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3. SHIP APsの概要
 SHIP APsの規格開発作業は当初予定に比べ此れまで大幅な遅れとなっていたが、ここ1〜2年欧米を中心とした積極的な活動により、AP216を始めとして、AP215、AP218、及びAP2272ndEdition等CDフェーズからDISフェーズ、更にはISフェーズヘと規格開発が進められて来ている。従って、日本でもこれらの状況の進展に応じて、現実的な課題として、実装面での評価・検討が必要な時期になりつつある。
 
3.1 SHIP APsの構成
 船用STEP APの全体構成は、図3.1に示す通りである。船舶の製品モデルを表現するためには図に示されるような種々のAPが必要であるとされるが、先のソウル会議にてAP226及び234がCancelとなり、AP226はAP2272ndEditionに組み込む方針が決定、AP234はAP2272ndEdition及びAP239(PLCS)への組み込みが検討されることになった。現在は下記4種類のAPが審議されている。
 これら各APの概要については、3.2以降に記述する。
 
(1)AP215:Ship Arrangements (船体区画配置情報)
(2)AP216:Ship Moulded Forms (船型情報)
(3)AP218:Ship Structures (船殻構造情報)
(4)AP2272ndEdition:Plant Spatial Configuration(Plant/Ship配管情報)
 
 船舶の製品モデルには、この他にも、通信、ナビゲーション、戦闘システム、艤装、空調、電装、等を考える必要があるとされている。ただし、船舶は、最近まで6種類あったAPを他の関係するAPと統合するなどして、現在4種類のAPを審議中であり、しかもいずれも当初予定した審議日程に大幅な遅れを生じさせている現状から、APの種類を増やすことを考える以前に、少なくともまず優先したAPの開発・制定を急ぐべきであろう。なお、現在上記APsに加え、電気関係のAP(AP212)並びに家具関係のAP(AP236)の検討が進められている。
 
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図3.1 Ship Product Application Protocols
 
3.2 各APの概要
 各APの概要は次の通りである。
 
3.2.1 AP215:Ship Arrangements
 船の機能設計から生産までのライフサイクルの中で、船体の内部分割を表現する製品データを対象としており、非損傷時および損傷時の復原性、タンク容積、縦強度などの諸計算や重量解析、干渉解析、HVAC解析、衝突解析などの活動をサポートしている。取り扱われる情報は区画(貨物倉などの物理的区画、防火区域などの論理的区画)、区画の関係、積載容積や荷重条件、他システムからの要求などである。機能としては区画(Compartments)、区画設計定義(Compartment Design Definition)、区画特性(Compartment Property)などのモデルを取り扱う。なお、このAPの概要を図3.2.1-1に示す。
 STEP APではAAM、ARM、AIMの3つのモデルで段階的に定義される。第一段階のAAMは一般配置設計業務の処理と情報の流れ(業務フロー)を定義し、AP215がその業務のどの部分を対象としているかを利用者に示す。第二段階のARMは一般配置設計業務の製品モデルを利用者が理解できる単位で定義し示す。第三段階のAIMは計算機システムで処理するための厳密に定義されたモデルである。従って実務上利用者がフォローできるのは、AAM、ARMまでで、AIMはSTEP製品モデル表現を熟知したシステム部門開発者あるいはソフトウェアベンダーである。
 ここで「製品モデル」の用語を説明しておかなければならない。「製品モデル」とは業務対象の製品に関する技術情報全体のデータ表現で、単なるデータの羅列ではなく、そのデータに技術的意味ももたせた構造とすることによって、業務途中のデータや抽象的な概念を表現し、業務プロセスを管理支援することができる製品データの表現構造である。
 STEPの製品モデル表現は、
・製品の企画から廃棄までの製品ライフサイクル全体にかかわる製品データを表現する。
・製品データの基準表現(AP215製品データ表現モデル)とソフトウェアシステムとしての実装(Part21、STEP交換ファイル形式)の規格とを分離することによってファイルによる交換のみでなく、データベースヘのアクセスインターフェイスの規格化も図る。
ことを目的としている。AP215の概要を示した図3.2.1-1中「適用業務」として囲った項目はAAMで定義された一般配置設計業務フローで発生する作業である。AAMの詳細については別添資料1:AP215調査解析報告書の4章を参照されたい。
 一般配置設計業務で発生する作業とAP215で規定された製品データモデル表現(アプリケーションオブジェクト:AOおよび機能単位:UoF)の主なものとの対応を表3.2.1-1に示す。各AOおよびUoFの詳細については別添資料1:AP215調査解析報告書の5章を参照されたい。表は例えば、A12221区画定義作業で生成、変更される製品データがprincipal_characteristics(AO)などの表現形式を用いて記述されることを意味している。具体的には作業者がAOの表現形式を参照し実際のデータをPart21形式のSTEP交換ファイルのフォーマットで記述していくが、この作業は当然人力では不可能であるためインターフェイスプログラムやデータベースなどのソフトウェアシステムの支援が必要となる。このシステムの開発は業務内容に熟知した設計従事者とSTEP製品モデル表現を熟知したシステム部門開発者あるいはソフトウェアベンダーの共同作業で行われることになる。このようなソフトウェアシステムが完備した暁における業務フローを図3.2.1-2に示す。AP215で示されたこのAAMはあくまでも理想化された1モデルであり、システム開発に当たっては各社独自の業務フローすなわちビジネスモデルが存在し、実際のフローは図3.2.1-2で示したように単純ではないと思われる。複雑な実業務に対してどのように製品モデルを適用していくかは実務上重要な問題であるが、STEP製品モデルを核として効率的、発展的なビジネスモデルを一旦組み上げてしまえば、インターネット技術に代表されるIT技術と相まって計り知れないビジネスチャンスが生まれるものと期待される。STEP規格の適用は実務者による規格の理解と同時に現状の業務形態を将来を見据えたあるべき姿に改変する視点が必要である。







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