
(1)大電流で、長時間放電を行ってはいけない。
(2)電圧が次第に降下するが、1個(セル)あたり1.8Vになったら放電を止める。
(3)硫酸液の比重も下る。(1.20〜1.21位)
(4)陽極板は赤褐色になり陰極板は暗灰色になる。
(1)充電電流は最大充電電流を、また、放電電流は最大放電電流を超過させないこと。(放電電流は10時間率電流は定格容量の1/10を標準とする。)
(2)硫酸液の比重に注意すること。(比重1.24、20℃において。)
使用を休止している時でも1月に1回位充電すること。
電気艤装工事完了後、工事が仕様書どおり、全般にわたって、満足に施工されているかを調査する目的で、各装置につきそれぞれ関係者立会のもとで、予め定められた試験方案に基づいて行われる。このとき試験成績用紙を準備し、装置に計器類を接続して、試験記録を用紙に記入し、後日の試験判定に役立たせる。
試験結果不具合の場合は、改造、新規手配などの必要性も生じうるので、十分期間的に余裕をもって、早目に試験するように心掛ける。
一般的な試験項目は以下の通りである。
(1)発電機及び付属装置試験
(2)各補機用電動機の試験
(3)変圧器、蓄電池及び付属装置試験
(4)照明電灯、船灯、信号灯、扇風機等の試験
(5)電熱装置
(6)通信器・計測制御、航法装置等の試験
(7)電路、分電箱、区電箱等の試験
(8)蓄電池充放電盤試験
(9)無線設備の検査
この検査は、海上人命安全条約、船舶安全法及び電波法その他関連諸規則に規定された無線設備の適用、性能等について、それぞれの規定を満足していることを確認するために行われる。船舶安全法、電波法及び関連諸規則が改正され、平成4年2月1日から新しい無線通信システム(GMDSS)が導入されているが、これらの無線設備の検査については、船舶検査の方法、新無線通信システム(GMDSS航海用具社内装備・整備標準)((社)日本船舶電装協会)及び電波監理局の指示に従って行わなければならない。
係留中に試験を行うことができない種目は、海上運転中行われる。その内容は主機関用補機、操舵装置、ウインドラス、キャプスタン、航法装置、無線方位測定機の誤差修正曲線の作成等、これに類似するものである。
船内保安は艤装工事着手前に心得として、記憶実施すべきものであるが、編集の都合上末尾に加えた。
(1)明るい気持で作業すること。
(2)服装は身体に合ったものを着用し、不必要のものは身につけぬこと。
(3)機械及び工具類は作業前に必らず点検すること。
(4)薄い服を着て、汗ばんだ身体のときの作業は、感電の危険に注意すること。
(5)危険標識・危険信号はよく守り、未知の機械には絶対に手をふれぬこと。
(6)作業中は常に清掃、整頓に心掛け、通路には物を積んだり、置いたりしないこと。
(7)工事中、船内には足場、仮設備、工事材料等が非常に混雑して危険であるから、常にこれらに注意すること。
(8)危険なところは歩かず、定められた通路を歩くこと。
(9)火災、その他非常災害時にあっては、あわてることなく秩序正しく、避難すること。
(10)高所では安全帯着用を励行すること、又、物を落とさぬよう注意すること。
船内では、溶接工事が行われ、可燃材料が取扱われたり、また、置かれたりしているので、火災予防については特に次のとおり注意をしなければならない。
(1)船内各所の消火器、砂袋並びにその使用法を熟知しておくこと。
(2)電気火災の場合は消火器は乾性薬品系、炭酸ガス系、四塩化炭素系で消火に努める。決して泡沫型、ソーダ酸系及び海水等の液体を掛けてはならない。
(3)作業中は絶対に喫煙しないこと。
(4)引火性材料(例えば揮発油、油布等)、発火性の物、例えば気中遮断器、開閉器抵抗器等火花を発する恐れのあるもの及び工事中に電気溶接機等を取扱うときは、特に火気や火花に注意すること。
(5)終業時には跡片づけを良くし、特に火気の始末を厳重にしてから、退場すること。
(1)ぬれた手又はぬれた手袋で操作せぬこと。
(2)不用意に金属製工具、懐中電灯などで、生きた回路(例えば母線など。)を点検し、これに誤って、触れないようにすること。
(3)故障修理、部品取換えは電気機器の電源を“開”の位置で行うようにすること。
(4)遮断器やスイッチの開閉は、火花の発生することを想定して、付近に可燃物のないことを確めて行うこと。
(5)機器の回路を“閉”にするときは、これに関連する機器を調べ、問題ないことを確めた上で、閉じること。また、逆に“開”にする場合も同様である。
(6)回路の電気的保護装置は指定どおりなされているかどうか調べること。
(7)変流器の2次側は常時短絡しておき、開いてはいけない。
(8)計器用変成器は保安上2次の一端を接地しておくこと。
(9)コンデンサに触れるときは、必らずその端子間を短絡してから触れること。
(1)電気が生きたままの状態のとき、その機器の作業はしてはいけない。
(2)非常の際には、加害及び被害回路の電源を切るよう、常に心掛けること。
(3)可燃性ガス又は可燃性液体を積載している船での作業は、危険性のある場所であるか、どうかを、確めてから行うこと。
(4)作業後はその機器のカバーは必らず閉めておくこと。
(5)防水機器でないものは、作業後雨水及び油気が掛らないように、覆いをかぶすか、適当な処置を施すこと。
(6)防振ゴムを設けた電気機器の接地工事は忘れがちであるから、作業後これを確めること。
(7)電気溶接作業は、火花が散るものであるから、付近の可燃物を取除くか又は防護してから行うこと。
(8)仮置き状態でボルト、ナットの締め忘れがないようにすること。
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