日本財団 図書館


【2】貨物ターミナルの概要
 シンガポール港におけるバルク・オイルを除く殆どの海上貨物は、97年10月に民営化されたPSAコーポレーション(PSA Corporation Ltd;シンガポール港湾公社)が運営する5つのターミナル、及びJTC(Jurong Town Corporation;ジュロン開発公社)が運営するジュロン・ポートの合計6つのターミナルで取り扱われている。また、バルク・オイルは石油関連事業者の運営する各ターミナルで取り扱われている。シンガポール港全体の管理は、MPA(Maritime and Port Authority of Singapore;シンガポール海事港湾庁)が行っている。
 タンジョン・パガー、ケッペル、ブラニ及びパシール・パンジャン(新ターミナル)がコンテナターミナルであり、パシール・パンジャン・ワーブズ、センンバワン・ワーブズ、及びジュロン・ポートが非コンテナ貨物ターミナルである。
 シンガポールはコンテナ取扱い施設を建設した東南アジアで最初の国であり、PSA(1964年設立)が1972年にイースト・ラグーン・コンテナターミナル(現在のタンジョン・パガー)の供用を開始した。ブラニ・ターミナルは、1991年に第1バースが供用開始された。現在、タンジョン・パガー、ケッペル、ブラニの3つのコンテナターミナルには、計31のコンテナバースがあり、総延長8,200メートル、94の岸壁クレーンが稼動している。
 さらに、将来のコンテナ需要に応えるために1993年8月からパシール・パンジャンで埋立工事が始まっており、タンジョン・パガー、ケッペル、ブラニを合わせた能力(16.2百万TEU)に匹敵する18百万TEUの取扱い能力を有する新たなコンテナターミナルの建設が進められている。第1期及び第2期工事により、26のコンテナバースが建設される計画であるが、工事は計画どおり進捗しており、第一期工事のうち先ず98年10月に新鋭の荷役機械を備えた4バースが稼動し、99年にはさらに2バースが完成し供用された。この新しい最先端を目指したコンテナターミナルは極力、自動化・効率運転ができるように計画されており、世界初のリモート制御のブリッジ・クレーンの導入などにより年間75万TEU/バースの取扱い量が可能となり、既存のバースと比較して約25%の能力アップが図られている。
 このコンテナターミナルの建設計画は、30年のスパンで4期に分けて開発され、最終的には49のコンテナバースで年間36百万TEUを取り扱うことができるようになる。
 また、これらのターミナルに隣接したフリー・トレード・ゾーン内には、1994年に供用開始した最新の貨物集配センターであるケッペル・ディストリパーク(11万3000平方メートル)が設置されているのをはじめ、合わせて46万2000平方メートルに及ぶPSAコーポレーションのディストリパークがターミナルから車で15分以内の距離に設置されている。
 
<各コンテナターミナルの概要>
  タンジョン・パガー ケッペル プラニ パシール・パンジャン
面積 80ha 96ha 79ha 84ha
喫水 11.0〜14.8m 9.6〜14.6m 12.0〜15.0m 15.0m
バース数; メイン 6 4 5 6
フイーダー 2 10 4 -
岸壁クレーン 29 36 29 24
ヤードクレーン 87 114 115
(内ブリッジ・クレーン2)
ブリッジ・クレーン44
軌道クレーン15
グランド・スロット数 15,940 20,230 15,424 14,020
リーファー数 840 936 1,344 648
 
 非コンテナ貨物ターミナルのうちPSAコーポレーションが運営するパシール・パンジャン・ワーブズ及びセンンバワン・ワーブズは、紙・パルプ製品、自動車、鉄鋼などをはじめ、特殊貨物を取り扱っている多目的ターミナルである。2001年の自動車取扱量は両ワーブズあわせて対前年比26.9%増の395,023台、鉄鋼はセンンバワン・ワーブズで対前年比24%増の484,000トンであった。
 両ワーブズの概要は、合わせて、面積が59.3ha、メイン・バース数が9、コースタル・バース数が9、喫水が6.7〜11.4メートル、倉庫延べ面積が19万7,000平方メートルとなっている。
 
【コンテナターミナルの港湾計画】
(拡大画面:106KB)
 
