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I 生徒コース
1. 実施概要
 高校生及び高専生(以下生徒と称す)を対象とした今年度の「マリンサイエンス・スクール」は、夏休みと春休みの時期に各1回ずつ、共に2泊3日の日程で実施した。開催期日は、これまで、過去1回(平成7年度)を除いてすべて夏休み期間中に集中して実施してきたが、今年度は、夏期における他のスケジュールとの調整が困難であったため、第2回は、春休みに実施することとなった。それぞれの開催期日は、第1回は7月24日(水)〜26日(金)、第2回は3月26日(水)〜28日(金)までであった。なお、これまでは、重点地域を定めて参加者の募集を行ってきたが、それによる顕著な成果が得られなかったことから、今年度は、特に重点地域を設けず、近郊の学校や過去に参加実績のある学校を対象に募集を行った。実施経過および結果は以下に示すとおりである。
 
(1)募集対象及び期間
(1)第1回
募集地域:全国(関東地方中心)の生徒
募集期間:平成14年6月7日(金)〜7月5日(金)
実施期間:平成14年7月24日(水)〜7月26日(金)
 
(2)第2回
募集地域:全国(関東地方中心)の生徒
募集期間:平成15年1月27日(月)〜3月3日(月)
実施期間:平成15年3月26日(水)〜3月28日(金)
 
(2)事前準備
(1)募集要項の送付
 前記のとおり、今年度は夏休み(第1回)と春休み(第2回)の開催を企画したため、それぞれ開催期日の約2ケ月前より、各回24名ずつの定員とし、開催日の約2週間前を締切り期日として募集を行った。募集方法は、過去に本スクールに参加した生徒や教諭のほか、生徒を推薦してくれた教諭や近郊の学校への募集要項の送付、さらにインターネットを通じて行った。
(2)応募状況と参加者の決定
 締切り日までの応募者数は、第1回37名、第2回26名であったため、第1回については作文審査により28名(男14名、女14名)の受け入れを決定した。その際、参加者が特定な学校に片寄らないように配慮した。また、第2回は応募者が定員を2名超えただけであったので26名全員(男13名、女13名)を受け入れることとした。このように受け入れ人数を、企画当初よりも増加させることができたのは、宿泊施設が確保できたことが最大の理由であるが、加えて、実技・実習担当者との最終的な協議の結果、それらが支障なく実施できると判断されたからである(それぞれの参加者名簿は表1表2に示す)。
 
(3)実施状況
(1)スケジュール
 第1回のスケジュールを表3に、第2回のスケジュールを表4に示した。昨年度までは、遠方からの参加者に対する時間的配慮から、本スクールは、午後1時30分より開始していた。ところが、回を重ねる毎に講義内容が多様化し、提供すべき情報も多くなってきていることから、今年度は、開始時間を早め、さらに、研究者との調整により、終了時間も2〜3時間遅くした。それに伴い、開始時間までに集合することのできない遠方からの参加者については、前泊してもらうことにより対処した。また、カリキュラムの作成にあたっては、昨年の当該スクールの修了時に実施したアンケート調査の結果を踏まえ、生徒の関心が高かった実技・実習および高い評価を得た内容の講義を多く取り入れるように心掛けたが、第2回のカリキュラムは、講師の都合などにより、第1回よりも講義が多いカリキュラム編成となった。
 
(2)講義・実習の概要
イ. 深海を探る
(イ)深海の生物
有人潜水船や無人探査機でとらえた深海生物の貴重な映像の紹介、センターで飼育中の深海生物の見学と簡単な実習。
(ロ)ROV実習
 センター前の岸壁において、小型水中ロボット(ROV)を用いた操作実習と生物観察を実施。
(ハ)深海6500mの世界
 有人潜水船「しんかい6500」のパイロットによる体験談。
(ニ)深海への挑戦(第1回のみ実施)
 深海巡航探査機「うらしま」など、深海調査機器の開発者による研究開発の苦労話など。
(ホ)深海底の物探し(第2回のみ実施)
 電波がほとんど通らない深海での調査に活用される音響機器の開発に携わってきた技術者が、深海底からの物探し(沈船など)の方法を、学童疎開船「対馬丸」や打ち上げに失敗した「H2ロケット」エンジン部の探査・発見の様子などを例に解説。
(へ)深海調査機器(見学)
センター岸壁に接岸中の海洋調査船や、有人潜水調査船、無人探査機等の見学。
(ト)「しんかい2000」等見学(第2回目のみ実施)
 
ロ. 水中の世界
(イ)高圧実験、圧力の驚異
 水深10,000m以上の圧力を再現できる高圧実験水槽の見学や、身近な物を用いた簡単な実験を実施。
(ロ)深海潜水300mへの挑戦
 水深300mの海底に挑んだダイバー達の水中生活の様子についての体験談。
(ハ)潜水と人間
 本講義後に行われる圧力体験実験や体験潜水時の注意事項のほか、潜水によって生じる身体の変化について解説。
(ニ)圧力体験実験
 水深300mの実海域実験に先立って行われたシミュレーション、そこで使用された高圧タンクを用いて水深30m相当の圧力体験を実施。加圧された空気の密度の影響や、授業で扱われている「ボイルの法則」によって起こる現象を体験。(希望者のみ参加)
(ホ)体験潜水
 センターが所有する大型室内プール(水深1.5mと3.0m)において、スクーバ潜水を体験。(希望者のみ参加)
 
ハ. 海を調べる
(イ)地球環境と海洋
 地球温暖化など地球環境変動と海洋の関わりについての解説および、海洋観測データやサンプルを用いた実習等。
(ロ)地震の巣を探る
海底で発生する巨大地震のメカニズムや地震観測の方法等について解説。
 
ニ. 21世紀の地球
 建造中の地球深部探査船「ちきゅう」による国際プロジェクト「深海地球ドリリング計画(OD21計画)」について、期待される成果や夢について解説。







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