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添付資料4 訪問先調査結果
I. Sドック(修繕専業)
1. 艤装関連組織
 工事を直接担当する現場組織は、造船部と造機部に分かれているが、塗装だけ、工務部で所掌されている。
 
2. 艤装関係職種別技能者数
表1.1 職種別技能者数(S ドック)
職種 人員 協力会社数 発注形式 管理物量 現在の課題
本工 協力工 技量低下 人員確保 管理能力
塗装 0 20 20 2 人工提供 工程表及び作業指示書で規定    
船具 12 0 12 0      
甲板仕上げ 11 0 11 0        
木工 3 0 3 0      
保温・防熱 3 3 6 1 材工込一括    
左官 0 3 3 1 材工込一括    
配管 10 13 23 3 人工提供    
機械加工 2 1 3 1 人工提供    
機関仕上げ 37 12 49 3 人工提供      
電気 8 2 10 1 人工提供材工込一括      
圧力テスト・給水 10 0 10 0        
掃除 5 15 20 1 人工提供      
合計 101 69 170 13  
 
3. 職種別作業内容
○塗装
・塗料は、90%以上が船主持ち
○船具
・主な業務内容は、シーチェスト開放、亜鉛版(防食)取替え、入出渠・離接岸・曳船操船。
・ワイヤスプライス(加工)は外注。
○機関仕上げ:一番難しい仕事
・ターボチャージャ、減速機の開放作業は、協力工を含め経験を積んだベテラン技能者でないと扱わせない。
○電気
・レーダ換装の場合は、途中の配線は造船所でするが、最後の結線は船主が手配したメーカがやる。
○多能化
・多能工、複合職が理想。電気と機械を兼ね備えるまでは要求しないが、この方向で進んでいる。
 
4. 外注政策と発注形式
・船主の満足度をあげるには「作業者の責任感が重要」との考えから、本工重視政策をとっている。これは、昨今の新造船中心造船所が外注比率を上げているのと対照的である。
・現在の約200対100の社内外比率は、しかし、当面大きく変わることはない。
・構内請負方式:完全請負と時間請負の2種。
・契約時の提示資料、管理物量:仕様書と日程表。
→ 図面を提供するケースはまれ(居室の資格変更時に配置図を提供することあり)
→ AF塗料は、納入業者が面積を調べ、膜厚とロスを加味して所要量を算出。算出した数値をもとに必要缶数を配置して、塗りきり。塗りきれば所定の膜厚になる。品質は、船主ともども塗料メーカがチェック。塗料メーカは、指導を含め工事期間中、必ずやってきてチェックする。
・契約条件:納期、品質罰則事項は設けてあるが、現実には適用されることはめったにない。
 
5. 雇用環境
・新卒採用:H13度は大卒1名、高専2名、高卒4名。H14度は高卒7名。
・今年に入って配管仕事が多く、スポット工を常駐させている。今年が特殊かどうかは分からないが、技量的には、かつてと比べるとこじんまりしているとのこと。
・本工の定着率は良い。大卒は100%定着。かつては高卒で4〜5年しかもたなかった。同業者協力して山口県まで共同で求人案内を配っていることも功を奏している。
→ 独身寮などの厚生施設の充実も効果がある。
→ 若い人は、余り口すっぱく注意するのは気に食わない。定着率をあげるために工夫したことは1年間の時間外、休日出勤の免除。要は、働くことになれさせることに集中させる施策をとった。
 
6. 技能レベルと必要資格
(1)技能レベル
・レベル:おおむねA、B、Cの3種類にレベル分けしている。
・作業はA〜C各レベルの人の組み合わせ、チームワークで行う。Aランクの人だけだと経営として成り立たない。レベルによる単価差を補うだけの生産性向上は望めない。
→ 現在の枠組みを外し、他社との取引、時間内にすませた場合の早あがり自由制などを認めない限り、能率を上げたり、教育訓練でレベルをあげる必然性はない。
・技量低下;現在は余り心配していないが、将来は現図、撓鉄で不安あり。若い連中を勉強させておかないといけないのではないか。
・新造船の技能者は「単一技能」(例;溶接だけ)でいいが、修繕の場合は「多能」が要求される。
(2)塗装
・最も技量を要求される箇所:タンク内。
∵ 照明不完全で姿勢が自由にならないため、メクラで塗装するのに近い。
(3)配管
・新造船の配管工は、修繕にはなかなか使えない。配管をバラスまでの段取りが問題。
・毎年新卒1人を配管に配属。図面(系統図)が読める要あり。ただし、適性があるかどうかなかなか見極められない。
・配管工は、現場型とりができることが前提。一品図を作っている暇はない。
(4)必要資格
・ボイラー国家資格を取得している技師も技能職もいる。
・舶用機関整備士は、第1工作のメンバは全員、取得済み。
・機関仕上げ:フォーク、床上クレーン操作、ガス、溶接。スタッフ、技能者とも常識として保有。
・資格取得は自習であるが、受験費用は会社負担。
・士気高揚策:1級をとった場合は、金一封を支給。
7. 教育訓練
・新卒者:入社時、因島技術センターに派遣して集中教育。ガス、溶接、配管など各種基礎技能訓練を施す。訓練期間は高卒で3ヶ月、大卒で1ヶ月。
・塗装:メーカに派遣して教育したことあり。現在は行っていない。施設、被塗装物(材料)の問題あり、訓練が難しい。
・船具:技能伝承を考慮し、専門教育を考えざるをえない時期にきている。
・機関仕上げ:棒心が後継者を育てないと、その企業が存続できないため、相応の心構えをもって育成している。
・電気:航海計器等は、メーカの指導員が指導。2〜3船経験をつんだら後は、実地経験。
・配管:後輩教育の要領
*最初は材料、フランジ、パッキングの種類など基礎教授。
*現物が目の前にあるので、図面は余り使用しない。
*失敗例をメモっておいて、それを教育に使うことはしていない。
*本船クルーでできなかったことが、修繕にまわってくるので、相応の技術力を要求される。
*1人前になるまで約2.5年。
・他社技能者の教育訓練:現実問題として忙しいときには受け入れる余裕はない。
 
8. 工事遂行上の課題
・質より先に、人員確保が大きな課題。
 
9. 外国人労働者
・本工、協力工ともいない。掃除に一部入れたことあり。単価差が大きくなれば「考えざるを得なくなるかもしれない」。
 
10. 雇用流動化に対する考え
・必要なときに、必要な技量の人を、必要人数だけ集められるのであれば、流動化は歓迎。
・しかし、現実問題として、必要な技能を備えた技能者がいつでもいるとは限らないので、若年者をいれて養成するしかない。
・大手造船所からの人材受け入れは、「人材次第」(人となりと技量)。
 
以上







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