日本財団 図書館


新年のご挨拶
社団法人日本中小型造船工業会
会長 三輪 善雄
 新年を迎え謹んでご挨拶を申し上げます。
 さて、私ども中小型造船業界は、ここ数年内航船や漁船など中小型船の建造需要が極端に落ち込み、近海船、外航船についても国際競争の激化や為替の変動などの影響を受けて、極めて厳しい経営状況が続いております。
 一方、これまで業界を支えてきた経験と勘を要する技能職の高齢化が進行し、これに近年の若年層の製造業離れの傾向が加わり、さらには、コスト削減を優先した短期的な経営方針をとらざるを得ない状況から、人材育成が停滞し、このままでは現場の高度な技能が継承されず、安定的な船舶の供給に支障をきたすことが懸念されております。
 また、経営的には小規模とはいえ、その地域の経済や雇用に対する影響力も大きく、今後も引き続き地域社会経済の発展に寄与していくことができるよう懸命の努力を重ねているところでございますが、今日、私どもの業界は、仕事はあるが儲からないか、あるいは仕事が全くないかどちらかの状態に陥っており、今後、躍進著しい中国造船業との競争激化が確実な情勢下、このままでは我が国中小造船業の衰退は必至という危機感を抱いております。
 このような状況下、当工業会は、昨年10月に、何としてでもこの現状から脱皮し、活力ある次世代中小型造船業の構築に向け「経営基盤の再構築」、「国際化への対応」、「技術革新への対応」、「環境問題への対応」を4本柱とするビジョンを策定し、取り組みを開始したところでございます。
 雇用を確保するために当面必要な工事量確保を始め、人材育成、技能の伝承、設計及び生産技術の高度化、国際協調の推進等々課題は山積しておりますが、近い将来、省エネルギーや環境保全、少子高齢化といった社会的な問題に適切に対応できる業界に生まれ変わり、環境との調和に配慮し高齢者が安全に働ける造船所で、交通弱者や地球に優しい船舶が作られ、それらが我が国海上交通の主役として活躍する日が来ると同時に、国際的に見ても造船業が日本の国民性に合った産業であり、国際的に高い評価が続くことに大きな期待を寄せております。
 しかしながら、私ども業界は殆どが中小企業で、しかも造船専業であるため、業界の自助努力には自ずと限界があり、政府並びに日本財団を始め関係各位の更なるご指導、ご支援をお願い申し上げる次第でございます。
 最後になりましたが、関係各位のご繁栄とご多幸をお祈り申し上げまして新年の挨拶とさせていただきます。
 
国土交通省 海事局
局長 徳留 健二
 平成15年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
 昨年は、国内においては、大手造船所の分社化・統合による業界再編(10月1日)、建造中豪華客船「ダイヤモンド・プリンセス」の火災事故(10月1日)、メガフロートの羽田再拡張工事への工法候補としての認定(10月23日に工法評価選定会議の最終報告)、国際においては韓国政府の造船業への助成行為に対する欧州のWTO提訴(10月21日)、OECD造船新協定交渉開始(12月5日)など、我が国造船業にとって、ここ20年来の大きな出来事が続いた年でした。
 中小型造船市場に視点を移しますと、ケミカル船等は比較的需要が好調であったものの、中小型バルカーでは中国等の進出により競合が激しくなり、また内航船を中心とする造船所においては、長引く景気低迷や、荷主業界の再編による物流の効率化、漁船需要の激減などにより、建造需要が長期にわたり低迷していることから、引き続き厳しい経営環境にあるものと拝察します。しかしながら、我が国の貿易及び国内物流を支えるためにも、中小型造船業の技術基盤、経営基盤の更なる強化による良質な船舶の安定的な供給が強く求められています。
 昨年、国土交通省では、今後とも我が国造船産業が世界の造船・海運の中心であるための戦略を検討する場として、「造船産業競争戦略会議」を新たに設置し、現在、産学官の有識者の方に議論いただいているところであります。その議論をお聞きして、造船業の技術基盤強化の鍵は人材にあり、多数の熟練技能者の退職時期が迫る中、本格的な取り組みを始めるのは今をおいては他にないとの思いを改めて強くしております。
 中小型造船業において取り組むべき課題は山積しており、貴会の果たす役割はますます重要なものとなっております。貴会は中小企業経営革新支援法に基づく経営基盤強化計画による新規需要の開拓、新技術の開発といった事業に加えて、技能者教育や資格制度構築等の人材育成事業にも力を入れておりますが、これらの取り組みは時宜にかなったものであり、その更なる推進に期待しております。また、貴会が昨年初めて中小型造船に関する海外展示会に出展されたことは、新たな分野への積極的な取り組みとして評価し、こうした活動が実を結ぶよう今後とも支援してまいります。
 海事局におきましては、昨年策定した次世代内航海運ビジョンの具体化を推し進めることにより、内航海運の活性化を図るとともに、スーパーエコシップ等の新技術の開発、実用化を推進し、また造船業の技能伝承と「ものづくり」高度化への支援を行う等、中小型造船業の発展に貢献できるよう努力してまいります。
 転換期にあたるこの1年間の取り組みが、後年確実に実を結ぶよう努力していきたいと改めて思う次第です。
 最後に、貴会並びに会員の皆様方が益々活躍され、一層の飛躍が出来ることをお祈り申し上げて、新年の挨拶とさせていただきます。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION