ISO/TC 8 Business Plan
Date:2003−3−30
Version:Draft#3
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ビジネスプラン(仮訳版)
ISO/TC 8
(船舶及び海洋技術)
1 緒言
1.1 ISO専門委員会及びビジネスプラン
ビジネスプランの目的とするところは、(1)ISO作業計画を、明らかにされている事業環境のニーズと傾向とに合わせることと、(2)各ISO/TCに対し、各種プロジェクト間の優先順位をつけるとともに、国際規格の利用性から見て予測される利益を拾い出し、かつ、規格作成を通じプロジェクトのための資源(人的及び物的)を適当に確保させることと、である。
ビジネスプランの考えを実施する場合、関係各位はその役割により、国際的規格化作業を全体に有効ならしめるため、大きな貢献をすることとなろう。
1.2 国際規格の作成とISOの役割り
国際規格作成の第一目標は、貿易に対する技術上の障壁排除を通し、製品及び役務の交換に便宜をもたらすことである。
3つの団体が、国際規格の立案、作成及び採択の責任を負っている。この場合において、ISO(国際標準化機構)は、IEC(国際電気標準会議)の責任である電気技術部門、及び大巾にITU(国際電気通信連合)の責任である通信技術の大部分を除く、全分野につきその責任を負うものである。
ISOは、法的組織であり、約130箇国の国家規格団体(NSB)(国際レベルで社会と経済の利益を代表する組織)がそのメンバーとなっており、スイスのジュネーブに拠を構える中央事務局が事務の中枢となっている。
ISOで作成される主要なものは、国際規格である。
国際規格は、全世界的に開放され、かつ透明であるということと、コンセンサスが得られていて技術的一貫性が得られていることという重要な原則に立っている。これら原則は、一般の意見の段階(ISOの技術上の質問)に根を下ろしていて、すべての関係者を代表するISO専門委員会(ISO/TC)での規格育成を通じて安全に保護されている。ISO及びその専門委員会はまた、市場のニーズに沿うべく、ISO技術仕様書(ISO/TS)、ISO一般利用可能仕様書(ISO/PAS)及びISO技術報告書(ISO/TR)を提供することもできる。これらISOの制作物は、低位のコンセンサスの産物であり、そのため国際規格と同じ地位のものとは言えない。
ISOはまた、「諸団体の活動」と、「ISO及びその国家メンバーが代表となって行う正式な規格化の過程」との間の合間を取り持つ狙いを有する産物として業界技術協定(ITA)を提供する。重大な特徴は、ITAがISOの検討会及びフォーラム(直接の利害を有する参加者のみで構成するもの)によって作成されていることであり、そのため国際規格それ自身とは調和されてはいない。
2 ISO/TCの事業環境
2.1 事業環境の説明
このセクションは、ISO/TC 8の主要な関係先と、市場のニーズについて記述する。関係する業界は、国際海運及び造船であり、そこには造船者、船舶修理者、船主、船舶運航者及び海事関係供給者がある。
関係する主たる政府組織は、155の加盟国で成り立つ国際海事機関(IMO)であって、当該機関は、海事産業が、海上安全、航海の能率並びに海洋汚染の防止及び管理に係るできるだけ最高の基準を整備するため要件及び規則を設定する。
IMOの主要な国際条約は、SOLAS(海上人命安全条約)、MARPOL(船舶からの汚染の防止条約)及びSTCW(船員訓練、資格証明、当直基準条約)である。このように、我々の関係筋としては、一方においては、要件を取りまとめ、規則を制定する責任にある規則関係組織体であり、また他方においては、全世界的海事産業である。
「求められている全世界レベルの安全性と環境保護を達成すること」と、「海事産業が新規の技術を適用するのに十分な自由度をもって平等な競争条件(不公平のない活躍場所)を保持すること」との間において、「よく均衡のとれた最良点」を達成するにはどうしたらよいのであろうか。
我々は、「よく均衡のとれた最良点」を達成するにあたり重要なことは、例のI(Iを頭文字とするもの)の存在を認識することにあると考える。
このIは、「integration」(統合)の中にある。ISO/TC 8の戦略と目的は、このビジネスプランの「戦略と目的」(セクション6)にて議論を行ったIMOと産業(Industry)との間のかけ橋の役目となることである(IMOとIndustryはIが共通してある)。この戦略の実施を効果的とするためには、IMOとISOとの間に統合(結びつき)のための「I」を必要とする。
したがって、我々の市場の要求に合うため、我々は、IMO、ISO、Industry(産業界)及びIntegration(統合)という頭文字にIを共有するしっかりした主柱に乗っかった堅固な屋根を築き上げた。
IMOとISOとの間の緊密な協調により、「要件」は、その内容を収めた基盤として技術的規格を用いて確立することができよう。両組織の資源(人的及び物的)は限られてはいるが、そのような方法を用いることにより、「最良のもの」により近づくことであろう。
ISO規格の採択に際しては、業界による参加の機会がおおいに提供されるであろうし、また、その採択は、業界自身のため自身により作成される「技術的、自主的、コンセンサスの規格」を要件樹立の過程において検討してもらうためその機会を提供することとなる。
巡航船、コンテナ船、冷蔵船、ロールオン・ロールオフ船、乾ばら積貨物船、液化天然ガス運搬船(LNG船)、液化石油ガス運搬船(LPG船)、タンカー、オフショア・マーケット船(FPSO、FSO及び支援船)その他各種船型があるが、海事産業は、「船型」と「個々の市場各部門」とが複合し、混合した存在である。運航状態は、大洋航行船、短距離海運船及び内陸航行船とあり、多様である。これら船型それぞれは、それに応じた特別の要件があり、国際水域において運行するものは、IMO規則に従わなければならない。
造船についていえば、市場は、「市場の大部分を制するアジアの造船者」、「各種ニッチ・マーケット(すきま市場)にしがみつこうとしている欧州造船者」、及び「今巡航船市場に参入しつつある米国」との間に分別される。
多くの業界におけるように、海事産業である荷送者と造船者双方は、重要な(企業)合併と(企業)買収を行っているところである。
これから数年の間にシングル・ハル・タンカーを廃し、ダブル・ハルに代替するとする要件のため、市場における2つの主要な影響が起こっている。すなわち、(1)かなりの環境への配慮と規制措置を必要とする船舶のスクラップ化、及び(2)代替タンカーの新規建造である。事実、ダブル・ハルの要件は、造船所全体の全世界的能力を超すと考えられる。
安全と環境の規制は、重要性を増しつつあり、より厳しい船級ルール及び検査は、非合法的な国、基準未達の船舶輸送及び沈没への対策として、執行されている。
港のターミナルでは、「より速い船の回転率」と「インターモーダル(異質方式間)の輸送の切れ目のない移行に、より大きな注目が集中していること」とに備えて実質的な変化が現れている。また、新たな高速船型と短海上輸送、連絡船及びメガヨット(巨大ヨット)の増大とに対処する必要性もある。
バラスト水管理、陸側受入施設及び溢出油回収を取り扱うための国際的規格が、実質的に求められている。
以上、国際規格を有益なものとするためには、これらを現在の事業傾向に合わせることが肝要である。世は21世紀に入り、国家間の全世界的海上貿易が、国の経済よりも3倍から4倍速い率で成長を続ける世の中である。我々の目の前で貿易の障壁が倒壊してゆく。
たいていの品物は、その場所でのみの使用のため、1つの社会内で生産されるということはも早やないのである。製品は、アジアで造られる部品を米国にて組み合わせて欧州で市場に出されるということもあり得る。また、我々は起源の場所から辿ってみると、港のターミナルを経て、船内に乗せられ、目的港で降ろされ、最終目的地までは他の輸送方式に移されるという(1つのモードの輸送から別方式のモードへ変わるという)、いわゆる貨物及び補給物のつぎ目なき移行を確保する必要がある。インターモーダル方式は補給チェーンにおける鍵であり、貨物の85%超が国の間を海上輸送方式で処理される。
