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人類の未来のために 地球の未来のために
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The Asian Population and Development Association
財団法人 アジア人口・開発協会
 
人口と開発
秋・OCTOBER/2002・No.80
 
扉・スケッチ 韓国の女(ひと)
杉本雄三・画〈元・関西電力病院長〉
 
 
巻頭言
ヨハネスブルク宣言とグローバリズム
財団法人家族計画国際協力財団・理事長
黒田 俊夫
 一九七二年の国連人間環境会議(ストックホルム)、一九九二年の地球サミット環境会議(リオデジャネイロ)、そして二〇〇二年の環境開発サミット(ヨハネスブルク)は、地球規模的課題の人間の貧困撲滅を狙った戦略会議である。三十年にわたる人類をあげての多くの決議と公約は人類の貧困の撲滅に成功したのであろうか。事実は逆である人類の増加率を上回る貧困人口の増加は驚異的である。
 グローバリズムやグローバリゼーションの功罪論といった記事がマスコミ紙上にあらわれない日はない。しかし、不思議にもグローバリゼーションの定義は論者一人、一人によって異なる。地球規模的な現象であって、地球規模的な対策を必要とする史上最大の人口危機に直面している事実認識はグローバリズムやグローバリゼーションには欠如している。
 二十一世紀のわずか半世紀に世界人口は六十億から九十三億へと三十億以上の増加が予想される。このことは、地球の潜在的人間扶養能力を確実に超えることがあらゆる分析によって証明されている。
 三十年をかけても貧富の格差を縮小させる努力は成功していない。先進国と途上国の格差は拡大するばかりである。経済的処方箋による単純な解決法のないことは明らかである。しかし、他方において出生力抑制、人口増加の緩和という地球規模的政策には時間を必要とする。
 もっとも基本的な貧困対策への関心と対策の国際的理解を阻害しているのは、世界政治の分裂、多極化である。二十世紀の冷戦時代はロシアの脱落によって、アメリカの国際政治力は急激に増大し、グローバリズム的人口問題の解決の不安定化要因にもなりかねない。来世紀における西欧文明の没落論の筆者(P・J・ブキャナン、二〇〇二)は国際移民の氾濫によってアメリカ文明の滅亡に警告を発している。グローバリズムを基礎とするヨハネスブルク宣言が起草されている時、他方ブッシュ大統領は「裸の一極支配(朝日新聞九月四日)」と呼ばれながら国益中心の哲学に専念しているのだろうか。







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