新年のご挨拶
ジェトロ・シンガポール・センター船舶部
山?壽久駐在員
新年明けましておめでとうございます。
新年を迎えるにあたり、会員皆様方のますますのご発展とご活躍をお祈り申し上げます。
私事で恐縮ですが、着任以来当地ではや2年9ヶ月が過ぎました。その間、昨年11月の南太平洋諸国造船交流会議、造船振興セミナー、本年7月の上海、11月のタイ政府との会合等で多くの会員の皆様と当地及び東南アジア各国でお会いすることが出来るなど、非常に楽しい、充実した日々を送らせて頂いております。
さて、昨年のシンガポールは、エレクトロニクス分野が復調し、景気は回復基調にありますが、結局米国経済とエレクトロニクス業界頼みということで、先行きに不透明感が漂うすっきりしない年でした。シンガポール政府は2002年の実質GDP成長率を、3〜4%程度と予測しており、2001年のマイナス成長からは抜け出すこととなります。
シンガポールで3度目のクリスマスシーズンを迎えましたが、目抜き通りであるオチャード・ロードのデコレーションは昨年よりは良くなりましたが、全体的に華やかさと力強さに欠けるものになっており、この国の現在の景気を反映したものとなっています。このような状況のもと、シンガポールは製造業とサービス業の調和の取れた発展を目指しており、製造分野においては従来からのエレクトロニクス、化学の両産業分野に加え、21世紀の重点産業として生命科学産業の育成に取り組んでいます。また、造船業界は、原油価格の高値安定等の追い風に乗り、オフショア、新造、修繕とも、これまでの低迷を脱し、極めて好調です。
他の東南アジアの諸国を見ますと、程度の差はありますが、全体的に厳しい経済状況にあります。しかしながら、東南アジア諸国は潜在的な国力を持っており、日本及び米国の経済回復が大きなキーになりますが、再度着実な発展を遂げることを期待したいと思います。東南アジア地域は、我が国造船業にとっても最も重要な市場の一つです。東南アジア諸国は経済成長への政府の強い関与、域内市場の規模、域内産業の集積度など、他地域の発展途上国には無い環境にあり、投資先としても有望な市場です。
当事務所といたしましては、東南アジア、また世界でも有数の人流・物流のハブであり、情報基地でもあるシンガポールに所在するという好条件を生かして、造船・海運関係の情報収集を始め会員の皆様方のお役に立てる活動の充実に一層努力していく所存です。
本年も皆様方のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
海外事務所活動レポート
亜州海事情報
ジェトロ・シンガポール・センター船舶部 山?壽久駐在員
1. シンガポール
<ケッペル、造船・海洋部門好調>
ケッペル・コープは、2002年1〜9月期決算の決算を発表した。
純利益が2億6,341万Sドルと好調。前年同期の純利益は6億6,100万Sドルであったが、これはケッペル・キャピタル・ホールディングス(KCH)の売却で6億6,100万Sドルの特別利益を計上したためで、これを除外した比較では48%の増益になった。
ケッペルは、造船・海洋、ネットワークインフラ構築、不動産が中核業務であるが、純利益の53%を造船・海洋部門が貢献した。同部門は19億Sドルの受注残があり、新規プロジェクトの受注も見込める。しかしインフラ部門の見通しは厳しいとのこと。
《30 Oct 2002, The Business Times, Singapore》
<国際化を目指すSTマリン、米で補給船の建造受注>
シンガポール・テクノロジーズ(ST)・エンジニアリングは、同社海洋部門子会社のSTマリンが米国子会社VTホルター・マリンを通して、オフショアサプライベッセルを1,800万Sドルで受注したことを発表した。契約には6隻の追加発注がオプションとして含まれており、これらをすべて受注した場合には、事業総額は1億2,000万Sドルとなる。STマリンはニュージーランド政府の総額4億3,500万Sドルの艦艇入札でも最終候補6社の中に残っていることも明らかになっている。
STエンジニアリングのタン・ペン・ホク社長兼最高経営責任者(CEO)は、業務の国際化を目指すSTマリンにとって、極めて幸先の良いスタートを切ったとの声明を発表した。実際に建造を行うのは、STマリンが先月買収したばかりの米国子会社のVTホルター・マリン。VTホルター・マリンは中小型船の建造を行っており、米国内に7ヶ所の造船施設を有している。
《12 Nov 2002, The Business Times, Singapore》
<海事産業、前期対前年13%の成長>
シンガポール海事産業協会(ASMI)は、シンガポール海事産業の本年前半期の総売上が13%増となり、業界が昨年の記録的好況に引き続き、本年も好況であることを明らかにした。同協会の34周年記念の場で述べた。前年は総売上約40億Sドルで対前年比46%の増であった。
現在、海事産業はオフショア部門の好調と、修繕部門の堅調により、シンガポールのGDPの2.5%に寄与しており、30,000人の雇用確保に貢献している。同協会は、海事産業界は向こう2年間の受注を確保しているとしていたが、一方で低コスト競争が激化しており、好況に酔いしれる余裕はないとしている。
《16-17 Nov 2002, Weekend Business Times, Singapore》
<NOL、AET分離を検討>
ネプチューン・オリエント・ラインズ(NOL)は、タンカー部門アメリカン・イーグル・タンカーズ(AET)の売却を含めた分離策を検討していると発表した。
同社は現在数社からタンカー部門の買収について打診を受けているもようであることをうけ、売却のほか、合併、合弁事業、新規株式公開(IPO)を含めたあらゆる可能性を探ってい
るとしている。
《08 Oct 2002, The Business Times, Singapore》
2. マレーシア
<ペトロナス、仏タンカー爆発で損害>
フランス籍VLCC「ランブール号」のイエメン沖の爆発事故で、国営石油会社ペトロナスに損害が出た。ペトロナスは、ランブール号がサウジアラビアから同社向けのアラブクルード油40万バレルを積んでいたことを認めた。ペトロナスは、重質原油の不足を防ぐため、別ルートからの供給確保を手配済みとしている。
《08 Oct 2002, Business Times, Malaysia》
<スター・クルーズ、上海を新たな拠点に>
スター・クルーズは、中国の上海の外灘(バンド)を同社が運営する豪華客船の拠点の1つに加えたいとの構想を明らかにした。スター・クルーズの「スーパースター・レオ」と「スーパースター・アリエス」の2隻が、11月13日に上海に寄港予定。また同社は、香港と上海を結ぶ定期便を就航させる計画がある。
スーパースター・レオは、総トン数76,800トンで、アジア太平洋のクルーズライナーとしては現在最大。スター・クルーズは現在、19隻の客船を保有。アジア太平洋のほか、北米、南米、ハワイ、ヨーロッパ便などを運航している。
《05 Nov 2002, Shipping Times, Singapore》
<近鉄子会社、サラワク、ブルネイで事業拡大>
近鉄インテグレーテッド・エアサービシズは、東マレーシアのサワラク、サバとブルネイでの事業拡大を計画している。近鉄インテグレーテッド・エアサービスは、日本を本社にする近鉄ワールド・エクスプレスの子会社。
同社の東マレーシアでの事業では、航空輸送や海運の他、通関の仲介、ロジスティックスなどの事業も行う予定。同社は、これにより来年の売上高を対前年比5%増の350万リンギと予想。近鉄インテグレーテッド・エアサービシズは1999年3月にサラワク州クチンに事務所を開設し、現在は地場の運送事業者に対し実務を委託する仲介が事業の中核となっている。
《21 Nov 2002, Business Times, Malaysia》
3. インドネシア
<運輸省、独造船所に客船2隻発注>
運輸省は、ドイツのメイヤーベルフト造船所と国内で運航する旅客船2隻の建造を発注する契約を結んだ。建造費用は7,460万ユーロで、独政府系金融機関の支援基金による借款と民間資金で賄う。署名式にはアグム運輸相と独のフルダ駐インドネシア大使が出席した。
船舶の定員は3,000人以上で、納期は2004年9月の予定。これら2隻は国営フェリー会社ペルニがスマトラとジャワ、スラウェシ、パプアで運営するフェリー路線に投入される。独政府はインドネシアに対し、これまでに大型船22隻の建造財源などを補助している。今回の発注をめぐる競争入札には、独国内の4つの造船所が応札し、メイヤーベルフト造船所が落札した。
《28 Oct 2002, The Daily NNA》
<新日鐵、海洋プラットフォーム製作受注>
新日本製鐵のインドネシア法人ニスコニ(Nisconi)はこのほど、プレミア・オイル・ナツナ・シー社から西ナツナ海域ブロックBに新設する天然ガス開発用プラットフォーム1基とパイプラインについて、設計・製作・据付・試運転を含む工事一式を受注した。
豪州クラフ社のインドネシア法人ペトロシー(Petrosea)との合弁で受注したもの。契約総額は6,900万米ドル。工事は、プラットフォーム「ガジャバル」1基と口径10インチの海底パイプライン(全長2.3km)で、完工は2004年11月の予定。プラットフォームの製作は、新日鐵が全額出資するインドネシア法人NSバタム社が実施し、プラットフォーム・パイプラインの据付工事は新日鐵が保有する大型海洋作業船「くろしお」が行う。
《11 Oct 2002, The Daily NNA》
<国営造船所、運輪省から5隻受注>
国営造船所のドック&プルカパラン・コジャ・バハリ(Dok&Perkapalan Kodja Bahari:DKB)は、運輸省から5隻の受注を受けた。750DWTが2隻、350DWTが3隻で、契約総額は765億ルピア。政府からの船舶受注は1996年以来6年ぶり。政府は今年、インドネシア東部地域の輸送用に、DKBへ発注した5隻を含む8隻の船舶の建造を発注する計画。東部地域では現在、38隻の船舶が運航しているが、大半の使用年数が10年以上のもの。