技術の急速な変化のため、製品のライフ・サイクル(見限られるまでの期間)はより短くなりつつある。船主は、その投資を保護することを欲し、そのため、承認された規格に適合する製品により大きな関心が払われる。国際規格は、新技術と軌を一にして作成しなければならない。
国際規格は、進んだ技術を使うことができるよう、詳細設計よりは、相互互換性と性能とに焦点を合わせたものでなければならない。技術の進歩を適当な時機を選んで製品に織り込んでゆくため、船の設計サイクルは、短くなるであろう。現規格の内容そのものは、新技術が、現在の技術と、ビルディング・ブロック方式のやり方で結合することができるよう、要求される。我々が作成する規格は、高い品質と費用効果のある製品を規定すべく最高のレベルのものでなければならない。
諸規格はまた、安全かつ効果的に、競争価格にて製造され、取り付けられ、使用され、維持管理することのできる製品を規定しなければならない。我々が直面する市場は、IMOの重要な規制要件を受けて環境上及び安全上の考慮に焦点が鋭く絞られている。
「ビジネスの実施面を平坦(差別なし)にしてくれれば、全世界的造船の市場において、我々は、競争力を得ることができように・・・」なる言葉を常に聞くのである。我々が国際規格を調和させない限り、我々は、平坦なビジネスの場(差別なし)での業務を行えず、同等の貿易ができず、市場を解放することができず、また、貿易上の障壁を取り除くことができない。
国際規格の使用だけが、国際海事社会のニーズを真に満足させるものとなろう。
したがって、規格化は、戦略的事業決定であり、単に技術的のものではないことが自明である。
全世界的貿易と全世界的生産との間には強い連係がある。海上運送業のためからいえば、最も有望な成長因子は、生産場所と市場との問の距離を増す「製造の全世界化」である。新興国は、世界の他の地域に輸出する必要があるが、多くは、規格がないか、又は世界貿易志向というよりは国家のお役所主義で固めた規格を有している。当該規格は、古ぼけたものか、局地的であるか、又は方式が不必要に規制的である。
今日の国際規格は、単一の産業又は単一の国に限定された技術文書よりずっとましであるという風に認められている。ISO9000品質管理シリーズは、諸船級協会により採用されており、IMO国際安全管理コードは、ISO9002に基づいているのである。品質と環境の管理システムに係るこれらシリーズの規格に着目してみると、安全と環境の評価の基礎というものがあって、その上に立って提案されるルールの適正評価が行われている。
2.2 事業環境の量的指標
量的指標に関する次の一覧は、ISO/TCの活動を支える上に適当な情報をもたらすための事業環境を説明するものである。
海運及び造船部門における国際貿易に係る金銭的価値($USD)の推定は可能であるが、船種の多様性は、経済的成長又は衰退を決定する上に、よりよい経済上の代替指標(業界側が用いるもの)となり得る。諸要件は、総トン数、必要とする停泊地、コンテナ船用のTEU(コンテナ容量)、冷蔵船における容量としての立方フィート、LPG及びLNG運搬船に係るcbm等について定められる。船令、船の状態等の他の因子は、シングル・ハルのタンカーに対するダブル・ハル・タンカーによる代替の場合と同様に、スクラップ化の市場規模を決める。2005年までに、ばら積み船隊(タンカー及びばら積み船)の約3分の1が入替えを求められよう。
世界の造船所は、これから何年かは、その船台での仕事が予定される。そして船主は残っているものの確保に奔走する。しかし、造船所がどんどん新船を造り出すと、かかる造船所は、10年来の低価格の値段で争うこととなる。一部の政府が実施する各種の補助金は、真のコストをねじ曲げる役をするのである。
造船市場においては、世界の注文の予約は、総トン数で約5千8百万トンである。そのうちアジアが4千2百万トン、欧州が1千3百万トンである。そして3百万トンがその他の地域となる。欧州の注文は、この3年で50%近くも低落した一方、韓国の注文は25%超の増加を示し、中国の注文は、3倍超(330%)となった。
コンテナ輸送業界を襲った合同の動きは、続くであろう。分析家は、2010年までに、わずか5つの全世界的運送業者が生き残るであろうと見ている。理論的には、企業の合体及び提携の上昇は、定期船部門での注文を更に大きく調整することとなろうし、税金の計上を推進したドイツ税法の変更は、投機的不定期船部門の投資を弱めることとなろう。
コンテナ船は、その大きさにおいて(6000TEU以上の範囲において)成長を続けるであろう。ラインホール(ターミナル間移動)船と、より小さな支線用の船(内陸移動のない場合)との間の貨物(特にコンテナ)の移動の役をし、ハブとして機能をすることにより港湾が、ますます輸送移転場所となろうとしているから、コンテナ船の大型化はまた、世界的に港湾への大きな衝撃となろう。コンテナ積みの貨物は、将来はなはだしい増加を来すことが期待され、巨大コンテナ船を用い、主要貿易及び移替え基地としてのハブは、世界の戦略的場所において繁栄するであろう。このことは貨物の移動及び経路として利用する方法を
変更するであろう。
小口分けの海運は、低下するが消失はしない。20世紀の大半、大洋を制覇した船はほんの3、4年前はその数1600から1700であったのが約1300に落ち込み、スクラップ化は、増加し、新船の発注は、減少している。しかし、1千7百万トンの小口分け施設が稼働中であり、多くの荷送者は、現在でもコンテナにうまく入らない大きさの貨物又はコンテナ船で運送するには経済的でない量の貨物を動かしている。
旅行業の面では、新たな目的地は開拓されるし、従来の目的地は改善策を施されるから、巡航海運は栄え、劇的に増大し続けるであろう。この情勢を受けて、レジャー部門は、米・欧双方で成長を続けている。「巡航」業部門のみは、海運部門中3%程度を占めているに過ぎないが、人口統計上は、巡航船市場にとり有利となっている。現在米国人口の僅か10%しか巡航に出ていないが、調査では、67%超が巡航を指向していることになっている。
平均旅行者年令は、10年前は、60才であったが、現在では45才である。これらの船は、沿岸及び大洋横断の巡航から内陸水路航行に及ぶ市場の各部門に適合するよう、いろいろの大きさで建造されている。
巡航船の高付加価値が魅力であるため、多くの造船所は、この建造市場で分け前にあずかろうとしている。しかし、この種船舶の建造には、特殊な技能のある下請け及び供給者の参加を必要とする。したがって、極東の造船所は、思慮深い選択も非常にコスト高の戦略的選択なしには、この市場での成功は困難を覚えるであろう。欧州の造船能力は、生産性改善を通じ、また追加の巡航市場参入造船所があるという前提で、この部門での増大する需要に対応することができるとみられる。しかし、船主は、消えゆく補助金を考えれば、この造船所技量を保持するためより大なる支払いをしなければならないこともあろう。米国も以前は欧州が優勢であったこの市場へ、参入しつつある。
このように、我々は、新船をもたらす安全性及び環境に係る要件(すなわちダブル・ハル対シングル・ハルという構図のもの)を含む規格化要求の強い市場を見て取る。我々は、スクラップ化規格の必要性を見て取る。また、我々は、船主の各種型式の船舶及び運行の要求に適合するに当たり柔軟であることの必要性を見て取る。また我々は、新しい高速船を見て取る。そして我々は、巡航船の設計に増加して止まない複雑性を見て取るのである。我々の事業の分野における定量的指標となる解析をしてみれば、我々の記載済みのゴール及び目的は正しいことが立証される。海事産業にとり将来は明るいが、それは、補助金と市場の混乱により悪化する。生き残り成長するものもあろうし、波に乗り切れず絶えるものもあろう。
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