ロイド統計によると、2001年度フランス造船業の竣工量は358,132総トン／21隻（前年GT比77％増／9隻減）の世界9位となっている。他の欧州造船諸国の例に見られるように、フランスの造船各社も、90年代後半に入りクルーズ船・Ro／Roフェリーなどの高付加価値船建造に市場での方向転換を図り、厳しさの増す造船業界での生き残りをかけてきている。

　ご存知のとおり、クルーズ船市場の他にフランスが得意とするLNG船市場は、現在、韓国造船業がその主導権を握りつつあり、造船助成金の再導入も含め議論が進められている。

　当事務所では、フランス造船工業会から最近発行された、“LA CONSTRUCTION NAVALE FRANCAISE2001（フランスの造船業）”を入手し、仏主要造船所6社の概要をまとめ6回にわたりお届けいたします。

　初回は、アングロ・フランク総合エンジニアリンググループのAlstomグループの子会社で数々の豪華クルーズ船を手がける「アトランティック造船所」。同社は、液体ガス輸送船（LNGタンカー）の開発に他社に先駆け取り組み、世界スタンダードを確立したことでも有名なフランス最大かつ世界屈指の造船所である。

　

　

従業員数：4,800名

工場：B.P.400 F44608 SAINT-NAZAIRE CEDEX

TEL：02 51 10 91 00／FAX：02 51 10 97 97

クレーン能力：750T,255T

ドライドック：470m×68m、415m×70m

艤装ドック：450m×95m

艤装埠頭：1,250m

面積：108ha

屋根付き部分の面積：22ha

　アトランティック造船所はAlstomのマリーン部門の子会社で、フランス最大の造船所。

　70年代は世界で最も有力な石油タンカー建造会社であったが、80年代には高付加価値ハイテク船、主に大型客船と液体ガス輸送船（LNGタンカー）の建造に方向転換した。

　1985年以来、同造船所は世界の受注量の20％に値する34隻の大型客船を受注。

　1997年末、同造船所は以下の二大目標を達成するため、“CAP21”プログラムを打ち上げた：

・建造コストの約30％削減

・年間4〜5隻の引渡しを目指し、生産性拡大

　“CAP21”プログラムの成果は、如実に手持ち工事量に現れており、ルネッサンスクルーズ、セレブリティクルーズ向けクルーズ船の連続建造のほか、2000年11月には、大西洋を横断する史上最大規模の客船「クイーンメアリー2世号（QM2）」の受注を獲得した。この客船の総トン数は約15万トンで、長さは345メートルに及ぶ。