【3】港湾惰報システムの概要
 シンガポール港では、ハード面の港湾設備の整備と共に、各種港湾情報システムを導入し、通関手続きのペーパーレス化を図るなどソフト面やサービス面からも港湾業務の効率化を図ってきている。
 主な港湾情報システムの概要は、以下のとおりである。
(1)PORTNET
 1989年に導入されたPSAコープ独自のシステムで、海事関係者(船会社・代理店、運送業者、海貨業者、荷主等)を対象に、バースの手配、港湾関連申請書類等の提出、荷役関連情報の確認(出入港スケジュール、コンテナ貨物の搬出入、蔵置き、船積情報等)等コンテナターミナル運営に必要な情報交換・手続きを24時間リアルタイムで可能とする。政府のEDIシステムによる貿易ネットワークであるTRADENETとの接続により、貿易関連政府機関等への通関申請手続きも容易に行える。
 さらに、PSAコーポレーションはインターネットによるPORTNET-TMを開発し、1999年に全面供与した。これによって、既にパイロット・タグサービスの申込みができるようになっていた他、利用者が海外のオフィスに居ながらにして請求書等のやりとりや、下記(2)のCITOSとリンクして例えばPSAヤードにある冷凍コンテナの温度監視等も可能となった。
 
【TRADEENET】
 貿易業者、税関、TDB(貿易開発庁)等を結ぶ通関システムで、航空貨物、港湾貨物及び陸送貨物のすべての貿易手続き(輸出入貨物の通関書類の申請、審査、認可等)のペーパーレス化を可能とする。本システムの導入により、通常1〜4日要した一般的な貿易手続き書類の処理時間が導入当初は2時間程度、現在は3分程度に短縮された。24時間利用でき、インターネットでのアクセスが可能。1989年に貿易開発庁が開発した。
 
(2)CITOS(Computer Integrated Terminal Operations System)
 ヤード内での効率的なコンテナ取扱い作業の計画・指示を行うPSA独自のシステムで・1988年に導入された。船の大きさ、貨物の目的地、貨物量等情報をもとに、必要とするバース、ヤード、クレーンの数、作業員数、配置を割り出し、ヤードの中央制御室より現場の機器類のオペレーターにリアルタイムで作業指示を行う。さらに、PSAは外国のコンテナターミナル向けにCITOSのシステムをパッケージにしたCITOS-1を1997年に開発し、中国大連コンテナターミナルで最初に導入されている。
 
(3)その他の港湾情報システム
 “FLOW-THROUGH” CONTAINER GATE SYSTEM
 コンテナ運搬車がPSAターミナルのゲートを通過する際、TVカメラ、トランスポンダーやコンテナ番号自動識別装置等により、ペーパーレスで瞬時(約25秒)に通過することができるシステム。コンテナの積み下ろし位置も自動的にドライバーに通知される。1日に約8,000台、ピーク時には1時間に約700台を取り扱うことができる。
 
【4】海外におけるターミナル共同開発プロジェクト
 PSAコーポレーションは、世界のハブ港を目指し、顧客の客のニーズに応えるべくサービス網を拡大するため、シンガポール港の運営等で培ってきた経験とノウハウを世界の港湾の開発・管理・運営に活用することにも力を入れており、1996年に中国・大連港のコンテナターミナルの開発プロジェクトに参画したのを皮切りに、既に世界の11の港でターミナルの共同開発プロジェクトを展開している。2001年には、韓国、ポルトガルの2つの港でプロジェクトが大きく前進した。また、難航を続けているが、北九州ひびき灘でも実現に向けた動きがある。これらのターミナルで2001年は、対前年比78.3%増の361万TEUのコンテナを取扱った。
 
<PSAコーポレーションの海外展開プロジェクト>
国名 港・ターミナル コンバース数 ターミナル容量 コンテナ取扱量(2001年)
中国   大連コンテナターミナル 4 150万TEU 1,178,000TEU(対前年比20%増)
福州コンテナターミナル 3 34万TEU 363,000TEU(対前年比11%増)
広州コンテナターミナル 3 100万TEU 376,000TEU(01年供用開始)
イタリア  ボルトリ・ターミナル 4 87万TEU 818,000TEU(対前年比10%増)
ベニス・コンテナターミナル 3 30万TEU 238,000TEU(対前年比14%増)
インド  ツチコリン・コンテナターミナル 2 20万TEU 203,000TEU(対前年比35%増)
ピパバフ港 1 20万TEU (99年第1期供用開始)
イエメン アデン・コンテナターミナル 2 50万TEU 377,000TEU(対前年比52%増)
ブルネイ ムアラ・コンテナターミナル 1 6.1万TEU 60,000TEU(2000年10月供用開始)
ポルトガル シネス・コンテナターミナル 3
(計画)
140万TEU
(計画)
(03年供用開始予定)
韓国 仁川南港コンテナターミナル 3   (04年供用開始予定)
日本 北九州ひびき灘 12
(計画)
150万TEU
(計画)
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION