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E. 委員会の関心
E.1 域内企業
 域内の造船産業は、1999年時点で造船業及び修繕業の直接雇用労働力82,500人(全EU域内企業)及び相当な数(250,000人以上)の下請け企業や部品供給事業者における間接雇用労働力という経済活動の重要な分野を代表している。
 
 利用可能な情報によれば、韓国の価格政策が続いた場合、域内企業が失ったマーケットシェアのわずかでも取り戻し、利益を改善することはないだろうと予測することが合理的である。調査対象期間中、約6,000人の失業を伴う300,000cgt以上の建造設備に代表される多くの造船設備が閉鎖されたことを思い出すべきである。他の多くの造船所が破綻し、所有者を移転して操業を続けたにもかかわらず、さらにおよそ2,100人の失業を余儀なくされた。
 
 何もしなければ、域内企業のさらなる状況悪化が考えられる。域内造船所は製造をよりニッチ市場に移行させるか、直接及び間接雇用における相当の損失と共に造船所を閉鎖することを決断しようとするだろう。
 
 造船所の敷地内で作業(例えば、船体の塗装や旅客フェリー装備)を行う下請け業者や部品の供給事業者など、非常に多くの会社が造船業に含まれている。1999年、域内全体で、域内全造船事業者への下請け業者及び外部供給者として、267,500人が間接的に雇用されている。
 
 建造船の船種によるが、下請け業者及び外部供給者は全製造コストの70%に相当する額を請け負っている。
 
 いくつかの下請け業者又は部品供給事業者は造船業以外の産業に転向できるが、他の業者は活動内容が高度に専門化されており、欧州造船事業者の活動における関連部門の縮小又は消滅という著しい損害を被るだろう。
 
 船舶仲介業者の役割は、基本的に建造契約の仲立ち、すなわち、しばしば入札手続を含めた、買い手(船主)と製造者(造船所)の引き合わせを行うことである。船舶仲介業者の収入は、どの造船所が落札するかに関係なく実際に取り極めた契約額に依存する(通常は船価の1%程度)。
 
 船舶仲介業者9社が書簡又はより詳細な書類を委員会に提出した。うち、5社は域内企業である。さらに、船舶仲介業者のヒアリングが4回開催され、2社が域内、2社が域外に活動拠点を有している。
 
 全船舶仲介業者は韓国造船所への措置に対して反対の立場であった。しかしながら、欧州委員会の措置がいかに財政状況を悪化させているかについての証拠は出されなかった。逆に、ヒアリング中に彼ら自身から示された通り、彼らは収入が出来高に関係するため、いかなる船価上昇からも利益を得るだろう。
 
 船主協会からは意見書の提出(submission)はなかったが、7社が書簡(letter)を委員会に提出し、船舶仲介業者と同様の観点から措置への反対の立場表明があった。1社についてヒアリングを行った。ヒアリングでは、その船主が最近韓国造船所に発注した船種(バルクキャリア及びタンカー)は域内造船所からは入手できないとの主張があった。しかしながら、これは先述した船価の引き下げの証拠である。調査の結果、調査対象期間中、船主は新造船の低船価により直接利益を得ていた。利用可能な情報によると、政府助成を受けた韓国造船所に対して何か措置をとった場合に、船主が損害を被ることはないと考えられる。
 
 逆に、商業用船舶の異常に低い価格の存在は貨物料金における激しい競争を生じさせ、結果的に、船主の財政状況に悪影響を与えることとなる。
 
 とり得る措置の競争への影響については、いくつかの韓国造船所が悪影響を被る可能性を排除できないが、残った韓国造船所は市場での強力な立場を維持するだろう。さらに、東欧、日本、中国など未だに大多数の域内企業の主要競争者が存在し、船主は商業用船舶を域内外の異なる供給者を選択する状況は続くだろう。
 
 上記から、欧州委員会によるいかなる措置も、適切であれば、他の関心ある団体に過度な悪影響を与えることなく、域内造船産業に対して利益があると結論できる。







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