日本財団 図書館


国際議員会議
宣言文
 
アジア人口・開発議員会議
(ACPPD)
人口と開発に関する北京宣言
1981年10月30日
中国、北京
 
前文:
1. 1981年10月27日から30日まで北京で開催された第1回人口と開発に関するアジア国会議員会議に出席した我々、アジア19ヵ国の国会議員は、人口と開発の相関関係を討議するに当たり、社会経済開発におけるアジア諸国の努力および過去20年間の人口政策と家族計画プログラムの策定と実施におけるこれら諸国のイニシアチブに注目する、この取り組みは世界の出生率低下にかなり貢献した。
 貧困、雇用、開発の問題に取り組む努力に関し、人口、資源および開発の不可分の関係を認識し、この点について、人口と開発に関するコロンボ宣言および資源、人口および開発に関するクアラルンプール宣言を再確認する。
 開発政策とプログラムの策定と実施について、資源と人口の適切なインテグレーション(統合)を保証するアプローチをアジア諸国が採択する必要性を再確認する。
 国民の社会経済福祉を促進する努力について、各国の主権を尊重した上で、アジア諸国間のより緊密な協力の必要性を確認する。
 世界資源の公正な分配を目指し、新国際経済秩序の早期実現と確立に向けられた絶え間ない努力の必要性を再確認し、これらの目標がアジア諸国間の連携と協力の絆を強化することを通じて実現されるべきことを強調する。
 
2. アジア諸国における宗教と信条、文化と伝統における多様性を認め、社会的・経済的・政治的状況における相違に留意しながらも、我々は次のような多くの共通の憂慮すべき問題を抱えていることを認識する。
 
―アジアの現在の人口は26億人と推計されているが、これは世界の総人口の約60パーセントを占めており、西暦2000年までにさらに10億人増加すると予測されている。
 
―世界の貧困層の90パーセントはアジアに住んでおり、もし現在の傾向が続けば、状況はさらに悪化すること。我々の人口のこの大部分が、栄養不良、非識字および不健康にさいなまれており、かくして彼等は基本的人権と開発の恩恵を十分に享受していない。
 
―女性はアジア諸国の人口のほぼ50パーセントを構成しているにもかかわらず、この重要な女性層が開発のプロセスに効果的に参加し、その恩恵を分かち合う平等な機会を与えられていない。
 
―アジアの総人口の約60パーセントは25歳以下であり、1980年において15億人であると推計されているが、人的資源の活動的な層としての青年は、未来の担い手、かつ指導者として、その潜在能力を十分に開発する適切な機会を与えられていない。
 
―アジアの多くの諸国は豊富な天然資源に恵まれているにもかかわらず、その国民生活の質を向上させるための人口と資源間の長期的均衡が、現在それらの効果的・生産的利用に必須の補完要因の欠乏によって、制約を受けている。
 
―人口と資源間の不均衡の結果は、自然環境の悪化をもたらす森林伐採、土壌荒廃およびその他の生態学的変化を惹起し、これを阻止しなければ人間の生存そのものをおびやかすであろう。
 
―アジアのほとんどの諸国の経済開発は圧倒的に農業生産および天然資源の開発に依存しており、既存の国際経済システムヘの参加からはそれらの諸国が公正な恩恵を受けていないこと。
 
―平和、国家の安全保障と安定は、開発のための前提条件であり、これらがアジアに保証されなければ、国民の生活の質を向上させようとする我々のすべての努力は成功しえないこと。
 
目的:
3. 前文に表明された諸関心事を考慮し、かつそれらにより効果的に対処する必要性を認識し、それ故に、この会議では、次の目的を討議する。
(a)人口と開発における経験と知識のより大きな継続的な交流を通じて、アジア諸国の国会議員間の協力を促進する。
(b)開発のプロセスにおいて、人口、資源および環境のインテグレーションによる資源のより効果的な利用・管理を通じて、アジア諸国民の生活の質をさらに改善し、豊かにする。
(c)国内、地域および国際的なレベルにおいて、人口、資源および開発への統合的かつバランスのとれたアプローチのプロセスを早めるため、より効果的なメカニズムを通じて、社会正義と経済発展を達成する。
(d)新国際経済秩序の早期実現・確立を遂行するためにアジア諸国の努力を強化し、協力を強化する。
 
