4・3 電気機器
電気機器の原理、性能などの詳細は“電気機器編”を参照のこと。
原動機を使用して電力を発生させる発電機とその電力を船内に給電する配電盤などの総称を一次電源装置という。
(1)発電機の分類
発電機には電気推進用発電機と船内電源用発電機(シップサービス用発電機)とがあるが、ここでは船内電源用の交流発電機についてのみ述べる。
発電機(1) |
用途による分類 |
励磁方法による分類 |
ターボ発電機 |
一次電源
主発電機
非常発電機
補助発電機(2) |
(a)自励交流発電機
(b)ブラシレス交流発電機 |
ガソリン発電機 |
ディーゼル発電機 |
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注(1) |
発電機を回すのに推進用主機関を利用するもの(軸発電機という。)と発電機専用の原動機によるものとある。 |
(2) |
補助発電機には停泊用発電機、集魚灯用発電機等がある。 |
(2)交流発電機
(a)起電力発生の原理
図4・2 交流発電機の原理
図4・2に示すように、N極からS極へ強い磁場ができており、その中間に導体ab、cdが前者は下から上へ、後者は上から下へ、X−X’を軸として反時計式に回転すればコイル中に電流が流れる。この場合電流の取出しは図4・2(a)も図4・2(b)もR1及びR2の完全な輪(集電環、スリップリング)からB1及びB2なるブラシを通じて負荷に電流を送る。しかし図4・2(a)と図4・2(b)とでは電流の値は同一でも、その方向は半回転毎に反対である。即ち、左図のような波形となるので、これを交流波形という。このような発電機を交流発電機という。また、強い磁場のN極、S極を作るために磁極鉄心にコイルを巻いてこれに直流を流す。これを励磁電流という。また、このコイルを界磁巻線という。この励磁電流は交流発電機の場合は交流であるため、これ専用の励磁機を必要とする。
以上述べた電気発生のコイル(これを電機子巻線という。)、磁極、界磁巻線、ブラシ、集電環、励磁機等は交流発電機には欠くことのできない電気的要素である。
(b)交流発電機の構造
(2)(a)で述べた交流発電機では回転体に電機子コイルがあって、固定子が界磁磁極であった。しかし多くの交流発電機はその逆である。
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図4・3
図4・3(a)のように固定子に電機子巻線があって、回転子は界磁巻線が施してある。そして励磁機から集電環を通じて界磁電流を磁極NSに送っている。この状態でこれを回転させれば固定子の電機子巻線に起電力が発生し、交流発電機となる。図4・3(b)のように固定子に1組の巻線を鉄心間に配置した場合には下図(a)のような単相交流が流れる。また、図4・3(c)のように固定子に120°づつへだてた3組の巻線を配置した場合には下図(b)のような三相交流が流れる。
前者を単相交流発電機、後者を三相交流発電機という。
また、界磁が上記のように回転しているので、回転界磁形交流発電機と称し図4・3(a)はN、S極の2極であるが、これより多い極数のものがある。交流機の場合には定格周波数f〔Hz〕、極数P、回転速度Ns〔min-1〕との間に次の関係がある。
例えば、f=60〔Hz〕、P=2とする三相交流発電機の駆動機の回転速度は Ns=60×60=3600〔min-1〕でなければならない。
また、f=50〔Hz〕、P=4とする三相交流発電機の駆動機の回転速度は上式から
Ns=1500〔min-1〕となる。
励磁機は直流発電機であるため整流子を有する。整流子の保守やその他の理由から、これを排する方式が1935年ドイツシーメンス社のH. Harz博士により確立し、近年になってようやく実用化した。それは励磁機のような回転体をやめ、自ら発生した交流電源を半導体整流器を使用して直流に変換しこれを励磁電流に使用する交流発電機である。これを自励交流発電機といい、船舶用には専らこの発電機が使用されている。
また、励磁機は従来どおり残しておくがその中の整流子とブラシは前に述べたとおり保守その他の理由から、これを排しその代わりに半導体整流器を使用した励磁機の電源を交流発電機の界磁電源とする方式が近年中型以上の交流発電機に使用されている。これをブラシレス交流発電機という。
(3)主軸駆動発電機
主軸駆動発電機(以下、軸発電機という)とは、専用の原動機を装備せず主機(推進用原動機)によって駆動される発電機である。軸発電機を実際に船に装備する場合には、設計上の問題、艤装上の問題など具体的な検討を必要とする項目が多く、またシステムの構成・配置・特性など種々異なったものが考えられるが、それらの中で比較的多く採用されているシステムの概要と特徴を以下に述べる。
(a)定周波装置を装備しない軸発電機
これは、図4・5に示すように主軸から増速ギヤチェーン等を介して発電機を駆動し、出力をそのまま船内電源として使用するシステムである。この方式は各種の軸発電機システムの中でも最も簡単で、設備費も安く、採用しやすいシステムである。
しかし、この方式は、主軸の回転数が変動すれば、それに応じて発電機の出力周波数も変動するという欠点がある。すなわち、固定ピッチプロペラ(FPP)を装備した船では、荒天航海や出入港、減速運転などの場合には、発電機の出力周波数が変動もしくは低下して、船内電源としての質を維持できなくなる。
したがって、この方式は、平穏な海域を常用出力で安定航海している場合に使用されるのが原則で、荒天航海、出入港、減速運転などの場合には、船内の他の発電機を使用しなければならない。
可変ピッチプロペラ(CPP)を装備した船の場合には、上述の欠点も改善されるが、平穏な海域の航行中で軸発電機の出力周波数の変動が許容値以内に収まっていても、他のディーゼル発電機等との安定した負荷分担は得難いので、連続平行運転はCPPの場合でも行わないのが普通である。
図4・5 定周波装置を装備しない軸発電機
(b)定周波装置を装備した軸発電機
(a)の方式の欠点を補うため、軸発電機に定周波装置を装備した方式がある。この定周波装置にも種々あるが、代表的なものとしては、M−Gセット(電動発電機セット)を用いたもの、サイリスタインバータを用いたもの、及び電磁カップリングなどの回転数変換装置を用いたもの、などがある。
この中で、サイリスタインバータを用いた軸発電機の例を以下に示す。図4・6に示されているものは、他励式インバータ方式の例で、軸発電機の交流出力を整流器により一度直流に変換し、その後この直流をサイリスタインバータによって再度交流に変換し、船内電源として供給するものである。同期調相機は、他励式インバータであるために必要となってくるもので、システムの出力電圧及び出力周波数はこの同期調相機の電圧及び回転数によって決まる。
図4・6 サイリスタインバータを用いた軸発電機
出力電圧の調整は同期調相機の励磁電流を制御することにより行い、出力周波数の調整は軸発電機の励磁電流を制御し、同期調相機を駆動するために軸発電機から整流器及びサイリスタインバータを通して同期調相機へ与えられる駆動電力を制御することにより行う。
同期調相機はこの外、船内負荷が必要とする無効電力を供給したり、船内電気系統に短絡事故が発生した場合に保護協調のために必要な持続短絡電流を供給するなどの役割りを持っている。
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