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4. シンガポールの港湾
シンガポール港の概況(2001年)
【1】シンガポール港の概要
 シンガポール港は、世界の主要航路の要衝に位置し、世界中の約400の船社(うちコンテナ船社約250)により約130カ国700以上の港(うちコンテナ港123ケ国約600)と結ばれている。
 2001年に一旦回復基調に乗ったかに見えたシンガポール経済が、2001年に入り世界的なエレクトロニクス不況、米国経済の低迷、さらに追い討ちをかけた同時多発テロの発生を背景に大幅な落込みを示したことや、マレーシアのタンジョンプルパス港をはじめとする東南アジア諸国の港湾の台頭などを受け、シンガポールの港に逆風が吹いた。
 2001年には、14万6,265隻(前年比0.6%増)、9億6,009万GT(同5.5%増)の船舶が寄港し、総トン数において世界で最も忙しい港として15年間連続してトップの座を保ち続けている。このうち、コンテナ船が対前年微減の3億3,720万GTで35.1%を占め、次いでタンカーが対前年比3.3%増の3億430万GTで31.7%、バルクキャリアが対前年比25.6%増の1億6,643万GTで17.3%の順となっている。
 寄港目的では、2001年は隻数ベースで、荷役が全寄港隻数の約28%、バンカーが約11%、補給が約8%の順であり、総トン数ベースでは、バンカーが約34%、荷役が約31%、補給が約17%であった。
 2001年の海上貨物取扱量は、3億1,349万トン(対前年比3.7%減)であった。このうちの36%は石油ターミナルで取り扱われるバルク・オイルである。また、船舶用燃料は2,035万トン(同9.1%増)を積み込み、シンガポール港は世界最大の燃料油積込み基地としての地位も保持している。
 コンテナ取扱量は、1,557万TEUで、世界第二位であるが、年々増加していたコンテナ取扱量が初めてそれも大幅に前年を割り込んだ(対前年比8.9%減)。
 シンガポール港は、1990年に初めて世界一のコンテナ港になり、1992年にその座を香港に譲ったものの、毎年激しい首位争いを展開し、1998年には香港を抜いてトップの座に返り咲いたが、1999年、2000年と連続して僅差で香港にその座を奪われていた。しかしながら、2001年は香港に約280万TEUの差をつけられた。
 シンガポール港では、東南アジア地域のハブ港を目指して港湾施設の整備、コンピュータシステムを用いた入出港手続き等の簡略化、港湾サポート機能(タグ、燃料・食料等の補給、船舶修理等)の充実等、顧客サービスの向上に努めてきた。この結果、同港で取り扱われるコンテナ貨物の8割程度は周辺諸国へのトランシップ(積み替え)貨物であると言われるまでになっている。なお、ハブ港として、シンガポールの対岸にあるマレーシア・ジョホール州のタンジョンプルパス港(PTP)がシンガポール港の強力なライバルに育ちつつある。
 最近のシンガポール港とタンジョンプルパス港の激しい競争を報道した新聞記事の抜粋を添付する。
 一方、マレーシア、インドネシア、タイ等周辺諸国で自国の貨物を自国の港から直接目的地まで輸送しようとする動きが活発化しており、近年、マレーシアのポート・クラン港、インドネシアのタンジョン・プリオク港、タイのレム・チャバン港等におけるコンテナ取扱量も増加傾向にあり、域内の港との競争も激しくなってきている。
 このため、一部の観測では、シンガポールは今後も東南アジアの中心的なコンテナ港の地位を維持する見通しだが、域内シェアは現在の約50%から2015年までに35%程度に低下するとしており、最近の動向から非現実的とは言えなくなりつつあるように見える。
 
<シンガポールの港湾利用状況(2001年実績)>
入港船舶 (トン数) 9億1,018万GT
  (隻数) 14万5,383隻
貨物取扱量 3億2,559万トン
コンテナ取扱量 1,709万TEU
燃料補給量 1,865万トン
入港船社数 約400社
シンガポール港と航路を持つ港 約700港以上
( )内の数字は、2000年実績値
 
<シンガポール港の入港船舶の推移>
(単位;100隻/100万GT)
(拡大画面:20KB)
 
<シンガポール港の貨物取扱量の推移>
(単位;フレート・トン)
 
<シンガポール港のコンテナ取扱量の推移>
(単位;百万TEU)
 
<世界の港のコンテナ取扱量>
(単位;千TEU)
順位 港名 2001年 2000年 伸び率 
(%)
1(1) 香港 18,000 17,800※ 1.1
2(2) シンガポール 15,520 17,040 △8.9
3(3) 釜山 7,907 7,540 4.9
4(4) 高雄 7,540 7,425 1.5
5(6) 上海 6,334 5,613 12.8
6(5) ロッテルダム 5,945 6,300 5.6
7(7) ロサンゼルス 5,184 4,879 6.2
8(11) 深釧(中国) 5,076 3,993 27.1
9(9) ハンブルグ 4,689 4,250 10.3
10(8) ロングビーチ 4,463 4,601 △3.0
11(10) アントワープ(ベルギー) 4,218 4,100 2.9
12(13) ポート・クラン(マレーシア) 3,700 3,206 15.4
13(15) ドバイ(UAE) 3,502 3,059 14.5
14(14) ニューヨーク/ニュージャージー 3,180 3,178 0.1
15(18) ブレーメン/ブレーメルハーフェン(ドイツ) 2,896 2,712 6.8
16(17) フェリクストウ(英国) 2,800 2,800 0.0
17(22) マニラ 2,796 2,289 22.1
18(16) 東京 2,770 2,960 △6.4
19(24) 青島 2,640 2,100 25.7
20(20) ジオイア・タウロ(イタリア) 2,488 2,653 △6.2
21(19) 横浜 2,400 2,317 3.6
         
25(23) 神戸 2,100 2,266 △7.3
         
27(28) 名古屋 1,890 1,912 △1.2
注) (1)※は暫定値
(2)( )内は2000年の順位
[出典] Containerisation International and Containerisation International Yearbook 2002 Data他







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