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2.2.1 曲加工の要否
 曲げ形状部材の型定規作成に当たって、まず判断すべきは、曲加工の必要性である。
 例えば、Fc.PLの取り付くウェブ形状がなだらかな曲線であるとか、またラウンドシヤ・ラウンドキャンバーを持つ曲面の甲板であるとか、現図の線や面の定義だけで、曲加工とはしていない。曲加工せずとも取り付け組立に支障がないからである。
 このような部材を撓鉄工程に送り込み、また無為に運び出すことはない。
 これら曲げ加工をパスする曲がり形状部材の曲げを「自然撓み」と言っている。自重+若干の取付負荷で所要形状になじむのが、その条件である。
 自然撓みについての公表された研究は、外板の自重によるブロック組立治具への撓みが解かれたことがあるくらいで、あとは各造船所の内部資料に止まっているようである。筆者は、かつて簡単な梁理論の応用で現図内規を作り実施していたが、いずこもそんなものであろうか。
 もしまだ型定規作成者の恣意に任されているのなら、この際なんらかの基準を決められるとよい。曲がりなりにでも決めておきさえすれば、あとのフィードバックにより改善が進められる。また、よしんば判定計算が複雑になっても、数値現図システムに内蔵させれば、実用容易となろう。今後の工作法研究の1項目として期待しておきたい。
 
 自然撓みに類するが、組立工程での平板板継後のKL(折れ)入れがある。直線キャンバーの甲板ブロックで、キャンバー折れがブロック内にある場合、部材加工でKLを入れると、そのため平板自動溶接が適用できない。むしろ、板継仕上げマーキンで出したKL線上を、半自動台車に乗せた線状加熱トーチで炙る方が得策・・・となる場合である。
 この方法を「アセンブリKL」と呼んでいる。これも型定規作成にあって、確認しておくことがらの一つである。
 
2.2.2 曲加工標準治具
 曲加工標準化の狙いは、曲型不要、作業効率化、加工精度向上にある。型定規への指示表現も標準名の記載で済む。
●Fc.PL等の標準R曲げ押し切り型
 造船所の建造船種・船型に見合う設計標準を決め、雌雄型での一発プレスで成形できるようにするのである。半自動切断型とも合わせる。
●BKT類の標準フランジ折治具
 フランジの種類を設計標準で決め、プレスに挿入すれば、位置が決まるストッパー付き折治具にする。折位置マーキンが不要になり、折るとき裏表とすれば、左右両舷の取材が同一にできる。[図2.2.4 フランジ折り要領]に、フランジ幅100標準のマーキン例とストッパー概念を示す。
●標準R曲型
 上記押し切り型にするより大きいR、頻度の少ないRあたりも標準化して、全船共通曲型として撓鉄場に常備しておく。
 
図2.2.4 フランジ折り要領
 
2.2.3 曲加工部材のマーキン面
 曲加工だけで考えると上面曲げ/折れとなるのがよいが、ここは部品完成仕上げまでの工程手順を考え合わせてマーキン面を決めたい。曲げ作業には直ぐ取り掛かれるとしても、曲後に反転しての再マーキン作業が発生するようでは、そこまでを含む撓鉄工程にとって好ましくないからである。
 やはり取付工程優先スティフナーサイドをマーキン面に選ぶのが原則である。
 
2.2.4 ロールライン割り付け
 緩やかな縦曲げに比較して横曲げのきつい一般外板では、まずプレスまたはローラーで概略の横曲げ癖を付けて、それから更なるプレス補正、または線状加熱で、曲加工を仕上げると効率的である。この最初のプレスで押す線、またはローラーに噛ませる線を、ロールラインといっている。この曲り外板を円筒または円錐(切口が円でなくてもよいから、詳しくは柱面および錐面)で近似するときの母線に相当する。
 
 曲り外板のロールラインの求め方:[図2.2.5 ロールライン]参照。
 曲面の平行断面:ここでは曲り外板の正面線図の各フレーム線Ciに、相互に平行な直線Tiを接しさせ、それらの接点Riを結ぶとロールラインになる。
 平行な直線の角度(方向)を代えると、また違うロールラインが求まってくる。
 平捩じり外板面、横曲りが凸から凹に変わる外板面などには、このようなロールラインは明確には当てはまらない。
 普通の一様曲りの外板では、ロールラインを各フレーム線に1本以上はいるように求めて、プレス曲げでは、あと中間は適当な本数割り込みとしている。
 
図2.2.5 ロールライン
 
 このロールラインの位置出しと割り込みを、どの工程でやるか。
 位置の求め方は、上記は正面線図で説明したが、正面線図の代わりに外板曲型があれば重ねて見ることで同様に当たりが付けられる。
 つまり現図工程でも撓鉄工程でも求めることができるのである。
 
演習題:−
 撓鉄加工のための
(1)ロールラインの位置出しと
(2)プレス押し線の割り込みは、
現図・マーキン・撓鉄、いずれの工程でやるべきか。
  
 
2.2.5 「平曲げ」と、「切出し」
 圧延された形鋼フレームの代わりにウェブ板とFc.PLで組み立てたものを、ビルトアップフレームといい、
●相当する形鋼サイズがない場合、
●意図的に(例えばウェブ深さが押さえられて必要な剛性を得る)設計をする場合、
●曲面付となるが曲加工上で問題がある場合、
などに用いられる。
 この曲り部材の製法には3種あり、それに応じて型定規の作成の仕方も変わる。
 これを[図2.2.6 ビルトアップフレームの曲げ]で説明しよう。
1) 
図でAのように直線形状に取材して、そのまま直線材として組立、その直ビルトアップを、形鋼ベンダーなどで図のC(完成形状)のように曲げる。曲げ中性軸は、ビルトアップ断面と曲げ加工法により決まる。取材歩留まりはよく、組立も容易であるが、曲げ加工量は多い。
2) 
取材は上記1)と同じだが、組み立てる前に夫々を別々に曲げる。ウェブ材は、板としての中性軸で図のBのように平曲げされる。
組立は1)よりやや面倒だが、逆に曲げ加工量は2材に別れるものの総量でも1)より少ない。
3) 
ウェブをA形状で取材せず、初めからBの形状で切り出すのである。当然に材料歩留まりは悪くなるが、曲げ加工はFc.PLだけとなる。組立は上記2)と全く同じである。曲り量が大きいと、この3)の方法でしか製造できない。
 
図2.2.6 ビルトアップフレームの曲げ
 
 一般に曲り量に応じて、1)→2)→3)と選択されるが、その条件や範囲は各造船所により異なるはずである。この問題も直接に突き当たる当事者の現図工程が主導して取り決めておくべきだろう。特に1)2)と3)では材料発注と食い違ってはならない。







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