日本財団 図書館


国際女性・人口・開発議員会議
(IMPGPD)
女性・人口・開発に関する東京宣言
1995年9月1日
日本、東京
 
1. 世界57ヵ国から集まった私たち、国会議員は、第4回世界女性会議に先駆け、1995年8月31日と9月1日、東京で開催された国際女性、人口・開発議員会議に参加し、討議を行なった。
 
2. ジェンダー、人口・開発問題に適切な注目を集める上で、国会議員が果たさなければならない、特別のそして重要な役割を再確認するとともに、この分野における国会議員のネットワークを各国レベルで、地域レベルで、そして地域間レベルで発展させ、交流と協力を強化させることの重要性を再確認する。
 
3. 適切なそして関連する教育と性行動に関する健康と権利を含む、再生産に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス・ライツ)および性行動に関する健康と権利が公正にそして誰でも利用できるようになることが、青年期の人々を含むすべての個人の生活条件の改善、および女性のエンパワーメントおよび発展のための前提条件であるという私たちの信念を確認する。
 
4. 1985年ケニヤのナイロビで開かれた第3回世界女性会議以来、地域内、地域間や国内においてもまた、国による進歩の違いは存在するとしても、世界の女性をとりまく教育や健康の状況の向上がなされたことに注目する。
 
5. 多くの女性にとって受け入れがたい状況が、農村社会および都市社会の周辺に追いやられた社会において今なお存在している。発展途上国において、そして先進国においてもある部分の人口の貧困の女性化が拡大し、女性は、今なお自らの手でその状況に働きかけるしかない。
 
6. 戦争や紛争の中で最初に被害を受けるのは女性と子供であり、平和と正義なくして男女平等と開発はありえないことを強調し認識する。
 
7. 女性と少女の人権は、ウィーン人権宣言および行動計画で述べられた意味での普遍的人権および基本的自由の不可分な、統合された、外すことのできない一部であることを強調する。
 
8. 更に、この認識に基づいて、文化および宗教は女性と少女の人権を促進するような形で解釈され、行動に移されなければならない。
 
9. 第4回世界女性会議は、ジェンダーに関連する問題を含む、開発に関する問題の地球規模的な解決を探し求める、これまでに開かれた、そして今後開かれる環境・開発会議、世界人権会議、国際人口・開発会議および世界社会開発サミット、ハビタットIIの主要な一連の国連会議の不可欠な一部であることを認識する。
 
10. また、男性と同等の権利と地位を女性に保証することを目的とし、女性を人間開発の担い手とするための目標と戦略を見いだそうとしている第4回世界女性会議の持つ高い重要性を認識する。女性に男性と同等の権利と地位が確保されることなくして、女性は人間開発の担い手とはなりえないことを認識する。
 
11. 更に、女性のエンパワーメントおよび男性と平等の健康サービス、雇用、政治参加および経済資源の利用、特に金融制度、土地所有および相続権の利用につながる必要なかつ関連した教育を行なうことは、人口、持続可能な開発および持続的な経済成長の相互に関連した課題を解決に導く上で基礎となるものである。
 
12. 家庭の内外における女性労働に価値を与え、女性が同一労働・同一賃金を受けるべきであり、労働組合などの組織においても平等の支持を得られるようにすることを強調する。
 
13. 人口・開発プログラムを計画し、実行する上で、女性のNGO組織を含むNGO組織の役割と経験の重要性を強調する。
 
14. 女性の経済・社会的地位の低さが、彼女らの生活の質、家庭、健康、特に再生産に関する健康(リプロダクティブ・ヘルス)および権利(ライツ)および性行動に関する健康と権利に悪い影響を与えることに注目する。
 
15. この点から、女性の社会的・経済的地位の低さが、乳児・妊産婦の疾病および死亡率、女性のHIV/AIDS感染の世界的な急増、女性の性器切除、性選別、早婚およびある種の新しい生殖技術の商業化など健康に有害または非人間的な慣行および、性的虐待、搾取と暴力に曝される主な原因となっていることを強調する。
 
16. 青年期の人口の一部が、高い妊娠率を持っていることに注目し、経済環境の悪化が、若い女性にとって搾取と売春、女性と子供の売買、麻薬そして安全でないセックスに対する危険性を増し、現時点でさえ不十分な、リプロダクティブ・ヘルスに関する情報とサービスを利用できなくなる。
 
17. この点から、第4回世界女性会議に対し、これまでになされた国連会議および女性差別撤廃条約、ナイロビ将来戦略、世界人権会議宣言および行動計画、国際人口・開発会議行動計画、および世界社会開発サミット宣言および行動計画の文書で築き上げられた目標とコミットメントを確認し強化することを要請する。
 
18. ICPD行動計画の中で、貧困の根絶、女性の政治、経済、社会的エンパワーメント、女性に対するあらゆる形態の暴力の排除、青年期の人口に対する情報とサービスの提供を含む再生産にかかわる(リプロダクティブ)および性行動に関する健康と権利、公衆衛生における重大な課題としての安全でない中絶が健康に与える影響の問題を扱うこと、家族計画サービスを拡大し改善することで中絶を減らすことに対して、私たちが強くかかわっていくことを再確認する。
 
19. 社会に対する役割と貢献に対する態度と考えを男性と女性の双方が変える必要性があることを強調し、男女が共に手を携えて(パートナーシップのもとで)女性のエンパワーメントおよび、経済、文化、政治、および社会生活のあらゆる側面で男女の(ジェンダー)平等と公正を実現するために働くよう強く求める。
 
20. さらに女性が自らを尊敬し、価値を自覚し、社会における彼女達の多様な役割に対する尊敬のもとで、他の女性達が自らの持てる力を十分に活用し、選択の幅を最大限広げることを支援することが必要であることを強調する。
 
21. この点から、すべてのメディアにはその活動を通じて男女の不平等を助長し、少女の自尊を破壊するような、ステレオ・タイプを排除する重要な役割を持っていることを認識させる。
 
行動の呼びかけ
22. 立法者としてまた人々の代表としての私たちに与えられたユニークな役割に基づき、世界のあらゆる地域の国会議員に呼びかけを行なう。
 
23. 既に開催された国際および地域会議で、各国がその実行を誓約した行動計画、プログラムおよび資金の配分を実現するよう働きかける。
 
24. 政府に対し、ジェンダーの問題を政府の開発戦略、政策とプログラム、特に人口と開発活動に関する立法を行なう(この立法には、各国および地域の憲法に基本的な人権として男女平等と公正を盛り込むことを含む)場合に、十分考慮に入れるよう求め、2005年までには国際、国家および地方レベルで、選挙で選ばれた、または任命職にある人を含む政府の構成員の少なくとも50パーセントを女性にするようにする。そして、このような政策やプログラムをモニターし評価するためのメカニズムを作り、またはそれが存在するところでは強化するよう強く求める。
 
25. 女性の法的、健康における、社会的、経済的地位および権利の改善、および男性がリプロダクティブ・ヘルス、育児、家庭の責任を持つための政策やプログラムの制定を政府が実施可能にするための立法を行なう。
 
26. 政府が初等および中等学校のカリキュラムで女性と少女の全体的な健康状態の向上と責任あるパートナーシップを促進することを目的とした包括的な健康教育を行なうことを促進する。
 
27. 女子差別撤廃条約に署名していない各国政府に対して、その国会が条約に批准し、実施をモニターするようアピールを行なう。
 
28. 政府に対し、開発政策と法が家族の安定性を増し、様々な形態の家族、特に、片親家族や女性が世帯主である家族の増加を考慮に入れ、家族をより支援できるよう強く求める。
 
29. さらに、政府に対し、難民の立場にある人に対して性差による追害があることを認識させ、移民、難民および避難民(特に女性と子供)に対するあらゆる形態の差別を避けるためのステップを踏み、彼女達の人権が踏みにじられ無視されることから彼女達を守るように求める。
 
30. 開発と女性の地位の改善を図り、男女の平等および公正をもたらす戦略を実行する上で、政府と、NGO、市民社会、および民間企業の効果的な対話と協力関係を確保する。
 
31. 女性のエンパワーメントと男女の平等を擁護し、カイロと北京の目標と勧告の実施を見守り、目標と勧告を現実のものとするために必要となる資源の動員に特に注意を払う。
 
32. 各国政府に対して核廃棄物の投棄と核兵器の実験に確固として反対する世界の女性の見解を支持するようアピールを行なう。特に、太平洋地域の人々はこのような現実を押しつけられており、また核実験の再開を阻止する力を持っていないのである。
 
33. 資金提供を行なっている地域と国(ドナー・コミュニティ)に対し、政府開発援助を各国の国民総生産(GNP)の0.7パーセントにするという既に合意された目標をできるだけ早く達成するように呼びかけ、その50パーセントを女性とジェンダー関連活動、同様に人口問題に対する活動に振り向ける(イヤーマークする)ように強く要請し、その資源の利用状況をモニターする。
 
34. また、先進国と開発途上国の当時国が相互主義の基盤に則り、パートナーとして、特に軍事支出の削減を通して資源を配分し、均等に、政府開発援助の20パーセントをそして国家予算の20パーセントを基礎的な社会プログラムに配分することを強く要請する。
 
35. 政府に対し特に予算の削減と構造調整および経済回復プログラムの過程にあっても、女性とジェンダー関連のプログラムに対する予算の水準を維持し引き上げることを求める。
 
36. 国際的な金融機関に対して、構造調整およびに経済復興プログラムが社会およびにジェンダーおよびにそのニーズに対して十分配慮したものでありそれを解決に導きうるようなものとなるよう強く求める。
 
37. 政策およびプログラムを支援するための十分な国内資源を動員し、分配することに対する選挙区の人々の支持を喚起する。このことが、より一層の男女の平等、社会開発の推進、特に農村社会および都市社会の周辺に追いやられた社会に特別に配慮した人口問題の解決をもたらすのである。
 
38. 私たちはここに私たちの個人的な関わり合いから、この宣言に述べられている勧告を政治的な行動に移し、私たちが参加する、第4回世界女性会議および私たちの各国の立法を行なう上で、国際人口・開発会議の成果が確実に継承されるよう、自らの問題としてかかわり続けていく。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION