9. タンカーにおける毒性物質を含む貨物の運送における人的保護の要件(議題9関連)
(1)MSC/Circ.752の改正(BLG 8/9)
前回、BLG7において、ベンゼンの混合気を0.5%以上含む貨物を運ぶ船舶の人的保護に関する最低基準を定めるサーキュラー(MSC/Circ.752)を改定する事が決定されたのを受けて、デンマークは運用上の基準(Annex 1)および新船に対する構造要件に関する勧告(Annex 2)を提案した。
議長はMARPOL条約付属書Iの改正に伴い、すべての物質はMaterial Safety Data Sheet(MSDS)を添付する事になるため、ベンゼンについてもこのMSDSを活用する方法もあるが、ベンゼンのみについてサーキュラーを作るか否か小委員会の意向を質したのに対し、大勢はベンゼン対策の緊急性に鑑み独自のサーキュラーを作るべきとの意見であった。
次回MSC(78)で改定サーキュラーを採択するのは時間的に不可との指摘があったが、船員の安全にかかわる問題であるので多少柔軟に扱えるとの事務局の見解により改定サーキュラー案(Annex 1)をドラフティング・グループに付託した。しかし船舶構造に関する勧告については、構造要件を強制化する必要があるのであればSOLAS条約を改正すべきとの意見が多く、次回MSCで決裁を求める事に合意した。
プレナリーの決定に基づきドラフティング・グループはBLG 8/9 Annex 1に基づきMSCサーキュラー案(BLG8/WP.6 annex 1)を作成し、プレナリーにて審議の上MSC 77に提出することが合意された。
(2)貨物情報(MSDS)(BLG 8/9/1)
インタータンコその他によるMSDSの概要フォーマットやMSDSに記載すべきパラメータの基本ガイドライン案については審議の結果、概要フォーマットやガイドラインの作成は合意された。しかしMSDSの強制化に関するSOLAS条約第VII章の改正については当小委員会の付託事項であるか否か若干疑問があるのでドラフティング・グループでSOLAS条約改正案を策定するための正当性を文書化する事に合意した。
ドラフティング・グループはMSDS作成に関する勧告を含むMSC決議案(BLG 8/WP.6 annex 2)を作成し、プレナリーにて審議されMSC 77に提出される事となった。
SOLAS条約第7章改正案を検討する必要の正当性についての本小委員会による理由書案(BLG8/WP.6 annex 3)はプレナリーにて審議された。しかしMSDSの強制化はSTW小委員会のみならずWHOおよびILO等の国際機関も関係すると考えられるため、これらの機関のコメントや情報を得たうえでこの理由書をMSCに提出し、その承認を得た上で本小委員会がコーディネーターとして2005年を目標に作業を行うことに合意した。
(3)マネージメント・ベースド・ガイドライン(BLG 7/9/2)
前回会合で米より提案された乗組員の健康と安全に関する米国案はあくまでガイドラインとして位置づけられ、強制化するものではないと合意されているが、MSCサーキュラーとして回章する事に合意し、事務局に対し米国文書(BLG 7/9/2)に基づきMSCサーキュラー案を作成するよう指示した。
このサーキュラー案(BLG 8/WP.4)はプレナリーにて審議されたが、バハマはガイドライン案は全ての船種に適用するとなっており、また関係者の教育訓練などの項目も含み、これは明らかに本小委員会の付託事項を超えるものであると指摘し、パナマもまた同様の見解を述べた。このため事務局の助言に基づき、今後の審議のためMSCの承認を得てサーキュラー案(BLG8/WP.4)を関連小委員会に回章するとともに各国に対し提案とコメントを求めること、また職業に関わる疾病などはWHOやILOの管掌であるところこれらの機関のコメントを求める事に合意した。
10. オイルタグシステム(議題10関連)
本件はMEPC45にて作業計画に加えられ、BLG6 およびBLG7に英より文書が提出されたが、今次会合には提出文書はないところ、英は4年計画で実験プロジェクトを予定していたが、産業界の支持がないので当分の間プロジェクトを断念する旨報告した。これに基づき本件は今後の作業計画項目に残すが、関連文書等が提出された場合「その他の議題」で扱うこととし、この旨MEPCに報告する事とした。
11. IBC及びIGSコードの防火要件の改正(議題11関連)
プレナリーにて本件に関する文書の説明が行われた。現在附属書IIの改正作業が行われており、今後その改正に伴う大幅なIBCコードの見直しが必要となること及びIBCコードの運送要件割り当て基準が大幅に改正されたことから、次回会合にて詳細な検討を行うこととし、今回は検討を行わないこととなった。
12. シップリサイクリングに関する問題(議題12関連)
MEPC 48にて設置されたWGは総会決議案およびシップリサイクリングに関するガイドライン案を策定すべく作業中であるが、関連小委員会からの更なるインプットが必要であるとして本小委員会に対し、WGの作成した船内における潜在的に有害性をもつ物質のリスト(Annex 1およびAnnex 2)についてコメントするよう求めていたものである。
しかし本小委員会がこのようなリストにコメント出来る専門的知識を備えているか否かで相当議論があったが、MEPC 48のWGにて作成されたAnnex 1のリストは、このガイドラインの目的に十分に適合するもので、EU理事会規則の参照やバーゼル条約に基づくAnnex 2のリストを添付する必要はないとしてMEPCに削除を勧告することに合意した。
13. 海難解析(議題13関連)
議長は文書FSI 10/WP.1 Annex 4(WGの報告書)を参照して、タンカー関係の専門家の多くいる本小委員会はタンカー関連海難防止についてコメント出来るのではないかと発言を促したが、特段のコメントもなく本件は継続議題として次回会合でも審議される事となった。
14. IACS統一解釈の検討(議題14関連)
文書MSC 75/19/2及びMSC 76/18/2におけるIACS Interpretationの内、本小委員会に関連する以下の項目について審議され、承認された。結果、IBC Code、IGC Code関連の事項は、Interpretationとして回章する事となった。
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MSC75/9/2 Annex5 SC70 Area classification and selection of
electrical equipment |
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MSC76/18/2 Annex1 CC4 Venting system on chemical tankers |
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MSC76/18/2 Annex18 SC172 Monitoring the concentration of hydrocarbon
gases in cargo pump rooms on oil tankers |
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15. 作業計画及びBLG9の仮議題(議題15関連)
作業計画及び次回会合の仮議題がWP.10に基づき議長及び事務局から説明された。
蘭より本年、本年4月に行われるGESAMPに植物油の毒性の評価を依頼した。また、MARPOL附属書IIの見直しについて、長年に亘って作業をしてきたが、Target Yearの延長はせずに本年で終了すること。本議題に関して必要があれば、MEPCにて新しいTORを得て新たに始めるべきと発言があり大勢が支持した。その他は特段のコメントも無く承認された。
(1)ワーキンググループの設置
WG1: |
タンカーにおける毒性物質を含む貨物の運送における人的保護の要件 |
WG2: |
IBC、IGC、BCH及びGCコードの改正 |
WG3: |
有害液体物質の汚染分類の見直し |
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(2)次回開催日
2004年6月21日から25日に開催することになった。
(3)ESPH-WGの開催
2003年9月1日から5日に開催することになった。
16. 議長及び副議長の選出(議題16関連)
2004年の議長として、我が国及びパナマから、Z. Alam氏(シンガポール)が推薦され、大勢の支持を受けて、同氏が再選された。また副議長としてアルゼンチン及びライベリアから、Oftedal氏(ノルウェー)が推薦され、大勢の支持を受けて、同氏が再選された。
17. その他議題(議題17関連)
提出文書は無く審議はされなかった。
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