日本財団 図書館


A. 序説
 2000年10月24日、欧州造船業境界(CESA)は、EUの商船契約受注に悪影響を与える韓国の特定の貿易慣行を廃止させるために、Council Regulation 3286/941(貿易障壁規則(TBR))第3条及び4条に従って提訴した。韓国政府が自国造船事業者に供与している、または利益を与えている助成の結果、EUの造船事業者が貿易上の悪影響または損害を被っており、WTO補助金及び相殺措置に関する協定(ASCM)第3条及び第5条に抵触するというものである。欧州委は、TBR委員会と協議の上、2000年12月2日に調査を開始した2
 
 助成により利益を得たとされる韓国造船事業者は以下の通りである。
 
 三湖重工(旧漢拏)
 大宇造船(旧大宇重工)
 現代重工
 現代尾浦
 三星重工
 韓進重工
 大東造船
 
TBR報告書
 欧州委のTBR調査報告書は2001年5月に加盟国諮問委員会に提出された。当該調査によれば、韓国は、主として、国有の韓国輸出入銀行(KEXIM)の輸出スキーム、政府所有または政府がコントロールする金融機関による債務免除、債務の出資転換という形で、相当額の助成を行っていることが判明した。以下の造船所が主要な受益者と特定された。漢拏重工(現三湖重工)、大東造船、大宇重工(現大宇造船)。
 
 さらに、当該助成が、WTO補助金協定に照らして、EUの産業に悪影響を及ぼしているという証拠があり、それゆえに提訴する根拠が存在する。
 
 KEXIMプログラムに関して、KEXIMと造船所は、融資条件または保険料についての情報を提供しなかった。この状況で、規則(TBR)第8条7は入手可能な事実に基づいて判断を行うことを規定しており、訴えに盛込まれた情報を含めることができる。
 
 特に、訴えは、KEXIM融資及び保証スキームが韓国造船所に「利益」を与えているとしている。なぜならば、韓国の金融市場で獲得できる条件よりも有利な条件による金融支援(融資金利、保険料率)提供しているからである。さらに、韓国政府は上記のスキームが、製品の輸出支援を提供していることを認めたが、ASCMの第3条1(a)、注釈5で禁止されているものにあたらないことを証明する証拠は提示できなかった。加えて、欧州委はすでに鋼線材に関する2件の相殺措置調査で、上記のKEXIM輸出プログラムが、相殺措置の対象となる輸出補助金にあたると判定している3
 
 入手可能な事実に基づいて、TBR報告書は韓国政府が特定のKEXIMスキームの下で全ての韓国造船事業者に対し、ASCM第3条で禁止されている輸出補助金を与えたとみなしている。
 
 欧州委は助成を撤回または、不利な影響を除去させるために、この問題について韓国当局と即座に協議し、今後数週間(few weeks)のうちに友好的に解決されないかぎり、WTO紛争解決申し合わせの枠組み、具体的にはASCMの関連条項にしたがって、提訴の手続きを開始すると述べた。
 
新報告書
 しかしながら、並行して、欧州委は、韓国政府及び造船事業者が重要な情報の提供しなかった輸出助成スキームについて、さらに調査を継続し、これらのスキームと、その影響に関する報告書も程なく発表するとした。
 
 調査の第一段階で、欧州委は、韓国の法制及び争点となっている慣行、調査の対象となった製品、韓国およびEU産業、そして提訴者が主張する危害及び貿易上の不利な影響について、情報を収集した。これらの情報の出所は以下の通りである。
 
−EC内の生産者とその協会(CESA)
−韓国政府
−韓国生産者
−韓国金融機関
−その他の第三者(シップブローカー)
 
 さらに、EC(2001年2月)と韓国(2001年3月)で確認のための視察を行った。韓国視察中に、欧州委は、韓国関係当局、金融機関、調査の対象となった製品の韓国の生産者に会う機会を持った。
 
 影響を受けた製品は、輸出商船であり、具体的には
 
 バルクキャリア
 コンテナ船
 石油タンカー
 プロダクト、ケミカルタンカー
 旅客及びRO/ROフェリー
 液化ガスキャリア
 その他の貨物船
 その他の非貨物船(オフショアユニットを含む)
 クルーズ船

1 OJ L349(1994年12月31日)
2 OJ C345(2000年12月2日)
3 理事会規則618/1999及び619/1999(1999年3月23日)(OJL79)







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION