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●第2章 造船所に関係する廃棄物処理について
 すべての廃棄物は、廃棄物処理法に基づいて処理しなければなりません。事業者は、事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理をする義務があります。自ら処理をできない場合には、許可を受けた処理業者に処理を委託する場合があります。
 
(1)木材・木屑・ウエス・紙類などの可燃物の処理
 2002年12月1日より、家庭用(事業用)小型のごみ焼却炉の規制が強化され、法定基準を満たさない焼却炉の使用ができなくなりました。造船所内において焼却されていた木材・木屑・ウエス・紙類などの可燃物は、廃棄物として排出するか、法定基準を満たした焼却炉での処理が必要となります。
 法定基準を満たした焼却炉とは、ごみの投入装置、送風機、バーナー、温度計等の設備をもっているものとなり、今までの市販焼却炉、ドラム缶焼却炉、ブロック積み焼却炉などすべて使用できなくなります。
 また、焼却炉を使わずに、焚き火でと考えもありますが、キャンプファイヤーや焚き火等の軽微なもの以外は野焼きと見なされ禁止されています。
 
焼却炉の法定基準
(焼却炉の規模に関係なし)
(1)常時800℃以上の状態で燃焼・焼却ができるもの
(2)焼却に必要な空気を必要に応じて適時供給ができるもの
(3)燃焼温度・排気温度測定装置がもうけられているもの
(4)助燃装置が設けられているもの
 
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廃棄物焼却炉の法定基準
 
 焼却能力が時間50kg〜200kg、火床面積が0.5m2〜2m2の焼却炉も、2000年1月から「ダイオキシン類対策特別措置法」が適用され、地域担当管轄所(保健所他)への届出と年1回以上の排ガスと焼却灰等のダイオキシン類測定が義務づけられています。(設置地域により変動あり)また、これ以上の大きさの焼却炉は許可申請の対象施設です。
 
※焼却能力が時間50kg未満の焼却炉は法定基準を満たしていれば、タイオキシン類の測定が不要(届出不要)となリますが、市町村によっては、大型焼却炉と同等の義務付けが付されている場合がありますので、注意が必要です。
 
(2)アスべスト(石綿)、PCBなどの処理
 船体隔壁、天井材などに含まれるアスベスト(石綿)、照明器具等の安定器、高圧コンデンサー等に含まれるPCB等は、特別管理産業廃棄物(Annex表2参照)となります。
 特別管理産業廃棄物に該当する廃棄物を排出する際は、廃棄物処理法により定められた、処理基準に従う必要があります。特別管理産業廃棄物を発生する事業場には、特別管理産業廃棄物管理責任者(厚生大臣が認定する講習の課程を修了した者など)を置かなければなりません。(法第12条の2第6項)そして、事業者が特別管理産業廃棄物の処理を他人に委託する場合は、特別管理産業廃棄物の処理の委託基準に従うこと、特別管理産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付しなければならないことなど、他の産業廃棄物の処理と異なる法規制に従う必要があります。
※廃PCB(PCB含有トランス、コンデンサー等)を保管(使用)している場合には、報告、表示、等の厳重な保管管理が必要です。詳細については、各地方自治体の産業廃棄物課にお問い合わせ下
さい。
 
<特別管理産業廃棄物排出事業者の責務>
・特別管理産業廃棄物の資格を有する収集運搬業者、処理業者に委託する。
・委託の際は、あらかじめ、特別管理産業廃棄物の種類、数量、性状、荷姿・取り扱う際の注意事項を文書で通知する。
・事業所毎に特別管理産業廃棄物管理責任者を置き、都道府県知事に届出る。
・マニフェストを交付し、処分状況を把握する。異常のときは、都道府県知事に報告する。
・事業所毎に、1年間の特別管理廃棄物の排出状況(マニフェストの交付状況)をフォーマットに従い、都道府県知事に報告する。
 
(3)廃棄物の保管方法
 造船所で排出した廃棄物は、廃棄物の収集運搬業者により搬出されるまでの間、省令で定める基準(産業廃棄物保管基準、特別管理産業廃棄物保管基準)に従い保管しておかなければなりません。
 
 
産業廃棄物保管基準(法第12条第2項、省令第8条)
(イ)周囲に囲いが設けられ、かつ、見やすい箇所に産業廃棄物の保管場所である旨等を表示した掲示板が設けられていること。(保管する産業廃棄物の荷重が直接囲いにかかる場合には、荷重に対し構造耐力上安全であること)
 
囲いに産業廃棄物の荷重が直接かかる場合
 
囲いは、風圧力、地震力等のほか、廃棄物の荷重に対して構造耐力上安全であり、変形や損壊のおそれがないもの
 
(1)囲いから内側2m以内の範囲
囲いの上端から下方に50cmまでの高さ
(2)囲いから内側2m以上の範囲
囲いから内側2mの地点のアの高さから水平面に対し上方に50%勾配の高さ
 
(ロ)保管に伴い汚水が生じるおそれがある場合は、公共の水域および地下水の汚染を防止するために必要な排水溝その他の設備を設けるとともに、底面を不浸透性の材料で覆うこと。
 
囲いに産業廃棄物の荷重が直接かからない場合
 
囲いの下端から水平面に対し上方に50%勾配の高さ
 
※矢板及びコンクリート等の強固な囲いは変形や損壊のおそれのない囲いに該当し、産業廃棄物の荷重が直接かかる場合の保管の高さが適用される。が,トタン等による囲いは下図の保管の高さが適用される。
 
(ハ)屋外で容器を用いずに保管する場合は、積み上げられた産業廃棄物の高さが省令
で定める高さをこえないようにすること。
 
(二)その他保管場所から産業廃棄物が飛散し、流出し、地下に浸透し、悪臭が飛散しないための必要な措置をとること。
 
(ホ)保管の場所には、ねずみが生息し、蚊・ハエその他の害虫が発生しないようにすること。
 
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保管場所の平面図見本
 
特別管理産業廃棄物保管基準(法第12条の2第2項、省令第8条の13)
 
(へ)特別管理産業廃棄物の保管を行う場合には、上記(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(ホ)の規定の例によること。
 
(ト)他の物が混入する恐れのないように仕切りを設ける等、必要な措置をとること。
 
(チ)特別産業廃棄物である廃油、PCB汚染物又はPCB処理物は、容器に入れ密封する等、揮発を防止し、高温にさらされないための必要な措置をとること。
 
(リ)廃酸又は廃アルカリは、容器に入れ密封する等、腐食を防止するために必要な処置をとること。
 
(ヌ)PCB汚染物又はPCB処理物については腐食防止のために必要な措置をとること。
 
(ル)廃石綿等は、梱包する等、飛散防止のために必要な措置をとること。
 
(ヲ)腐敗する恐れのある特別管理産業廃棄物は、容器に入れ密封する等、腐敗防止のために必要な措置をとること。
 造船所で排出する可能性のある特別管理産業廃棄物として石綿(アスベスト)、PCBが含まれる高圧コンデンサーなどがありますが、その他、ビルジ水なども産業廃棄物の「廃油」にあたり、適切な処理をせずに海へ排水すると、海洋汚染防止法違反となりますので注意が必要です。
 造船所における船舶の修繕等において廃石綿、廃PCBが排出される可能性のある場合は、船主・顧客との十分な話し合いが必要です。
 
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PCB廃棄物保管例







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