2.4 気温・降水量と海面水温変動の関連性
2.3.1節で大きな偏差を示す海域は夏の気温と何らかの関連性があると考えられる。夏季平均日最高気温のEOF第1モードと海面水温の時系列との相関を求めた結果を図7に示す。負(正)の相関は日本が冷夏であるとき海面水温が負偏差(正偏差)を示す傾向にあることを示す。相関係数はある程度データがないと求められないので季節平均した偏差を対象とした。また前節の条件抽出法では冷夏年に同じ傾向を示せば大きな偏差が現れたが、相関の場合は冷夏でない年の傾向も重要となる。
夏季平均日最高気温のEOF第1モード時係数と夏季(6〜8月)の海面水温偏差との相関係数の分布は次の通りである。すなわち日本近海から北緯40°線に沿って西経170°付近までの海域は有意に負の相関がある。正の相関が台湾近海から北緯30°西経160°付近まで細長く広がっている。また北大西洋では北緯40°線に沿って北米東岸と南ヨーロッパ西岸に負の相関がある。
季節毎の変化を見ると、北太平洋では前年の秋から冬にかけて日本から日付変更線までに有意な正の相関、アラスカ南沖から千島列島までの海域に有意な負の相関が見られる。春季は北緯10〜20°、東経140〜180°の海域に有意な負の相関、北緯50〜60°、東経140〜西経120°の海域に有意ではない負の相関があり、それ以外には弱い正の相関(有意ではない)がある。夏季は日本近海を含む北西太平洋に有意な負の相関、その南の北緯10〜30°に正の相関、さらに南の赤道〜20°に負の相関がある。秋季になっても有意性は減少するがこの構成は維持される。まとめると前年の秋季には日付変更線を挟んで東西にならんでいた対立傾向が次第に東西に広がって北緯20°および40°に中心をもつ南北に別れた分布となる。これは2.3.1節で得られた海面水温偏差と類似しており、偏差と相関とが示す傾向は一致している。
大西洋にも有意な相関が多く見られる。相関の分布や傾向は2.3.1節でえられた海面水温偏差と類似しており、北大西洋と日本の夏の気温は関連があることが示唆される。
図7 夏季平均日最高気温のEOF第1モード時係数と季節平均した海面水温偏差の相関係数の分布(A〜E)。移動平均により平滑化した値を等値線で示す。
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(A)前年秋季
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(B)冬季
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(C)春季
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(D)夏季
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(E)秋季
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