1. 本学習指導書の目的
船殻設評とは、船殻構造方式を定め、各部材の寸法を求め、これを図面に書き示すことである。船殻設計の最終目標はよい構造図面を画くことにあるが、よい構造図とは、強度・剛性を満足し、軽量で工作性のよい船殻構造をわかり易く図示したものである。このために基礎となるのが船体強度である。
本学習指導書は、船体強度理論のあらましを説明し、これと船体構造との関係を保ちながら、構造図面の画き方を解説したものである。
2. 学習上の注意
指導書は順を追って勉強していくのがよい。最初よくわからないところは、マークを付けておいて先に進み、指導書を一通り終えた後で振り返ってみるとよい。各章末の練習間題は復習のため重要であるので、ぜひ自力でやってみたうえで、巻末の解答と照合してもらいたい。
指導書の内容の中で、とくに肝心な箇所、わかりにくいと思われる箇所の補充説明などを、各章ごとにアサイメントして以下に示す。指導書と併用して、学習の参考にしてほしい。
この章では、船殻設計の基礎となる事項について全般的に説明してある。この章は指導書を一通り終えてからもう一度よく読み直すとよい。この中で、構造基準、造船用鋼材については基礎知識として重要であるので、この程度のことは常識化しておくとよい。
船体は水に浮くためのもので、浮体構造である。したがって、外板によって水の浸入をくいとめ、骨組でその圧力を支える。すなわちカラ(殻)である。この意味で船体のことを船殻という。
補講(船体を構成する要素)
いま第1図のような平板の4周を支え、その板に力を加えると板はたわみ、変形する。そこで、この板に第2図(a)のように骨部材を取り付けると剛性が増し、たわみdはぐっと少なくなる。さらに、この部材に直交する部材を取り付けると(第2図(b))この板の剛性はますます大になる。(これを平板の防撓擁という。指導書P.64鋼板の防撓を参照のこと。)このような部材を一般に防撓材(スチフナ)という。
このように板(皮)と防撓材(骨)との組合せとなっている構造物を一般にパネルと呼ぶ。
船体はパネルをいろいろ組み合わせて出来上がっている。船の場合、皮となるものは鋼板であり、骨となるものは形鋼または鋼板から切り出して組み立てた第3図に示すようなものである。
第1図
第2図
第3図
船体の場合、骨の入れ方は第2図(b)のように同じ大きさの骨が縦横とも同じ間隔に入っているのではなくて、第4図に示すように一方向に密に入れ、それと直角方向は疎に入れている。そして疎の方の骨が大きいのが普通である。船体の場合、船の長さ方向の骨を密にし、横方向を疎に配置した構造と、逆に横方向を密にし、長さ方向を疎にする構造とがある。前者の場合を縦式構造、後者を横式構造と呼んでいる。(船殻構造方式については指導書P.57〜P.60を参照のこと。)
第4図
第1.1図において、中央横断面図、鋼材構造図、外板展開図・船尾骨材および舵の4つを構造設計における基本図という。
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