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人権・家庭内暴力めぐり活発な論議
変革への投資
女性への投資
女性議員会議
マレーシアで開く
 九月七日(土)、八日(日)の両日マレーシアのクアラルンプールで、AFPPDマレーシアが「女性議員会議―女性への投資、変革への投資」を開催した。会議にはインド、インドネシア、ヴィエトナム、カンボジア、タイ、ネパール、フィリピン、マレーシアの女性国会議員を始め、国際機関、NGOの代表者等を含め約六十名が参加し、人口と開発分野においてアジアの女性議員がどのようにリーダーシップを発揮すべきかについて検討した。
 
9月7日(土)
開会式
 ワシム・ザマンUNFPA南西アジア・カントリー・サポート・チーム(CST)代表がトラヤ・オベイドUNFPA事務局長の挨拶を代読、平等なパートナーとして男性と女性が互いを尊重し合える社会を創るために、女性への投資が不可欠である。各国のODAが減少している今、啓発活動(アドボカシー)、法的環境の整備など国会議員の役割は重要性を増していると述べた。谷津義男AFPPD議長に代わり挨拶をしたシフ・カレーAFPPD事務局長は、国会議員が人口と開発分野の問題の重要性を理解することで、各国が同分野への支援を拡大するよう積極的に働きかけていく事が大切であると強調した。また、ザイナル・アビディン・ジンAFPPDマレーシア議長は、HIV/AIDS、不法労働者の問題など、同国が直面している人口問題を解決するためには女性を取り巻く環境への配慮が欠かせないと述べた。
 
セッション1
リソースとアドボカシー
 ワシム・ザマンUNFPA/CST代表は、東南・南アジアの人口と開発分野におけるこれまでの成果と今後の課題を説明。義務教育、男女間の平等を奨励する様々な法律の制定、女性を対象とした個人向け融資(マイクロ・クレジット)の成功など多くの進展が見られるものの、東南・南アジアの国々では未だ女性の人権を擁護する制度は確立しておらず、ジェンダーの視点を取りいれた調査・統計の必要性、家庭内の暴力への対策、公衆衛生の向上・貧困削減など多くの課題が残っていると指摘した。参加者からは、女性に関する問題に男性も関心を持ち積極的に関与していくことが問題解決の円滑化につながる、そのためには女性議員が多くの女性市民の意見を代弁し、男女間のパートナーシップを構築していくべきとの意見があった。
 
セッション2
女性に対する暴力
 昨年タイのバンコクで開催した「女性に対する暴力の廃絶に関する会議(VAW)」でもリソース・パーソンを務めたトリニダット・オステリア・バンコクUNFPA/CTSアドバイザーは、日本や韓国など東アジアでは家庭内暴力(DV)への認識が深まり、徐々にではあるが法的整備、カウンセリング制度の確立など具体的な対応策が取られていると説明。南・東南アジアでは宗教・文化的要因からドメスティック・バイオレンスヘの対応が遅れているとの参加者の指摘に、普遍的対応策の提示は困難だが、各国が家庭内での暴力を社会問題として取り上げ、各国の状況に適した対応策について協議すべきであると回答した。
 
セッション3
貧困削減
 ラーマ・カシム氏(マレーシア農村開発省)が、一九七一年以降マレーシア政府が民族間・都市と農村の経済格差を軽減するために実施してきた貧困対策について解説、統計制度の確立・強化により貧困の状況を正確に把握して具体的な課題を明確化した上で、教育制度や公共事業を通じた対応策を計画・実行しなければならないと述べた。これを受けて各国の代表議員は、統計は民族間・都市農村の格差だけでなく男女間の格差も正確に示すべきである。貧困に苦しむ南・東南アジアは経済発展に成功したマレーシアから多くのものが学べると述べた。
 
セッション4
ICPD行動計画の実施のための協力体制
 体調不良のため本会議を欠席したラージ・カリムIPPF/ESEAOR地域局長に代わり、シフ・カレーAFPPD事務局長が人口と開発分野での国会議員、国際機関、NG0のパートナーシップの必要性について説明した。各国代表者は、国際機関やNGOが同分野での具体的なプログラムの成果を明確・積極的にアピールすべきである、議員、国際機関、NGOの情報交換を活発化しなければならないと述べた。
 
9月8日日(日)
グループディスカッション
 参加者は三つのグループに分かれ、ジェンダー暴力、貧困削減、リソース・啓発活動とICPD行動計画実施のための協力体制の各テーマに焦点を当てて協議を行い、教育、公衆衛生、リプロダクティブ・ヘルスなど女性のエンパワーメントに不可欠な分野での活動を活発化するため、各グループが討議の結果を発表した。今後の課題として、アジアの各国で女性議員の絶対数を増やし、女性を取り巻く様々な問題への認識を深め、対応策の策定に必要な情報交換を活発にするなどの意見があった。
 
閉会式
 ナプシア・オマールAFPPD事務総長代行が挨拶。アジアの国々でより多くの女性がリーダーシップを発揮できるよう女性議員が団結して働きかけて行かなければならない。今後各国からマレーシアヘの議員視察団の受入を検討しており、それらを通じてアジアの女性議員の協力体制を強化していきたいと述べた。最後にスレイマン・ビン・モハメッド保健副大臣が、女性議員の今後の活動に大きな期待を寄せていると閉会の挨拶を述べた。
望月純子







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