3.2.2.4 テクニカルディスカッション(technical discussion)
(1)船舶プロダクトモデル
STEPの狙いは、製品の生涯を通してコンピュータが解釈可能な中立のフォーマットで明確に表現するプロダクトモデルを開発する機能と方法を支援することである。船の複雑さを考慮して、機能の範囲によって幾つかのAPへの分割が認められた。その概略を図3.2.2-4に示す。
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図3.2.2-4 Ship Product Model
(2)Ship Common Model(SCM)
全ての船舶APのための共通フレームワークとモデリング基盤を定義するもので、船舶AP間でインターオペラビリティを確実にするために開発された。SCMは船舶AP間において、ARMの統合と全般的な整合性に貢献することを目的とする。SCMは、AP Development Guidelines for Shipbuilding(AP Guide Ship)で文書化され、以下のことが記述されている。
- Building Block approach
- Modelling guidelines
- Ship Common Model
(3)モデリングガイドライン
造船分野のデータモデリングのために、EXPRESSをどのように使うかに付いて記述した物である。船舶APのモデリング作業は、APのUoFの定義に使われるEXPRESS言語による仕様であるビルディングブロック(BB)の形式で行われる。APはUoFの定義に使われる。UoFは1つあるいは複数のBBを含むことが出きる。BBは、他のBB要素のためにインターフェースを提供しているインポートスキーマ、他のBBが使うためのモデルスキーマ要素を利用可能にするエクスポートスキーマ、新しい要素を定義しているモデルスキーマで構成される。
現在のガイドライン(AP Guide Ship)は、以下のエリアをカバーする。
- Building Block name (BBの名前)
- Size of Building Block (BBのサイズ)
- Existing Building Blocks (既存のBB)
- Commenting Building Blocks (BBのコメント)
- Restrictions on usage of EXPRESS(EXPRESS使用に対する制約)
- Reference STEP resources(STEPリソースの参照)
- Cardinality constraints across Building Blocks (BB間の基本的な制約)
- Reference functions (functionの参照)
- Reference instances across Application Protocols(APをまたぐインスタンスの参照)
- Importing Building Blocks into Application Protocols (APへのBBのインポート)
- Compiling Building Blocks (BBの編集)
(4)モデリングフレームワーク
モデリングフレームワークは、SCMの一部で、物を関係づける方法、特性を定義する方法と表現する方法の一般的な概念を提供する。図3.2.2-5にモデリングフレームワークを図示する。
(5)ドメインモデル
ドメインモデルの目的は、再宣言を使って属性関係を制限すると共に、フレームワークをモデル化する主な構成概念の下に新しい層を作ることである。
図3.2.2-5 モデリングフレームワーク
(6)Common Utilities
共通ユーティリティは船舶APに特有のEXPRESSで表現されたビルディングブロックで、異なる船舶APで一般的に使われる。現在利用できる共通ユーティリティは以下の通り。
- Ship general characteristics(船舶の一般的な特性)
- Configuration management(コンフィギュレーションマネージメント)
- Location concepts(場所概念;グローバル/ローカル座標系、間隔格子)
- Basic geometry and topology(基礎的な幾何と位相)
- Moulded form points(モールド形状の点)
- Moulded form lines(モールド形状の線)
- Moulded form surfaces(モールド形状の面)
- Ships(船)
- Materials(材料)
- Features(特徴)
- Units(単位)
- External reference/external instance reference(外部参照と外部インスタンス参照)
3.2.2.5 テストケースシナリオ(test case scenario)
目的
テストケースは5種類のケースが下記のように想定されており、順を追ってtranslation能力が複雑になっていくように書かれている。しかし本来のテストの趣旨と無関係な大きなデータ・ファイルでtranslatorに負荷を与えることは行われておらず、ソフトウエア開発者に個々の形態について着眼できるように意図し、作成されている。
テスト方法
テスト対象とした船はUS空軍に配備されているTWRという船で、既に主要寸法や図面などが公開されている。図3.2.2-6にその側面図を示す。
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図3.2.2.-6 TWR側面図
(1)Test Case 1:シンプルなバルクヘッド幾何の変換
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・テスト目的 |
translatorの基本的動作の検証。幾何形状は単純明白で曖昧な幾何形状はなく、最小限の製品情報の交換とする。 |
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・交換項目 |
エッジが直線で表現された平面の単純なFR12番のバルクヘッド。 |
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・適合性クラス |
適合性クラス_4(面表現) |
(2)TEST Case 2:船体型状の変換
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・テスト目的 |
船の基本的特徴を表現しているB-スプラインカーブで表現されたより大きな幾何形状のデータ交換。幾何形状は単純明白で曖昧な幾何形状はない。 |
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・交換項目 |
造船所や船級協会が必要とする船の基本的特徴を表現している船体型状。 |
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・適合性クラス |
適合性クラス_4(面表現) |
(3)TEST Case 3:フレームとフレームテーブルの変換
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・テスト目的 |
フレームと、フレームとの関係を定義したフレームテーブルの交換。 |
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・交換項目 |
フレームテーブルとTest Case 1で用いたFR12のバルクヘッド |
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・適合性クラス |
適合性クラス_4(面表現) |
(4)TEST Case 4:内部位相と外部参照の変換
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・テスト目的 |
一組のモールド形状の中における、外部参照と境界関係の交換。 |
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・交換項目 |
メインデッキ、Test Case 2で交換した船体形状への外部参照とFR16のバルクヘッド。 |
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・適合性クラス |
適合性クラス_4(面表現) |
(5)TEST Case 5:モールド形状の変換
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・テスト目的 |
船を定義する主だったモールド形状の交換。 |
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・交換項目 |
船体形状、メインデッキ、プラットフォーム、と主だった縦及び横隔壁から構成される。 |
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・適合性クラス |
適合性クラス_4(面表現) |
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