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第3章 船殻構造の設計
 
 この章が本学習指導書の本論である。船殻設計の手順、鋼構造の組み方、各部構造の設計について、構造基準、船体強度との関連に注意しながら学ぶことにする。とくに、各部構造の設計は、船体各所にわたる局部強度の問題として、その設計方針を説明してある。なお、構造設計は強度だけ考えれば十分なわけではなく、一般配置との関係(3.5)、工作との関係(3.6)にも注意しなければならない。
 
 指導書第3.1図(構造寸法決定手順)については、指導書P.61〜P.62の説明をよく読むこと。
 
 平板の座屈応力を計算する公式を次に示す。
(1)等分布圧縮荷重を受ける長方形板(第12図)
 座屈限界応力(圧縮座屈)
 
 
 
第12図等分布圧縮荷重を受ける長方形板(第12図)
 
 ただし、t=板厚、b=板幅、k=係数(周辺支持条件および縦横比a/bによる係数で、これを第2表に示す。)
 Eはヤング係数、Vはポアソン比という数で、鋼材では約0.3である。
 
第2表 圧縮座屈に対するkの値
(拡大画面:35KB)
 
 
(2)せん断荷重を受ける長方形板(第13図)
 座屈限界応力(せん断座屈)
 
 ただし、記号は(1)と同様で、この場合の係数kの値を第3表に示す。
 
 
第13図 せん断荷重を受ける長方形板
 
 
第3表 せん断座屈に対するkの値
(拡大画面:28KB)
 
 
 平板が水圧のような等分布荷重を受ける場合の応力およびたわみを計算する公式を次に示す。
 第14図のように長辺a、短辺b、板厚t、ヤング係数Eなる長方形板が一様分布荷重Pを受ける場合の最大応力およびたわみは、
 最大応力
 
 最大たわみ
 
 これらの式中で与えられる係数α1、α2、βは周辺支持条件および縦横比a/bによるもので、その数値を第4表に示す。
 
第14図 等分布荷重を受ける長方形板
 
 
第4表 最大応力およびたわみの係数
(拡大画面:45KB)
 
 
 補強数の座屈応力、横荷重を受ける場合のたわみおよび応力の計算は平板の場合より複雑になるが、種々の設計図表があるので、必要に応じてそれらを利用するとよい。(たとえば関西造船協会編造船設計便覧、海分堂を参照のこと。)
 
 長さlの柱が圧縮荷重を受けるときの座屈応力を計算する公式として次のものがある。
(1)オイラーの公式
 
 ただし、αは柱の両端の支え方によって決まる係数で、
(a)両端支持α=1
(b)一端自由他端固定α=1/4
(c)一端支持他端固定α=2
(d)両端固定α=4
(指導書P.76第3.2.1 図参照)
 Eは材料のヤング係数、l/kは細長比(指導書P.76参照)である。
 上式で示されるように、細長比が大きい程座屈応力は低下することになる。細長比に対して座屈応力を表した曲線(第15図参照)をオイラー曲線と呼ぶ。
 
第15図
 
 
(2)ゴールドン・ランキンの公式
 オイラー曲線では、細長比が大きいときは座屈応力は低く、その材料の弾性範囲内にあるが、細長比が小さくなるにつれて、オイラー曲線によれば座屈応力はいくらでも上昇しうることになる。しかし、圧縮応力が降伏応力に達すれば当然破損を生ずるから、短柱の強度は降伏応力で決められることになり、第15図の降伏応力を示す水平線が破損応力の最大値を与えることになる。この直線とオイラー曲線との交点付近、すなわち長柱から短柱に移る細長比に対する座屈応力は、これらの線よりも低いことが実験的に求められている。したがって、このような中位の細長比に対する柱の座屈強度を与える実験式が数多く提案されているが、よく使われるものとして次のゴールドン・ラシキンの公式がある。(第15図参照)
 
 
 ただし、αは、オイラーの公式のαと同一の係数(両端の支え方によって決まる。)、αは材料の性質のみによって決まる係数、Smの値としては、圧延鋼材、鍛鋼のような延性材料では圧縮降伏点を採用し、鋳鉄のようなもろい材料では圧縮極限強さを採用する。これらの係数の値を第5表に示す。
 
第5表 ゴールドン・ランキンの公式の係数の表
材料 Sm(kgf/cm2 a l/kの範囲※ α
軟鋼 3,400 1.33×10-4 90以下 オイラーの公式の係数αと同一
錬鉄 2,500 1.11×10-4 110以下
鋳鉄 5,600 6.25×10-4 80以下
硬鋼 4,900 2.00×10-4 85以下
木材 500 13.30×10-4 60以下
※表記のl/kの値以上においても、l/k=200位までは、使用しても差し支えない。ただし、この場合は実際の座屈応力よりも安全側に出る。







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