4・3・2 二次電源装置
一次電源から船内の負荷に応じて電圧、周波数等を変えて二次的に電源を作って給電する装置を二次電源装置という。
(1)変圧器
(a)変圧器の原理
変圧器は電磁誘導作用を利用して、交流の電圧又は電流を任意の値に変換する静止誘導機器である。
図4・4 変圧器の原理
図4・4において一次側に交流電圧V1をかけると、電流I0が流れ、I0によって鉄心中に点線のような磁力線φができる。φは一次巻線(P)二次巻線(S)を通ってしかも時間的に+、−に変化しているので、P及びSに電圧が電磁誘導作用によって誘起する。これを計算すると今コイル1巻に誘起される電圧をeとすれば、Pに誘起される電圧 E1=n1e(n1はPコイルの巻数)となり、Sに誘起される電圧E2=n2eとなるE1はV1と反対方向であるから、I0=V1/Z(ZはP巻線のインピーダンス抵抗)でなくI0=(V1−E1)/Zとなるのである。しかしI0は非常に小さいからV1≒E1とみて差し支えない。よって
V1≒E1=n1e、V2≒E2=n2e
このαを巻数比又は変圧比(電圧を考える場合)という。また、この変圧器に負荷をかけて負荷電流を流せばそのときの一次電流をI1、二次電流をI2とし、変圧器内の損失は極めて小さいから無視すれば
入力≒出力 V1I1≒V2I2 となる。
すなわち一次と二次の電圧比は巻数比に比例するが、電流比は反比例する。
(b)変圧器の構成
変圧器の冷却方式は船舶用としては乾式の自冷式が通常である。一般に(a)で述べた単相変圧器3台を図4・7のように△−△に結線し三相にして使用する。
この場合の電圧比及び電流比は単相変圧器の場合と同様である。
三相の場合の出力P△=3×(Vp・Ip)〔W〕=3×(単相変圧器出力)〔W〕
ここでVp、Ipは変圧器の相の電圧、相の電流をそれぞれ示す。
また、三相の内1相即ち1台の単相変圧器が故障すれば、それを線間から取外しいわゆるV結線として三相に使用できる。(図4・8を参照のこと。)
図4・7 △−△結線
図4・8 V結線
このように使用する場合は出力が上記のように減ずることに注意を要する。
また、相数変換方式として次の方法がある。
単相変圧器2台を下図4・9のように結線して三相式を二相式に変換する方法で、これをスコット結線法と称する。
図4・9 スコット結線
Tmを主座変圧器(main transformer)TtをT座変圧器(Teaser transformer)という。小型船殊に漁船等の電源に多く使用される。
以上は単相変圧器を組合せたものであるが、このほかに3台を一体とした三相変圧器及び1個の成層鉄心に一連の巻線を施して、一次、二次にこの巻線を共用する単巻変圧器(autotransformer)等がある。(詳細については省略する。)
(2)蓄電池
蓄電池は主として鉛蓄電池が使用されその用途を次に示す。
用途 |
電池の規格 |
(a)予備灯、信号、警報装置等 |
JISF |
(b)船舶電話(無線) |
JISCの可搬鉛蓄電池又はJISF |
(c)機関始動 |
JISD、JISF |
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注(1) |
蓄電池を非常用電源とする場合は給電可能時間が設備規程にきめられている。 |
(2) |
電圧はDC24Vが一般的である。 |
(3) |
JISFは船舶用鉛蓄電池、JISCは陸上用鉛蓄電池、JISDは自動車用鉛蓄電池をそれぞれ示す。 |
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