呼びかけ:
4. この会議は、それ故に、次のとおり呼びかける。
 
アジア諸国のすべての議会へ
5. 人口と開発の問題に関する国会議員の国内グループの結成を奨励すること。そしてこれらのグループを通じて、
 国会議員の中で人口と開発の相関関係についての意識を高め、より大きな理解を促進すること。
 これらの問題への新しいアイデアとアプローチを発展させるために、人口と開発の相関関係に関する知識を増大させ、経験を交換するため、アジア諸国および世界の他の諸国の国会議員の間で、交流プログラムを創設し、促進し、支持すること。
 国内、地域および国際レベルにおいて、国会議員と社会・経済・人口の計画立案者および実施者の間の継続的な対話を促進すること。
 
アジア諸国のすべての政府へ
6. アジア諸国民の社会経済開発の戦略とプログラムを策定するに当たって、知的、哲学的および文化的伝統の蓄積を無視することなく、計画・実施の努力に直接応用するために、この豊富な知識と科学的根拠を引き出すこと。
 
7. 各国のニーズと意気込みに調和させ、国家開発プログラムの不可欠な部分である包括的な人口政策の採択につけ加えて、彼等の政治的意志を発揮し、既存の人口プログラムに対する支持をより一層強め、プログラムのニーズに応えるよう十分な資源を割り当てること。
 
8. 人口政策とプログラムの策定、その効果的な実施のため、国家調整機関が存在しない地域では、これを設立すること。
 
9. 定期的な人口調査を実施し、人口の傾向とこの傾向が保健、教育、農業および産業開発、住宅供給および環境に与えるインパクトを調査すること。
 
10. 各国のニーズにより、国内において家族計画および人口プログラムに対して財政的割当てを増大させること。
 
11. 地域社会の資源の効果的な動員・利用とともに、マス・メディアの効果的な使用を通じて、人口と開発における地域社会の参加を刺激し、維持すること。
 
12. 共通の努力とパートナーシップの精神をもって地方、国内、地域および国際レベルで人口と開発のプログラムについて非政府・民間機関の参加を促進し、強化すること。この目的のため、非政府・民間機関が、国策の枠組みの中でその役割に重要な地位が与えられることによって、人口と開発のインテグレーションのプロセスを促進する努力が強化されるよう政府に勧奨するべきである。
 
13. 西暦2000年までにアジア地域に人口増加率1パーセントを達成するため、人口と開発のプログラムの実施における既存の目標を再検討すること。
 
14. 社会経済開発プログラムを強化・拡大し、開発が社会的・経済的不平等を減少・縮小することに向けられるよう保証すること。
 
15. 国民の間に、開発計画と実施について、草の根アプローチに向けられた政治的意識、大きな自信、社会的意識・責任を育成することによって、開発のプロセスには個人と地域社会の自助努力の強調が含まれていることを明確にすること。
 
16. 環境を保護することの必要性に留意しながら、天然資源の保存と効果的利用のため効率的な戦略を計画すること。
 
17. 1980年7月のコペンハーゲン会議において採択された保健、教育および労働の分野における『婦人の10年の後半』のための国連行動計画に特に留意し、開発の政治的、経済的、社会的および文化的面のあらゆるレベルにおいて女性の平等参加の機会を拡大すること。
 
18. 男女の平等の権利を完全に保証するため、特に女性の母親としての役割における社会的責任と権利の増大を可能にするべく、女性の教育のレベルを向上させ、必要なところでは、家族の権利に関する法律を制定・実施すること。
 
19. 青年という大きな人的資源を活用するプログラムを導入するため、青年の諸問題のより良き理解を得るべく研究・調査に着手し、促進し、利用すること。
 
20. 青年が開発と人口プログラムに参加するために責任ある市民となる準備として、基礎的および職業的教育訓練を促進し、継続的な教育を保証し、人口教育を学校教育および社会教育に統合すること。
 
21. 開発から最大限の恩恵を得るために、特に青年に対して、物質的開発と精神的価値観のバランスをとることの重要性を再強調し、その必要性を説き教えること。
 
22. 麻薬中毒の増大と性病の罹病率の増大に配慮をすること。
 
23. 相互利益の分野で協力的な努力を強化することによって、新国際経済秩序の目標と目的の早期達成のため努力すること。
24. アジア諸国に存在するあらゆる経済的補完性、天然資源の入手可能性および潜在的市場性を最大限に活用するため、アジア地域内の貿易と経済協力を増大させる対策をとること。
 
25. 貿易関係を改善し、資源・技術および専門知識についてより公正な配分がなされるように、先進国および開発途上国の間で有意義な対話を増大させること。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION