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5. 教育・研究図書有効活用プロジェクト推進委員会
 図書プロジェクトを円滑に実施するために有識者(10名)からなる「教育・研究図書有効活用プロジェクト推進委員会」を設置している。平成14年5月に第2回委員会、平成14年10月に第3回委員会を開催し、各委員からの有益な意見・提案等をプロジェクトの推進に反映させている。
 
 中国10大学の図書館担当者に日本の図書事情、文化、風俗習慣等を紹介し、その理解を深めることによって、プロジェクトのより円滑な推進を図るため、昨年度に引続き「第2回中国大学図書館担当者訪日交流プログラム」を実施した。
 
○訪日日程:平成14年10月22日〜平成14年10月31日(10日間)
○訪日メンバー:中国大学図書館担当者訪日団12名
○実施内容:
(1)「図書館情報リテラシー研究会」の開催(平成14年10月23日)
 日中両国の図書館関係者(参加者45名)が一堂に会し幅広い情報交換と交流の場となる標記の研究会を開催した。中国の黒龍江大学図書館・霍燦如館長が「中国の大学図書館情報リテラシー教育発展の方向」というテーマで、コンピュータ・ソフトウェア著作権協会 中川舞弓専務室長が「日本の電子情報著作権」というテーマで講演を行なった。両者のテーマはIT化の流れの中で日中の図書関係者の最大の関心事であったため、講演後の質疑応答も活発で多くの参加者から有意義な研究会であった旨の感想を得た。
 
(2)寄贈図書に係る整備作業現場の視察
 図書整備に関する業務を委託している丸善(株)のトランクルームを訪問し、収集図書の保管、図書リストの作成、図書の整備、輸出用梱包等の一連の作業過程を視察し、収集した図書がどのようにして中国まで輸出されるかについて訪日団の理解を深めた。
 
(3)図書館の視察
 早稲田大学、京都大学の各大学図書館、富士通(株)図書館、国立国会図書館関西館、大阪府立中央図書館を視察し、訪問先担当者等との懇談、情報交換を行った。
 
(4)日本の自然、文化施設、研究所等の見学
 日本の代表的名所旧跡である箱根、京都、奈良、日本の農業の研究施設である大阪府立食とみどりの総合技術センター、また、先端的な娯楽文化施設としてユニバーサル・スタジオ・ジャパンを見学した。
 
○招聘の成果
(1)訪日団員が実際、目で見て肌で感じることにより、日本の社会事情、風俗習慣が深く理解された。また、それまで日本に対して抱いていた漠然としたイメージは真実の姿で具体化され、日本人に対する親近感が生まれた。
 
(2)訪日団員の物事を研究する意欲は旺盛で、訪問先での質問は非常に積極的なものであった。多くの場合、それは予定時間を超過するほどであったが、日本の社会・文化を知りたいという意欲・相手から学ぼうという真摯な態度は、訪問先の担当者にも爽快な印象を残すものであった。そのため、各訪問先においては担当者の行き届いた配慮により予想以上に有意義な回答が得られたばかりではなく、国を超えて新たな友情が芽生えた。
 
(3)訪日交流を契機に寄贈図書対象大学の交流会とも言える「訪日報告会」が南京大学において開催され、出席者はそれぞれの訪日成果を報告しそれを他の出席者と共有し、また、寄贈図書の受入れ業務の担当者としての情報交換も行なった。この報告会により中国10大学の図書館担当者間の横のネット・ワークが構築されつつあり、訪日成果が中国においてさらに深められたと考える。
 
 平成14年度「教育・研究図書有効活用プロジェクト」を総括すると、
 
1)図書の収集においては、企業や大学・研究機関の図書館、出版社その他個人など、多くの方々のプロジェクトヘの賛同と図書提供の協力が得られ、232,000冊余を収集することができた。図書の寄贈についても目標に掲げている100,000冊を大幅に上回り259,000冊に達した。
 
2)提供者ごとの収集冊数は、前年度に比べ各項目ごとに増減が見られるが、企業図書館の提供冊数の半減と出版社の提供冊数の倍増が特徴的である。また、収集図書を分野ごとに分類すると、人文系が62%、理工系が23%、医学系が15%であり各分野から万遍なく収集することが出来た。
 
3)図書の需要と供給の現状について言えば、提供側には収集図書の重複傾向等の不確定要因があり、受け手側には図書館の収容能力、受入れ作業の処理能力等の限定要因がある。こうした現状を踏まえて、プロジェクトの健全なる発展を考える時、需要の裾野を広げることがその有効な解決策であると考えられる。
 
4)2回目となる中国大学担当者訪日交流は前回の経験を活かし日中の学術交流と友好親善の両面で大きな成果を収めることができた。また、昨年同様、10大学担当者の自主的企画による担当者報告会が後日中国で開催された。この会では、訪日プログラムにおける体験事項の紹介、情報交換等が行なわれ、また、寄贈図書受入れ担当者の観点から本プロジェクトに対する建設的な提案もなされた。







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