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海洋科学技術研修テキスト

 事業名 マリンサイエンス・スクール事業
 団体名 海洋研究開発機構 注目度注目度5


(3)エル・ニーニョ現象の解明
 エル・ニーニョ現象についてはP2で述べたとおりですが、そのメカニズムを解明するために、トライトンブイなどを設置して、西部熱帯太平洋における暖水の集積と散逸の過程およびそれに関連した大気・海洋の相互作用に関する種々の情報を入手し、コンピューターによる解析を行っています。
 
(拡大画面:89KB)
アトラスブイにより得られた海面水温と海上風の分布
 
(4)海洋物質循環
 海洋における物質循環、特に炭素及びそれに関連した物質の循環は、気候変動と密接な関係があることが分かっているため、今まで多くの海域で集中的かつ系統的な観測研究が行われてきました。特に北西部北太平洋は、年間通しての海水温度が低く、しかも冬季には、荒天時が多いため、この海域では、二酸化炭素をはじめとする物質が大気・海洋間で活発にガス交換*1を行っていると考えられています。しかしながら当海域における冬季のガス交換の測定は、荒天のために極めて困難であるため、ほとんどデータが得られていないのが現状です。また、同海域は、栄養塩の蓄積された深層水(詳細はP55参照のこと)の湧昇海域でもあることから、植物プランクトンによる基礎生産力が年間を通して高くなっています。特にこの海域では、数多い植物プランクトンの中でも大型で、しかも効率よく二酸化炭素を固定するケイ藻類が優占種となっているため、表層で固定された二酸化炭素は、他の多くの物質とともに、中・深層へ活発に効率よく運ばれていくと考えられています。さらに、この海域には、北太平洋全域に広がる低塩分の中層水が存在することが確認されており、その移動・混合過程は、北太平洋の物質循環に重要な役割を果たしているといわれていますが、これについての総合的かつ長期的な調査は、未だ行われていません。そこで、海洋科学技術技術センターでは、1997年より、海洋地球研究船「みらい」を使い、同海域での本格的な海洋物質循環に関する調査に着手しました。
 
*1 ここでは、文字通り大気と海水との間で行き来するガス、特に二酸化炭素の出入りについて指します。大気中にはおおむね360ppm(ppmは濃度のを表す記号で、百万分の1の意味)の二酸化炭素が存在しますが、海水中には280ppm〜400ppm程度存在するといわれます。大気から海水中への取り込みは、ほとんどが波によって行われますが、この時、大気中と海水中の濃度差が大きいほど、多く取り込まれます。
 
図1 時系列式セジメントトラップ
(McLane Mark 7G−21)
1:チタンフレーム
2:イエローコーン
3:コントローラー
4:ステッピングモーター
5:捕集カップ
6:バッフル
 
写真1 時系列式セジメントトラップ(McLane Mark 7G−21)
 
(5)過去の地球環境を探る
 地球の気候の変動は、約2万年、4万年、10万年に1度の周期で氷河期が訪れるという説*1があるように、長い周期で変化をくり返しています。それゆえ地球の過去の気候変動を知ることは、未来の地球の気候変動を予測する上で極めて重要な問題です。それを知る一つの方法が、海底の堆積物、例えば「有孔虫」の調査・分析をすることです。「有孔虫」は、海洋の表層や海底の表面に生息する原生動物で、これらの多くは炭酸カルシウムの殻を持っていますが、その殻を形成する時に、その時々の海洋のいろいろな貴重な情報を殻の中に閉じ込めています。従って、プランクトンの種の推移や殻の中に存在する種々の元素や化学物質の詳細な分析を行うことにより、過去の地球の気候変動に関する重要な手がかりを得ることができるのです。また、酸素同位体*2の比率を知ることにより、過去の地球上の氷の量を推測することができます。現在、海底堆積物のサンプリングは、ピストンコアラーとよばれる採泥機器などにより行われています。
 
*1 ミランコビッチというユーゴスラビアの地球物理学者か唱えた説で、地球の気候が、公転軌道面や地軸の傾きの変化などにより周期的に変化するという説です。
*2 宇宙に存在する酸素原子の原子量は、そのほとんどが16ですが、まれに18の原子量をもつものが存在します。このように化学的な性質は同じでも、原子を構成する中性子の数が少し違うために原子量が異なる原子を同位体といいます。
 
有孔虫の一種(G.bulloides)、×300
 
地球環境におけるサンゴ礁の役割
 生物の多様性の変化が、地球環境の将来にどのような影響を与えるかを知ることは地球環境を保全するためにも極めて重要です。とりわけ海洋は、地球表面の約7割を占めていることから、そこに存在する海洋生態系の仕組みを定性的、定量的かつ時系列的に理解していくことが不可欠です。中でも沿岸或は、海洋の表面積の1割にも満たないにも関わらず、海洋全体の生物生産量の3〜4割を担っているといわれていますが、その主要な部分は、サンゴ礁と藻場の海域です。
 そこで、海洋科学技術センターでは、当面、潜水による科学的調査(科学潜水)を通してサンゴ礁海域の調査を行っていますが、今後は、この測定手法を国際的に標準化し、長期にわたって生態系の変動を国際的に監視する研究ネットワークを構築する予定です。
 
●沿岸域
 
礁湖におけるサンゴの光合成活性計測
 
アメリカの海中研究室「アクエリアス」を使ったサンゴの呼吸計測







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更新日: 2021年9月11日

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