なお、DKBは、リアウ州シアク県とナングル・アチェ・ダルサラーム州の両政府から、造船所の建設計画への投資について打診を受けている。うちシアク県政府は、1,500〜2,000DWT級の造船所の建設を計画しており、50〜100隻の発注を希望している。
《05 Nov 2002, The Daily NNA》
<石油公社タンカー入札、国内造船に割当>
石油公社プルタミナは、油タンカー12隻の建造入札で、一部の発注を国内の造船所に割り当てることで同意した。プルノモ鉱物資源エネルギー相は、12隻のうち重量が26万トンDWT級の2隻については、国内造船所では建造が不可能との見方を示している。
プルタミナは2008年までに38隻の油タンカーが必要で、このうちまず12隻の発注先を決定する入札を実施している。これら12隻の内訳は、30万DWT級が2隻、3万DWT級が3隻)1万7,500DWT級が2隻、6,500DWT級が3隻、3,500DWT級が残り2隻。
《12 Nov 2002, The Daily NNA》
<国営造船PAL、先月末に債務完済>
国営造船PALインドネシアはこのほど、銀行再編庁(BPPN)に対する負債の5,292億ルピア、685万米ドルと849万ドイツマルクすべてを先月末に返済したことを明らかにした。国営バンク・マンディリが昨年1月8日に前年末時点の債権をBPPNに移管していたもの。同社のアドゥイン取締役は、年10%の増益および増収の達成に向け、今後新たな融資を獲得し事業の発展につなげたいとの抱負を表明した。
一方、今年の売上高は、当初の1兆ルピア(前年1兆990億ルピア)の予測から5%ほど落ち込む見通しだ。国内外からのオーダー延期が相次いでいるためで、先月のバリ島爆弾テロ事件とは関係ないとしている。造船事業による収入が70%、コンソーシアムで行っている発電所事業が30%を占めるとみられており、造船事業収入のうち、約40%が国防省から受注したパトロール船と軍艦の販売・修理、約60%が民間から受注した一般商船の販売によるもの。
《14 Nov 2002, The Daily NNA》
4. フィリピン
<海運ゴソン、合併交渉否定>
海運業者カルロスA・ゴソン(CAGCI)はこのほど、セブを拠点とするスルピシオ・ラインズとの合併交渉のうわさを否定した。同社は日本の中古船舶の購入や乗客ターミナル建設など事業拡大を計画していることを表明。
《01 Oct 2002, Business World, Philippine》
<海運最大手、フェリー2隻まもなく導入>
海運最大手アボイティス・トランスポート・グループ(ATG、旧WG&A)はこのほど、国内外の観光客による島嶼間航路の利用促進を進めるため、クルーズクラスのスーパーフェリー2隻を45日以内に導入すると発表した。
ATGは、欧州でクルーズ船として利用されていたフェリーを総額2,000万米ドルで購入する。当該フェリーを旅客定員2,000人、自動車60台搭載のフェリーに改造し、スーパーフェリー15、16として運航する予定。同社はこの船舶購入の他にも、来年1月からセブで新旅客ターミナルの運営を開始するほか、新たなスーパーフェリーを利用したパッケージ・ツアーの販売促進図るとのこと。
旧WG&Aは、特別株主総会で社名をアボイティス・トランスポート・グループに変更することを承認していた。
《14 Nov 2002, Business World, Philippine》
<海運業者のVAT免除、10年に延長へ>
財務省は、船舶の購入業者に対する付加価値税(VAT)の免除期間を、現行の5年から10年に延長するもよう。国内の海運業界を活性化するのが狙いとみられる。
政府関係者の情報によると、財務省は現在、総トン数5,000トン以上の船舶購入に企業にのみVATの免除を認めていたが、これを建造から10年以内の船に限り、総トン数150トンに引き下げるとのこと。海運業界は、税制優遇期間を20年まで延長するよう要請していた。
《18 Nov 2002, Malaya, Philippine》
<ATG、運輸関連3社を統合>
海運最大手アボイティス・トランスポート・グループ(ATG、旧WG&A)は、アボイティス・グループ内の運輸関連3社をATGに統合する計画を明らかにした。同社は、海運部門のスーパー・ファスト・フェリー、流通部門のアボイティス・ワン、海運管理部門のアボイティス・ジェブセンの3社に対する査定を開始し、来年3月までに統合する予定とのこと。
ATGは、アボイティス・エクイティー・ベンチャーズ(AEV)がWA&Gの主要株を取得した後、今月11日に特別株主総会で名称変更が承認されたばかりであるが、統合後は社名を再度変更する予定。また、同社は、国内観光客向けの島嶼間で利用するクルーズ船舶2隻の購入費用として11億ペソの資金調達を完了した模様。
《21 Nov 2002, Business World, Philippine》
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