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第5章 まとめ
今年度の研究による成果を以下に示す。
・気象モデルANEMOSに深い対流、cold rainスキームを導入することによって、氷晶雲が形成できるようになり、過小評価の傾向のあった降水量が多少改善された。
・地表面過程の土壌湿潤度を強制復元法で予報することによって、土壌水分量が時間変化し、降雨後の地表面の湿りなどを表現できるようになった。
・晴霧の予報は、瀬戸内海を区域に分けて区域内の最小視程をとることによって備讃瀬戸地方の霧はある程度予報できることが分かった。
・雨霧は、計算スキームを変更することによって変更前は予報することのできなかった霧も予報することができた。
今年度は、沿岸・内湾での海霧予測の実用化研究(平成13年度事業)で課題となった降雨過程と地表面過程を改良して瀬戸内海の霧を予報することを目的に行った。
晴霧は瀬戸内海を区域に分けることによって備讃瀬戸地域はある程度予報できることが分かったが、来島海峡区域は予報することが難しかった。来島海峡区域は備讃瀬戸地域と比較して地形が複雑であり、霧の発生、継続には小スケールの循環などの現象が重要である。小スケールの循環を予報するためには、小さい格子間隔で予報をする必要がある。したがって、瀬戸内海の霧をさらに正確に予報するためには、さらに小さい格子間隔の計算が必要である。
雨霧は、計算スキームを変更することによって予報が改善される事例もあったが、雲が接地して発生する霧は再現できなかった。このような霧を予報するのは気象モデルだけでは非常に困難である。したがって、データ同化によって観測値を考慮する、あるいは気象モデルの結果を因子として、MOS法を適用することなどを考える必要がある。
また、本研究では典型的な発生事例のみを抽出して計算を行った。しかし、実用化にはそれだけでは不十分で、今後はさらに様々な状況の気象条件で計算する必要がある。
この研究を実施するに当り、霧の観測資料を本州四国連絡橋公団、神戸海洋気象台(淡路島由良)、高松地方気象台(男木島)、松山地方気象台(安居島)から、海水温の観測資料を岡山県水産試験場、広島県水産試験場、香川県水産試験場、山口県水産試験場、愛媛県水産試験場、国立環境研究所からご提供していただきました。本委員会委員の方々には、貴重なご意見やご指導を頂きました。ここに関係各位に謹んでお礼を申し上げます。
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